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地球の物質循環

地球上では様々な場所で様々な物質循環が起きています。物質循環は「自然の恵み」を生み出す根源であり、社会や経済と自然との関係を理解するうえで欠かせない要素です。ここでは様々な物質循環のうち、大気循環、水循環、炭素循環について整理します。

大気循環

地球の 大気圏 では絶えず空気の移動が起きています。これは地球の大気の温度差に起因するもので、地球規模で大気が循環することから「大気大循環」と呼ばれています。大気の循環は大きく3つに分かれます。

1つは「ハドレー循環」と呼ばれる、低緯度帯での大気循環です。地球上では低緯度(赤道に近い)ほど気温は高く、高緯度(北極や南極に近い)ほど低くなります。空気は温まると密度が下がり、周囲の空気よりも軽くなるため次第に上昇します。したがって、赤道付近の低緯度帯では常に暖かい空気の上昇流が発生しています。上昇した空気は上空で南北方向に移動しますが、上空で冷やされることで次第に重くなって下降し、地表付近を移動してやがて赤道付近に戻ります。赤道付近に戻った空気は再び加熱されることで上昇流となり、こうした空気の動きが繰り返されることで低緯度帯での大気循環が起きています。なお、地球上では自転の影響により物体の進行方向に対して右向きに力が作用する(コリオリの力)ため、地表付近の赤道に向かう空気の流れは東寄りになります。これが「貿易風」で、恒常的に吹く風の1つになっています。帆船が活躍していた時代は貿易風を利用した物流が一般的でした。また、海面付近を吹く貿易風は大規模に海水を動かすため、海流の形成にも寄与しています。貿易風の強弱によりエルニーニョやラニーニャといった現象が発生するため、日本の気候にとっても関連が深い風といえるでしょう。

北極や南極に近い高緯度帯では「極循環」と呼ばれる循環があります。極循環はハドレー循環と似た動きをする循環で、極付近の冷たい空気が中緯度方向に吹き込み、比較的温度の高い中緯度で温められることで上昇、上空を極方向に移動することで閉じた循環を形成しています。

低緯度帯と高緯度帯に挟まれた中緯度帯では、「フェレル循環」と呼ばれる大気循環があります。フェレル循環はハドレー循環や極循環のような直接的な循環ではなく、ハドレー循環や極循環に起因して引き起こされる間接的な循環です。ハドレー循環の下降流が地表に吹き込む際、一部の空気は赤道側ではなく高緯度側にも流れます。この高緯度側に移動した空気が極循環の地表風とぶつかることで上昇、上空を赤道側に移動することで閉じた循環を形成します。このほか、中緯度帯は偏西風(ジェット気流)が最もよく見られます。偏西風は上空で吹く強い西風で、飛行機で移動する際に西→東に移動する場合と東→西に移動する場合で飛行時間が異なるのはこの偏西風が原因です。東進する飛行機は偏西風の追い風に乗って目的地に早く到着することができますが、西進する場合は向かい風となり、飛行時間や燃料消費量に影響します。また、春には日本付近に黄砂を運び込むため、私たちの生活にも身近な存在といえます。

これら3つの循環はいずれも子午面(地球を南北方向に切った面)で起きているため、子午面循環と呼ばれています。子午面循環は熱や水蒸気の大規模な移動を伴うため、熱帯低気圧(台風)や前線の形成にも密接に関係しています。気候変動により気温が上昇すると大気中の水蒸気量が増え、大雨の頻度増加にも影響すると考えられています。

図
ハドレー循環・フェレル循環・極循環
出典:
〇〇の図
偏西風と貿易風
出典:

水循環

地球は表面の約70%が水で覆われており、「水の惑星」とも呼ばれています。太陽系のほかの惑星を見ても、水が液体の状態で豊富に存在する惑星は地球だけであり、生命の誕生においても重要な要素といわれています。水は常に同じ場所に存在しているわけではなく、絶えず状態を変え水圏を循環しています。

例えば、海水が熱エネルギーによって蒸発すると、水は水蒸気として大気に移動します。この水蒸気が上空で雲を形成し、やがて雨(あるいは雪)として地上に降り注ぎます。地上に降り注いだ雨は川や地下水を形成し、やがて海に流れ込む、という循環が代表例です。実際の水循環の場では、植物により蒸発散する水や地下水として地中にしみこむ水もあるため、水は非常に複雑で変化に富んだ循環をしているといえます。例えば日本では毎年6,000億トン程度の降水があるといわれており、そのうち1,000億トン程度が降雨時に河川から直接海に流下、2,000億トン程度が植物による蒸発散で大気に戻り、残りは地中に浸透することで地下水になると推計されています。地下水の一部は湧水となり、常時流れる河川水となります。

また、水循環の過程では塩分を含む海水が淡水化されるため、人間や生き物が利用可能な淡水資源は水循環により支えられているといえます。同時に、日ごろから私たちが利用している淡水資源は循環している水の一部であり、健全な水循環を維持することは持続可能な社会の実現にとっても不可欠です。近年は土地利用の変化や人口の増加による水循環への悪影響が懸念されており、雨水を地中に浸透させることができる森林や水田、畑を適切に管理することで水循環を保全する取組が注目されています。

水は循環の過程で様々な形態(水・水蒸気・氷)をとり、それぞれの形態ごとに栄養素や土壌、熱など様々なものを運びます。例えば、河川はカルシウムやケイ酸などの栄養塩を海に運び、これが海洋の植物プランクトンの光合成を支える基盤となっています。地球上の水の役割は「自然の構成要素」 もあわせてご参照ください。

図
水の循環
出典:

炭素循環

炭素は地球上のあらゆる場所に存在しています。また、黒鉛(鉛筆の芯の材料)やダイヤモンドなどのように炭素単体で存在していることもあれば、窒素や酸素と結合した化合物として存在することもあるなど、存在形態も多様です。地球上の炭素の大半は化合物として存在するとされており、生命活動に不可欠な糖類やタンパク質、アミノ酸にはすべて炭素が含まれます。

炭素も大気や水と同様に地球上を循環しています。例えば、植物は太陽の光エネルギーを用いて水と二酸化炭素から有機物を作り出します。これが光合成であり、大気中に二酸化炭素の形で存在する炭素が生物の利用できる形に変換されています。植物により固定された有機物(炭素)は昆虫類や草食動物の食料となり、その昆虫や草食動物が肉食動物に捕食されることでさらに別の生き物へと炭素が移動し…というように、炭素は食物連鎖のなかで常に移動しています。生物のフンや死骸、枯れた植物体は微生物などにより分解され、この過程で最終的に二酸化炭素として再び大気に排出されます。このように、光合成により固定された炭素は有機物という形で生態系を循環し、やがて大気へと戻るのです。なお、分解されずに残った有機物の一部は長い時を経て石炭や石油といった化石燃料になります。現在使われている化石燃料はいずれも太古の生物によるものですが、生物の死骸が化石燃料になるには数千万年レベルの長い年月がかかるため、化石燃料由来の炭素の排出は循環ではなく一方通行の排出と考えられています。

炭素の循環は陸地だけでなく海洋でも起きています。海洋における炭素循環は大きく「溶解ポンプ」と「生物ポンプ」に分かれます。
「溶解ポンプ」は大気中の二酸化炭素が海水に溶け込む流れのことを指します。二酸化炭素は冷たい海水に溶けやすく、海洋は大気の約50倍の二酸化炭素が溶けているといわれています。地球ができたばかりの原始大気では、火山活動により排出された二酸化炭素と水蒸気が大気の主成分でしたが、その後地球が冷えて海ができると二酸化炭素は海水に溶け込み、大気中の二酸化炭素の濃度は大きく減ったといわれています(なお、その一部はカルシウムイオンと結合することで石灰岩として海底に堆積)。
海域で起きるもう1つの炭素循環経路である「生物ポンプ」は、陸域における炭素循環と似たものです。海洋中の植物プランクトンや海藻/海草が光合成を行うことで炭素が固定され、動物プランクトン、魚や甲殻類、海生哺乳類などに捕食されることで生態系の中を有機物として移動し、その過程で生じるフンや死骸が分解されることで、一部の炭素はやがて大気に戻ります。

このほか、陸域・海域問わず、岩石の風化による炭素の動きも知られています。このプロセスでは、玄武岩をはじめとした天然の岩石が長い時間をかけて風化し、その過程で二酸化炭素を吸収し、炭酸塩として固定されます。近年、こうした岩石の風化による炭素の吸収・固定の仕組みを大気中の炭素の回収・貯留技術として活用する、「ネガティブエミッション技術」の研究が進められています。

自然による炭素循環は非常にバランスが取れていますが、社会活動による一方的な炭素の排出によりその均衡は崩れています。近年の記録的な猛暑や災害の激甚化などを引き起こす気候変動は、大気中の炭素(二酸化炭素)が増えたことが主要因とされています。気温や気候が変化すればその影響は大気循環や水循環にも波及する可能性があり、化石燃料に依存した社会活動からの脱却が急がれます。

化石燃料に代わる燃料として、植物(サトウキビやトウモロコシなど)由来の燃料であるバイオ燃料があります。バイオ燃料も使用時には二酸化炭素を排出しますが、これは原材料の植物が成長する際に吸収した二酸化炭素が再び大気に戻されるだけであり、二酸化炭素の排出と吸収が釣り合っている(プラスマイナスゼロである)と考えられています。厳密にはカーボンニュートラルではないとの見解もありますが、化石燃料を使用した一方的な炭素の放出と比べると、循環を活用した燃料であるといえます。「社会・経済活動に伴う物質輸送」 も併せてご参照下さい。

図
炭素循環
出典:
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