社会・経済活動に伴う物質輸送
人間社会と経済は生物圏によって支えられた階層構造をもち、それぞれの層の間では物質が循環しています。その最も顕著な例が炭素です。炭素は化石燃料として地中から採掘され、世界中を循環し、最終的には大気や海洋に戻ります。ここでは、この循環経路を整理し、社会・経済活動と物質輸送がどのように関連しているかをみていきます。
人為起源の炭素輸送は、石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料が地中から採掘されるところから始まります。産業革命以来、人類は化石燃料への依存を続けており、2025年には世界の石油供給量が1日当たり約1億バレルに達し、海上タンカーやパイプラインを通じて世界各国に供給されると推定されています。化石燃料の燃焼によって、2024年には年間約370億トンの二酸化炭素が排出され、地球温暖化を加速させる要因となっています。
また、これらの燃料を輸送する船舶や陸上輸送網も化石燃料を消費しています。世界の海運は人為起源の温室効果ガスの約2.5%を排出しており、航空機輸送も同程度(約2.5%)の排出を担っています。2022年には、道路や鉄道を含む輸送全体で年間約80億トンの二酸化炭素が放出されました。
人間による社会活動は化石燃料の使用による炭素の排出だけではなく、製品を通した炭素の輸送にも関与しています。鉄鋼、プラスチック、木材、農産物などの製品には固体として炭素が含まれており、物流を介して自然による炭素循環とは違った流れで炭素を輸送しています。
化石燃料の使用による一方的な炭素の排出を循環に戻す技術として、CCS (Carbon dioxide Capture and Storage) とCCUS (Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage) が挙げられます。CCSは回収した二酸化炭素を地下に貯留する技術、CCUSは貯留するだけでなく、燃料やプラスチックなどに再利用する技術です。北米では、発電所や化学工場で捕集した二酸化炭素を地中深くに貯留・圧入するため、8,000km以上のパイプライン網が稼働しており、年間数千万トンの二酸化炭素が貯留されています。さらに、液化二酸化炭素を専用船によって輸送する実証実験も進行中で、CCUSを支える二酸化炭素の長距離・大量輸送の仕組みが整いつつあります。
- 出典:
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- 経済産業省 資源エネルギー庁「CCSの流れ」 より丸紅が改変