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生物多様性と生息環境の保全

丸紅の生物多様性と生息環境の保全をご紹介します。

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環境生物多様性と生息環境の保全

方針

生物多様性に関する考え方

丸紅グループは多岐にわたる分野のビジネスをグローバルに展開しており、そのいずれのビジネスにおいても自然環境・生物多様性に何らかの影響を与えていること、また、全てのビジネスが自然の恩恵のうえになり立っていることを認識しています。丸紅グループは、丸紅グループ環境方針に明示している通り、生物多様性および生態系の保護に取り組み、気候変動と並ぶ世界の喫緊の課題である生物多様性保全に貢献していきます。

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また2022年12月にカナダ・モントリオールで開催された生物多様性条約COP15第二部において、新たな世界目標が「昆明・モントリオール生物多様性枠組」として採択され、「自然と共生する社会」や「ネイチャーポジティブ(ネットポジティブインパクト)」に向けた民間企業における取り組みが期待されています。丸紅グループは、中期経営戦略(GC2024)の基本方針である「グリーン戦略」に取り組み、「自然と共生する社会」の実現に貢献していきます。

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丸紅グループでは、丸紅グループ環境方針の具体的対応として、また、「自然と共生する社会」の実現に向け、新規の事業案件に対して事前に自然生態系への影響を確認しています。独自のサステナビリティ評価ツールにおいて、その事業の土地が自然保護区や国立公園等の近隣する立地であるか、事業そのものが生態系への影響を生じさせる事業かどうか、プロジェクト実施により事業エリア周辺を含む土地の地形・地質構造を大規模に改変しないかなどを確認しています。

取り組み

生物多様性と生息環境の保全

水禽類生息数調査 / Asian Waterbird Census
  • パグビラオ発電所内外のモニタリング地点で撮影されたAnas luzonica(アカノドカルガモ)、Lonchura oryzivora(ブンチョウ)。

丸紅が50%株主としてフィリピンで発電事業を行うTeaM Energy Corporation (TeaM) のCSR活動を目的に設立されたTeaM Energy Foundation, Inc. (TEFI)は、Wild Bird Club of the Philippines (WBCP)および環境天然資源省と協力して、国際NGO “国際湿地保全連合(Wetlands International)”が実施するアジアの水禽類生息数調査“Asian Waterbird Census (AWC)”に2010年より毎年継続して参加しており、TeaM Energy Corporation (TeaM)が保有・運営するパグビラオ、スアル発電所及び近隣10kmの範囲で水禽類に関するデータ収集を行っています。当該調査により発電所の近隣への環境負荷が低く、健全な環境が保持されていることを確認しています。
パグビラオ、スアル両発電所は、国際自然保護連合 (International Union for Conservation of Nature) が発表する「絶滅のおそれのある種のレッドリスト(2014年)」でVulnerable=危急種に指定されているフィリピン固有種のアカノドカルガモ(Anas luzonica)の聖域であり、発電所の敷地は渡り鳥を含む多くの鳥たちの休息の場となっています。
TEFIは騒音抑制、開発の抑制、開発の際の生息環境移転作業によりこれらの鳥たちの生息環境を保護する活動も実施しています。
2020年から2022年にかけての新型コロナウイルスによるパンデミック期間中、TEFIはWBCPとのバードウォッチング活動を中止しましたが、スアル発電所とパグビラオ発電所では、別途、外部機関によるモニタリング調査を行っています。

2021年にスアル発電所で行われた調査では、56種34科の合計1,056羽の鳥類が記録され、内3種類の絶滅危惧鳥類が記録されました。
3種類の絶滅危惧鳥類とは、Lonchura oryzivora(ブンチョウ)、Streptopelia bitorquata(オオベニバト)、Anas luzonica(アカノドカルガモ)です。
アカノドカルガモは、第1回半期報告で260羽、第2回半期報告で60羽が記録され、この地域の人工潟湖を利用しているとされています。
追加種はなく、記録された鳥類は全体で129種にとどまりますが、Motacilla cinerea(キセキレイ)とOrthotomus derbianus(ルソンサイホウチョウ)の再来が確認されており、前者は2011年、後者は2015年に観察されたのが最後となっています。

2021年にパグビラオ発電所で行われた調査では、9種の鳥たちが繁殖しているとされています。
18種のうち9種は、非森林から森林への生息環境に関連しており、絶滅危惧種はアカノドカルガモの1種のみが記録され、16種はIUCNの低危険種に分類されます。

パグビラオ発電所以外にも、3つの地点でモニタリングが行われています。
1)ビナハン流域森林保護区、2)ビナハンマングローブ林、3)ダンラガンマングローブ林の3カ所です。
これらの4地点において、39種584羽の鳥類が記録されました。

植林プログラム
植林地域

TEFIは2001年よりパグビラオ発電所およびスアル発電所にて発電所周辺の地域コミュニティやSioasio East Forest Developers Association等NGOと共同でアカシアやユーカリ等の植林活動を行っており、Sioasioで植林された苗木の平均生存率は96.5%を誇ります(2023年3月時点)。2001年よりこれまでにスアルでは約100ヘクタール、パグビラオでは約328ヘクタールを植林・維持しており、TEFIは今後もこのような植林・維持活動を継続して行います。

2021年、パグビラオ発電所では、従業員ボランティアがアゴホ、ナラ、タリサイの苗木を植え、発電所敷地内の4,806㎡内に合計300本の自生木を植樹しました。

一方、TeaM Sual Corporationは、過去5年間、毎年マングローブの植樹とメンテナンスを通じて、スアルのバランガイ・バキウーンの海岸を修復しています。
2021年には、スアル発電所の従業員ボランティアが、バキウーンのバランガイ政府ユニットの代表者と共に、スアルのバランガイ・バキウーンの海岸沿いに3,000本のマングローブの苗木を植樹しました。
2022年には、従業員ボランティア、同政府ユニットの代表者、地元の学校、請負業者とともに、同地区に2,000本のマングローブの苗を植樹しました。
2022年、TEFIは外部パートナーおよび地元コミュニティのメンバーとともに、パンガシナン州ボリナオ町のサンチャゴ島にあるバランガイ・ビクトリアとパイラーにマングローブの増殖材21,000本を植えました。
この活動はTEFIのプロジェクトCATCH ME(海岸の生息地とマングローブ生態系を変える地域連合)のもとで行われたものです。

丸紅は、2024年から2025年にかけて両発電所の所有権が国営電力公社へ移転されるまでの間、TEFIが保全・植林を行ってきた区域及び活動対象区域計約144,000ヘクタールの自然林の保護・維持を引き続き支援し、今後も生物多様性を守り森林保全を促進していくことを目標として活動していく予定です。

生物多様性への悪影響の低減と回復を目指す植樹活動

丸紅グループがフィリピン国マニラ首都圏で上下水道事業を行うMaynilad Water Services, Inc.(Maynilad社)は、土地保全(種の保存を含む)や人口増加による悪影響の軽減および回復を目的に、沿岸部に21.9万本以上のマングローブの植樹を行いました。この活動により、一部の地域では漁師が雇用され、更なる収入機会がもたらされています。また、同国の政府機関(環境天然資源省や地方自治体等)、企業およびボランティアの協力を得て、責任ある水の消費と適切な排水管理について啓蒙するイベントも開催しています。Maynilad社は、ステークホルダーとともに、植樹活動を通じて地域社会に投資し、生態系の保全、洪水の防止、高品質な水の供給および持続可能な水ビジネスの運営に取り組んでいきます。

生物多様性の損失を軽減するためのエンゲージメント

森林保全活動と先住民族への生計手段の提供
  • 森林保全活動の様子
  • 地域住民との交流の様子
  • 生産された商品/蜂蜜

TEFIは2010年より、環境天然資源省、地域住民、国際的・現地NGOと協力のもと、ケソン州General NakarにてCommunity Carbon Poolsプログラム(C2P2)を実施しています。

TEFIではトレーニングの実施、太陽光エネルギーにて稼働する蜂蜜製造施設への資金供与をしており、General Nakarのコミュニティで蜂蜜等の食品に加え、樹脂、食品等非材木製品等がつくられており、染物や茶葉の収穫もしています。
34コミュニティ、2,000人以上の地域住民を対象に生計手段の提供・生計の改善をすることで、約144,000ヘクタールの森林保全・森林破壊防止に協力しており、森林破壊による温室効果ガス排出の削減、森林の持続的保全、森林による炭素貯蔵の促進に寄与しています。

西オーストラリア州政府とのエンゲージメントを通じた持続可能な森林経営・生物多様性の保全への貢献

丸紅が100%出資するオーストラリアの植林・木材チップ事業会社WA Plantation Resources Pty., Ltd. (以下、WAPRES社)は、現地政府とのエンゲージメントを通じて、Environment Protection and Biodiversity Conservation Act 1999 (as amended) を含む現地法令等の遵守を行うことで、国際的な森林認証を取得しています。

丸紅グループの森林経営と森林認証について詳細はこちら

WAPRES社は、持続可能な森林経営を行うことが生物多様性の保全に貢献するものと考えており、このような事業活動を継続していきます。

チリでの造水・送水事業を通じた生物多様性の保全への貢献

当社は、チリ・国営銅公社(Corporación Nacional del Cobre de Chile)向け造水・送水事業(以下、本プロジェクト)の参画にあたり、本プロジェクトに伴う生物多様性への影響を事業参画前に特定し、ネガティブインパクトの回避と削減策を講じています。

チリ共和国・国営銅公社向け造水・送水事業の長期売水契約に関する融資契約締結ならびに着工について詳細はこちら

デューデリジェンスの実施

本プロジェクトの建設予定地の一部は、絶滅危惧種に特定されているサボテンの一種(Eriosyce Laui、以下、ELサボテン)の重点保全地区に該当しています。そのため、種の保全対策を目的に、事業参画前に外部専門家を起用し、重点保全地区内の建設予定サイトにおける当該種の生息の有無、生息状況に関するデューデリジェンスを実施しました。その結果、建設予定地でのELサボテンの生息がないことを確認しました。

生物多様性行動計画(BAP)、生物多様性管理計画(BMP)の策定

本プロジェクトでは、特に保全上重要な場・種・機能をもつエリアを特定して生物多様性に関する行動計画(BAP: Biodiversity Action Plan)を策定しています。該当エリアについては、有識者による詳細調査を実施し、その結果を生物多様性管理計画(BMP: Biodiversity Management Plan)に反映し、継続してモニタリング(監査)することで生物多様性の保全に取り組んでいます。

サーモンの閉鎖循環式陸上養殖業への参入

世界の水産需要増加への対応

新興国を中心とした食生活の質向上や、先進国におけるヘルシー志向の高まりにより、世界の水産需要は年々増加しています。一方で、天然漁獲量はこの30年間ほぼ横ばいで推移しており、養殖漁業の重要性が高まっています。その中でも海面養殖に適した沿岸地域が限られるサーモンの養殖は、養殖地域に地理的制限を受けない閉鎖循環式陸上養殖(Recirculated Aquaculture System:以下「RAS」※1)の拡大が特に期待されています。

1 閉鎖循環式陸上養殖(RAS)とは、閉鎖された陸上設備内で、使用された水を濾過して90%以上を再循環させる養殖。設備の中で水温及び水質等をコントロールするために外的要因を受けにくい。

2020年4月、当社はNippon Suisan (Europe) B.V.と共同で、RAS事業において世界トップレベルの生産実績を有するDanish Salmon A/S(以下DS社)の株式を取得いたしました。同事業分野での製造ノウハウ・技術を確立した数少ない企業の1社であるDS社を通じて、世界の水産需要増加に対応していきます。

サステナビリティへの貢献

RASは閉鎖した設備内で水を循環して使用するため、水質汚染や養殖魚の流出といった周辺環境や生態系への影響が小さく、管理体制を確立し履歴に残すことが可能なことから、トレーサビリティーにも対応した養殖手法です。また、将来的な人口増加に伴うタンパク質の供給不足解消の有効手段としても有望視されています。
当社は、拡大する世界の水産物需要に応えるのみならず、環境に配慮した水産物を安定供給することで、社会課題解決に貢献していきます。

  • RAS養殖の仕組み
    RAS養殖の仕組み
  • サーモン

RSPO/ISCC認証品の取り扱いについて

パーム油の取り扱いに関しては、丸紅の事業会社であるPasternak, Baum & Co., Inc.社にてRSPO/ISCC/RFA認証品あわせて全取り扱いの約3割程度の取り扱いがあります。環境・社会に配慮したお客様の要請に応じて普及の一端を担っています。

イニシアティブへの参加

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラムへの参画

TNFDフォーラムは、自然資本および生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的な組織である自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures※2)のビジョンとミッションを共有し、サポートする組織です。丸紅は、2022年3月に、TNFDフォーラムに参画しました。
当社はTNFDフォーラムへの参画を通じ、上述の枠組み構築に関する議論をサポートすることにより、気候変動と並ぶ世界の喫緊の課題である生物多様性保全に一層貢献していきます。

2 TNFDは、2021年6月に設立された、民間企業や金融機関が、自然資本および生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的な組織です。2019年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で着想され、資金の流れをネイチャーポジティブに移行させるという観点で、自然関連リスクに関する情報開示枠組みを構築することを目指しています。

TNFDのウェブサイトはこちら

TNFD Adopter声明への賛同について

TNFD Adopter声明

丸紅は、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)による以下の「TNFD Adopter」※3声明に賛同します。「TNFD最終提言」(2023年9月公表)に基づく開示に向けて取り組んでいきます。

3 TNFD提言に沿った情報開示を行う意思をTNFDのウェブサイト上で登録した企業・組織。

声明:

Our organization intends to publish its first TNFD-aligned disclosures alongside financial statements as part of the same reporting package for our financial year 2025 outcomes.

TNFD Adoptersのウェブサイトはこちら

賛同を表明した企業の一覧はこちら

ネイチャーポジティブ宣言への賛同

丸紅は、2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF、会長:経団連会長、事務局:環境省)の「ネイチャーポジティブ宣言」に賛同し、政府・関係省庁ならびに業界団体等とも連携しながら、生物多様性国家戦略の取組方針に則り、ネイチャーポジティブの実現に向けて取り組んでいます。

J-GBF 「ネイチャーポジティブ宣言」のウェブサイトはこちら

経団連生物多様性宣言・行動指針

当社は、経団連(一般社団法人日本経済団体連合会)および経団連自然保護協議会が2018年10月に改訂した「経団連生物多様性宣言・行動指針」への賛同を2020年1月に表明しました。

経団連生物多様性宣言・行動指針(改定版)の詳細はこちら

マリン・エコラベル・ジャパン協議会

丸紅は水産資源の持続的利用、環境や生態系の保全に配慮した漁業・養殖・加工・流通を推進しているマリン・エコラベル・ジャパン協議会の正会員です。
丸紅は今後も環境や生態系に配慮した持続的な水産資源利用に向け、自社及びサプライチェーンにおける取り組みを継続していきます。

マリン・エコラベル・ジャパン協議会(MEL)のウェブサイトはこちら

丸紅株式会社