方針
人権の尊重に関する考え方
丸紅グループは68カ国・地域に133拠点※1を持ち、4万人以上※2のグループ従業員が在籍し、その国籍・人種も多様です。また、事業活動の範囲も多岐に渡り、グローバルに多角的なビジネスを展開しています。SDGsが掲げる目標の達成や持続可能な社会の実現に向けて、丸紅グループのビジネスに関わるあらゆるステークホルダーの皆さま※3の人権を尊重し、その状況に注意深く目を向けています。自社のビジネスにおいて人権への負の影響が生じている事実が判明した場合には是正・救済のための適切な対応を取ることが、責任ある企業として、丸紅グループが果たすべき重要な社会的責任です。丸紅グループは、このような社会的責任を果たし、人権を尊重した事業活動を行うことにより、持続的な価値創造に取り組んでいきます。
1 2021年4月1日時点
2 グループ従業員数:45,470人(2021年3月31日時点)
3 直接または間接の顧客やサプライヤーの皆さまを含むあらゆるビジネスパートナー、自社およびビジネスパートナーの従業員、周辺住民の方々や地域社会などを含みます。
丸紅グループ人権基本方針
丸紅グループは、社是「正(公正にして明朗なること)・新(進取積極的にして創意工夫を図ること)・和(互いに人格を尊重し親和協力すること)」の精神に則り、公正明朗な企業活動を通じ、経済・社会の発展、地球環境の保全に貢献する誇りある企業グループを目指します。そのうえで、自らのビジネス活動により影響を受けるすべての人々の人権を尊重し、その責任を果たすべく努力していくことが最重要であるという認識のもと、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「丸紅グループ人権基本方針」(以下、本方針)をここに定めます。
人権に対する基本的な考え方
丸紅グループは、国連「国際人権章典」(世界人権宣言および国際人権規約)、国際労働機関(ILO)「労働における基本原則および権利に関する国際労働機関(ILO)宣言」、国連グローバル・コンパクト10原則などの人権に関わるすべての国際規範を支持します。
適用範囲
本方針は、丸紅グループのすべての役員・社員に適用します。また、ステークホルダー(仕入先、サービス提供会社、契約業者、製造委託先、JVパートナー、業務委託先、顧客等のビジネスパートナーや地域社会など)やその他の関係者による人権への負の影響が、丸紅グループのビジネス活動と直接関係している場合は、本方針の趣旨に則り、適切な対応をとるよう求めていきます。
人権尊重への責任
丸紅グループは、人権を侵害しないこと、また、自らのビジネス活動において人権への負の影響が生じている事実が判明した場合は、是正に向けて適切な対応をとることで、人権尊重への責任を果たしていきます。
・人権デューデリジェンス
丸紅グループは、人権デューデリジェンスの仕組みを構築し、これを継続的に実施していきます。
・救済
丸紅グループは、丸紅グループのビジネス活動が、人権に対する負の影響を引き起こした、あるいは関与したことが報告される仕組み(苦情処理メカニズム)を構築します。その仕組みを通じて、当該影響・関与があったと判断した場合には、十分な事実確認を行った上で、適切な手続きを通じてその救済に取り組みます。
・対話・協議
丸紅グループは、本方針に沿った取り組みの推進において、関連するステークホルダーとの対話と協議を真摯に行います。
・適用法令の遵守
丸紅グループは、ビジネス活動を行う国・地域における法令および規制などを遵守します。また、国際的に認められた人権と各国の法令などに矛盾がある場合には、国際的な人権原則を尊重するための方法を追求していきます。
・教育・研修
丸紅グループは、本方針がすべてのビジネス活動において理解され効果的に実行されるよう、自らの役員・社員に対し適切な教育および能力開発を行います。
・情報開示
丸紅グループは、人権尊重に対する責任を果たすための取り組みなどについて、公式ウェブサイトなどを通じて報告していきます。
上記基本方針には、特に人権侵害が起こりやすいと考えられる以下に関する方針を含みます。
・子どもの権利に関する方針
丸紅グループは、事業活動において、子どもの権利保護に向けて「子どもの権利とビジネス原則※4」を支持することに加え、子どもの権利改善に向けた社会貢献活動に取り組むことで、子どもの権利改善に貢献します。
・先住民族の権利に関する方針
丸紅グループは、先住民族が在住する国・地域でのビジネス活動においては、先住民族が保有する固有の文化・歴史を認識し、当該国・地域の法規制や、国際規範に定められた先住民族の権利への配慮を行います。
・警備組織の起用に関する方針
丸紅グループは、警備における武器の使用には人権侵害の潜在的なリスクが伴うことを認識しています。ビジネス活動に伴う警備組織等の起用に関しては、ビジネス活動を行う国・地域の法律や国際的な規範、および関連する国際的な取り決めを支持し、人権尊重に努めます。
4 子どもの権利とビジネス原則:ユニセフ、国連グローバル・コンパクト、セーブ・ザ・チルドレンが策定した、企業が子どもの権利を尊重し推進するために職場、市場や地域社会で行うことのできる様々な活動を示した包括的な原則。
体制
丸紅グループは、「丸紅グループ人権基本方針」に基づき、グループすべての役員・社員、ビジネス・パートナー、その他関係者の人権尊重の確保に向けて、サステナビリティ推進委員会および委員長(CSDO、代表取締役常務執行役員)のもと、サステナビリティ推進部が事務局・推進者となり、各部署に配置されているサステナビリティ・リーダー並びにマネージャーと日々、連携して、グループ全体の人権配慮とその継続的改善取り組んでいます。なお、サステナビリティ推進委員会で審議された人権に関わる重要事項は、所定の手続きに基づき経営会議および取締役会に付議・報告しています。
取り組み
人権デューデリジェンス
持続可能で強靭なサプライチェーン構築のためのリスク管理の一環として、丸紅は、ビジネスのサステナビリティ面における潜在的リスク評価手法(サステナビリティ評価)を構築しています。サステナビリティ評価の3つのカテゴリーのうち、「社会」に関しては、企業の社会的責任と、関連する国際規格の社会面および人権・労働関連の項目を網羅的に含む形でリスク項目を整理しています。また、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」およびOECD多国籍企業行動指針に基づいた「責任ある企業行動のためのOECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス」などに照らしサプライチェーン上のリスク管理項目を含めています。丸紅グループは、これらのリスク評価を通じて、人権デューデリジェンスを継続的に実施していきます。
救済メカニズムの構築
2021年3月期、丸紅グループ人権基本方針に則り、苦情処理(救済)をおこなう社内プロセスを構築しました。
こちらは、機密性・匿名性が保証され、あらゆるステークホルダーからの人権侵害についての苦情を対象に利用できる正式な仕組みです。
(人権侵害についての苦情を提出する為の専用窓口も当ホームページ上に設置されています。)
サプライチェーンにおける人権リスク
丸紅は、「サプライチェーンにおけるサステナビリティ基本方針」を定め、そのガイドラインに人権の尊重を盛り込み、取引先に対しても、理解と協力をいただくことを目指しています。
2015年10月に英国で現代奴隷法が施行されたことを受けて、当社グループでは、丸紅欧州会社、一部の在英グループ会社、それらの会社の事業運営に対して一定のコントロールを及ぼす丸紅本社が2021年9月末までに声明を発表しました。
英国現代奴隷法の対象は、英国で事業を行う企業のうち、世界での年間売上高が3,600万ポンドを超える企業と定められています。自社およびサプライチェーン上において奴隷や人身売買等の人権侵害が行われていないことを確認するため、段階的に措置を講じ、翌会計年度に声明を公表することが義務化されています。
このほか当社では、サプライチェーン・サステナビリティ調査においても強制労働や児童労働などの人権上のリスクについて仕入先の取り組みの状況を調査しているほか、人権に関わるリスクの洗い出しなど、リスクの拡大・拡散を未然に防ぐ取り組みを進めています。なお、2011年2月以降実施しているサプライチェーン・サステナビリティ調査では、「アンケート調査」や「現地訪問調査」を通して、仕入先の人権上のリスクについて取り組みの状況を調査しています。これらの調査において直ちに対応を要する深刻な問題は見つかりませんでした。
人権リスク・インパクトに関する外部ステークホルダーとの対話
丸紅は、「国際人権NGOビジネスと人権リソースセンター(Business & Human Rights Resource Centre:BHRRC)」などを通じて、当社が展開している事業における人権リスクやインパクトについて、外部ステークホルダーとの対話を行っています。対話の結果を踏まえ、リスク管理の向上に努めています。
協議実績
2021年3月期においては、BHRRCを通じて2件の外部ステークホルダーとの対話を行いました。
コンプライアンス・マニュアル
『コンプライアンス・マニュアル』では、遵守事項の第1項に「人権の尊重、差別・セクシャルハラスメント・パワーハラスメント等の禁止」を掲げています。この人権の概念には、日本国憲法や労働基準法のみならず、世界人権宣言、ビジネスと人権に関する指導原則(国連)などで定められた基本的人権、国際労働基準(ILO)※5に定められた人権も含まれています。
5 国際労働基準(ILO):労働における基本的な基準を定めたもので、(1)労働組合権の確立、(2)強制労働の禁止、(3)雇用における差別の禁止、(4)児童労働の禁止、の4分野・8条約で構成されている。
相談“ホッ”とライン(旧称「勇気の扉」)
丸紅グループでは、何らかの理由で職制ラインが機能しない場合のために、「相談“ホッ”とライン」(旧称「勇気の扉」)というコンプライアンス相談・報告窓口を設置しています。
従業員の団結権、団体交渉権の尊重
丸紅は、人権や労働などに関する普遍的な原則を支持し実践する国連グローバル・コンパクトの10原則の支持を宣言しており、労働環境や賃金水準等の労使間協議を実現する手段としての従業員の団結権や団体交渉権を尊重しています。
人権問題への取り組み
人権・同和問題推進委員会
1981年設置。委員長はCAO※6、委員はコーポレートスタッフグループの各部長、営業グループの各グループ管理部長および各国内支社長で構成されています。
6 CAO:Chief Administrative Officer
公正採用選考・人権啓発推進員の選定
本社および大阪支社において、公正採用選考・人権啓発推進員の選任・届け出を行い、公正な採用選考システムを確立しています。
人権啓発・研修
「新任執行役員研修」をはじめ、「新任部長研修」「実務基礎知識講座」「キャリア採用者研修」「一般職研修」などの社内研修を実施しています。
社内イントラネットに人権問題に対する基本方針や研修資料を随時公開したり、人権に関する標語を公募・発表するなどの啓発活動も継続して行っています。
人権尊重への理解を深めるために、丸紅は、役員・社員向けに人権尊重及びその他重要な社会課題など、必要な知識を含むウェビナー研修を実施しています。今後も毎年、内容を更新して、教育・研修を継続していきます。
イニシアティブへの参加
国連グローバル・コンパクト「人権デューディリジェンス分科会」
丸紅は、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンのテーマ別分科会に参加しており、「人権デューディリジェンス分科会」においては、人権侵害防止のためのデューデリジェンスのベストプラクティスなどを学び、自社およびサプライチェーンにおける人権尊重への取り組みにつなげています。
ビジネスと人権フォーラム
国連が年次開催する「ビジネスと人権フォーラム」に参加し、「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた企業の人権尊重を促進させるための経験の共有、最新動向の把握に努めています。
東京人権啓発企業連絡会
東京人権啓発企業連絡会に加盟し、会員各社との課題共有や対話を通じた取り組みにより役員・社員の人権意識の向上を継続的に進めています。
データ
人権の研修実績
当社の方針を含む人権に関する研修を以下の通り実施しています。
施策 | 受講者数 (2019年3月期) |
受講者数 (2020年3月期) |
受講者数 (2021年3月期) |
---|---|---|---|
新入社員研修 | 121名 | 105名 | 115名 |
実務基礎知識講座 | 126名 | 109名 | 132名 |
新任執行役員研修 | 5名 | 0名 | 16名 |
新任部長研修 | 24名 | 34名 | 25名 |
新任課長研修 | 44名 | 53名 | 63名 |
一般職(上位)昇格研修 | 22名 | 15名 | 12名 |
総合職4年目研修※7 | 99名 | 96名 | 0名 |
一般職4年目研修※7 | 25名 | 37名 | 0名 |
キャリア開発研修 | 182名 | 190名 | 47名 |
- 2021年3月期は、コロナ禍で実施中止。感染症対策を講じた上で2022年3月期に実施を延期。
その他、部署によっては人権をテーマにした研修を実施しています。