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気候変動対策への貢献(TCFD提言に基づく情報開示)

丸紅の気候変動対策への貢献(TCFD提言に基づく情報開示)をご紹介します。

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環境気候変動対策への貢献(TCFD提言に基づく情報開示)

TCFD提言に基づく情報開示

丸紅グループは、気候関連財務情報開示の重要性を認識し、2019年2月にTCFD※1提言に賛同の意を表明するとともに、気候関連のリスクおよび機会の把握、情報開示の拡充に取り組んでいます。また、TCFDに賛同している日本企業が参加する「TCFDコンソーシアム」※2にも参画しています。

1 金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)によって設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

2 TCFDコンソーシアムについては詳しくはこちら

過去の開示内容はこちらをご覧ください。

2021年(2021年9月)[874KB]

2022年(2022年9月)[642KB]

2023年(2023年9月)[600KB]

戦略

気候変動に関する長期戦略

丸紅グループは、経営理念として、社是「正・新・和」の精神に則り、公正明朗な企業活動を通じ、経済・社会の発展、地球環境の保全に貢献する、誇りある企業グループを目指しています。丸紅グループの長期戦略は、経営理念の実践であり、顧客・社会の課題を先取りし、ソリューションを提供することで価値を創造し成長することです。

顧客・社会の課題は多様で変化し続けます。変化を先取りするために、丸紅グループは、1. 人財、2. 地域、3. セクター、4. ビジネスモデルの4つの多様性を差別化要因の一つとし、自らも変化し続けています。これが、丸紅グループの強みであり、価値創造の源泉です。強みを更に高めるため、「基盤マテリアリティ(①マーケットバリューの高い人財、②揺るがない経営基盤、③社会と共生するガバナンス)」を特定し、継続的に強化に努めています。

気候変動は、丸紅グループの成長に影響を与える重要な要素であるため、「環境・社会マテリアリティ」の一つに特定しています。気候変動という社会課題を先取りし、ソリューションを提供するため、『気候変動長期ビジョン』を策定し、国際社会の目標であるパリ協定に則した丸紅グループのGHG排出削減を目指すとともに、グループ外の低炭素・脱炭素社会への移行を、成長機会と捉えています。

 当社は気候変動の取り組みにおいては、短期(~3年)、中期(3~10年)、長期(10~30年)の時間軸を定義しています。また、財務的影響【長期】については、当該影響を見積もるには測定の不確実性の程度が高く定量的情報が有用ではないため、「気候変動に関する長期戦略」および「低炭素・脱炭素社会への移行を先取りした丸紅グループの取り組み」において定性的な情報を記載しています。

 「基盤マテリアリティ」および「環境・社会マテリアリティ」の詳細については、丸紅のマテリアリティをご参照ください。

  • 『気候変動長期ビジョン』についてはこちらをご参照ください。

    2021年3月に策定した『気候変動長期ビジョン』は、2つの柱からなります。一つはグループのGHG排出ネットゼロを達成すること(Scope 1・Scope 2およびScope 3カテゴリ15(投資))のCO2排出量の削減ほか、詳しくは「指標および目標」をご参照ください)、もう一つは事業を通じて社会の低炭素化・脱炭素化に貢献することです(Scope 3の全カテゴリおよび削減貢献量の算定ほか、詳しくは「事業を通じた低炭素化・脱炭素化への貢献」をご参照ください)。これらを同時に推進することで、気候変動問題に対してポジティブインパクトを創出し、成長する企業グループを目指します。

    丸紅グループの目指す姿:ネットポジティブ

    『気候変動長期ビジョン』 ~温室効果ガス排出のネットゼロに向けて~ はこちら[1.3MB]

 以下は、2024年12月時点で知り得る情報をもとに記載しています。

低炭素・脱炭素社会への移行を先取りした丸紅グループの取り組み

丸紅グループの強みを活かし、低炭素・脱炭素社会への移行を「機会」として成長に繋げる事例を以下3例紹介します。

  • ① 資源・エネルギー分野における取り組み

    セクター・ビジネスモデルの多様性を活用し、低炭素・脱炭素社会への移行を先取りしたビジネスポートフォリオのリバランスにより、持続的な成長に繋げています。具体的には、エネルギー供給分野において、化石燃料から再生可能エネルギーおよび代替エネルギーへの転換に貢献するとともに、移行ニーズに合致した天然ガスビジネスを継続します。一方で、資源分野では脱炭素化の前提である電化の促進に不可欠な銅の生産能力を拡大することによって、資源・エネルギー分野において、グループ全体の収益力を堅持し、移行に伴う財務インパクトをポジティブにしています。

    一次エネルギー別需要量予測(全世界)

     IEA “World Energy Outlook 2023” NZEシナリオ より当社作成

  • ② 電力分野における取り組み

    電力分野においては、社会がカーボンニュートラルに移行する中、多様化する顧客ニーズに対し、業界トップクラスのIPP(Independent Power Producers)実績、EPC(Engineering, Procurement and Construction)取りまとめ実績、豊富な電力卸売・小売の経験等の様々な機能を組み合わせ、エネルギーの効率利用や低炭素・脱炭素社会への移行に向けた総合的な問題解決を提供し、付加価値を生み出しています。
    とりわけ、低炭素・脱炭素社会への移行を見据えた取り組みとして、SmartestEnergy社(以下、SEL社)の取り組みが挙げられます。SEL社は2001年に丸紅グループがゼロから立ち上げ、再生可能エネルギー電源を中心に英国電力市場での卸調達・小売事業を手がけています。
    2015年には産業界向けに再生可能エネルギーの産地証明書(以下、再エネ証書)を組み合わせた電力の提供など業界初の試みを実践し、英国の大手電力会社と同規模(小売販売量ランキング6位)の電力サービス事業者に急成長し、今も成長を続けています
    (詳しくは統合報告書2024(P.39)[38MB]をご参照ください)。
    今日ではこのような取り組みを米国や豪州へ展開するとともに、国内では丸紅新電力株式会社(以下、丸紅新電力)が実施しています。丸紅グループは、新電力のパイオニアとして2000年に電力小売事業に参入、2011年に丸紅新電力を設立し、日本の電力市場自由化と歩みをあわせ、電力の安定供給に努めています。丸紅新電力ではお客様のニーズにあった様々な商品・プランを提供しており、需要家向けに様々な再生可能エネルギー小売メニュー、また小売電気事業者向けには複数の発電事業者から調達した再生可能エネルギー電力を束ね供給する再生可能エネルギー卸供給サービス等を提供しています。

    取扱商品の電源割合推移

    取扱商品の9割以上が再生可能エネルギー由来の商品ポートフォリオ

     取扱商品の再生可能エネルギー由来電力取扱量につき、2016年3月期:1,674MW(全体の電力取扱量:2,456MW)から、2024年3月期:3,420MW(同:3,688MW)に増加。

    SmartestEnergyグループ成長の変遷

  • ③ 森林・植林分野における取り組み

    森林・植林分野においては、インドネシア、豪州の2カ国に約12万ヘクタールの植林事業(東京23区面積の約2倍、総事業面積は約30万ヘクタール)を有しています。とりわけ、降雨量および日照量が多く木の成長に適した熱帯雨林気候帯に広大な植林を展開している、インドネシアでの当社植林事業(PT. Musi Hutan Persada (MHP社))のポテンシャルは大きいと考えています。

    現在は主として製紙用途を対象に事業を行っていますが、低炭素・脱炭素社会への移行の推移を見極めつつ、他用途への木質資源の活用や、丸紅グループが長年培った森林経営ノウハウを活用した国内、インド、フィリピン等における森林カーボンクレジットの創出といった環境価値による収益最大化を目指しています。

事業を通じた低炭素化・脱炭素化への貢献

バリューチェーン上のGHG排出は丸紅グループがその削減に貢献できる機会と捉えており、関連するすべてのScope 3のカテゴリを算定しています。
丸紅グループの特徴として、Scope 3の排出量(89百万トン)が、Scope 1・Scope 2(1.2百万トン)の70倍超となっています。

丸紅グループのScope 1・Scope 2およびScope 3の主なカテゴリ(詳細は「データ」をご参照ください)

  • (単位:百万t-CO2e)
2024年3月期
Scope 1・2 Scope 1 0.9
Scope 2 0.3
合計 1.2
Scope 3 カテゴリ1(購入した製品・サービス) 36
カテゴリ11(販売した製品の使用) 18
カテゴリ15(投資) 25
その他のカテゴリ 11
合計 89

 各カテゴリと全カテゴリの合計値は四捨五入の関係で一致しない場合があります。

 カテゴリ1:肥料、穀物、化学品等が含まれます。

 カテゴリ11:化石燃料等が含まれます。

 カテゴリ15:発電事業等が含まれます。

Scope 3の排出主体は多種多様なセクターに及び、これら排出主体に低炭素・脱炭素のソリューションを提供することは、気候変動対策への貢献度が高いだけでなく、丸紅グループにとって低炭素・脱炭素社会への移行に伴う機会であり、成長に資するものです。
エネルギー供給面では脱炭素社会の基盤となるエネルギーシステムの構築、エネルギー需要面では幅広い産業におけるGHG排出抑制・削減への取り組み、土地利用の分野では持続可能なアグリインプット事業・森林経営への取り組みを推進することがソリューションの例となります。
また、ソリューションの効果を定量的に把握するため、削減貢献量・CO2蓄積量を算定しています。これらは丸紅グループが事業機会を捉えていることを示す指標でもあります。

ソリューションの具体例

商品・
分野
ソリューション 取り組み 貢献領域
エネルギー供給 エネルギー需要 土地利用
肥料、
化学品
省エネ/効率化 グリーンアンモニアの販売
施肥効率の改善 土壌データ分析サービス等による肥料使用量の最適化
CCUS CO2を原料としたメタノールの販売(化石資源由来原料からの転換)
化石燃料 トランジションエネルギー 脱炭素社会への移行に欠かせない天然ガス・LNGの販売拡大
代替エネルギー 次世代燃料(水素・アンモニア・SAF・バイオメタン等)の製造・販売
代替エネルギー アンモニア輸送船の保有・運航
代替エネルギー・持続可能な森林経営 バイオマス燃料(木質ペレット・チップ)の製造・販売
EV等電化促進 EVのリース・商用向けフリートマネジメント・バッテリーリユース/リサイクル
EV等電化促進・省エネ/効率化 銅・アルミの生産、販売(電化推進・輸送機の軽量化)
省エネ/効率化 コンテナラウンドユース、パレットラウンドユースによる物流の効率化
CCUS CO2回収・利用・貯留事業の構築
発電事業 再生可能エネルギー発電 再生可能エネルギー関連事業の拡大
蓄電池・EV等電化促進 系統安定化向け蓄電サービス、次世代蓄電池の開発・製造・販売
商品・
分野横断
持続可能な森林経営 環境植林事業
領域横断 環境価値(証書・排出権)の創出・販売

削減貢献量

評価対象 単位 2024年3月期 算定方法
再生可能エネルギー発電 千t-CO2e 約1,429 算出式:発電設備容量×24時間×365日×設備稼働率×ホスト国の平均排出係数×当社持分比率

 排出の大部分を占める運用段階の削減貢献量のみを算定

ベースライン:各国のエネルギーミックス
排出係数:国際エネルギー機関(International Energy Agency, IEA)による国別のCO2排出係数(CO2 emissions per kWh from electricity generation)を参照

 削減貢献量とは、自社の製品・サービスを使用することで、社会全体の排出削減にどれだけ寄与したかを定量化した指標です。
算定においては、可能な限り実績値や公知情報を用いていますが、入手困難な場合には合理的と思われる前提やシナリオを設定しています。
参照文献として、主にWorld Business Council for Sustainable Development(WBCSD)によるGuidance on Avoided Emissionsを使用していますが、算定ルールについて国際的な議論が続けられているため、その動向を踏まえ、算定、開示方法を今後も見直していきます。

CO2蓄積量

評価対象 単位 2024年3月期 算定方法
植林・管理林 百万t-CO2e 約14 “2019 Refinement to the 2006 IPCC Guidelines for National Greenhouse Gas Inventories” Volume 4のChapter 4 Forest LandのTier 2アプローチをベースに生体重量を算定

シナリオ分析

気候変動による事業への影響度および丸紅グループへの影響度(資産規模、収益規模など)が相対的に高い事業を選定し、短期(~3年)、中期(3~10年)、長期(10~30年)の時間軸を定義したうえで、現行シナリオと移行シナリオにおける事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))を踏まえた中期の財務的影響および対応方針・取り組みについて、TCFD提言に沿ってシナリオ分析を実施しました。
丸紅グループの事業ポートフォリオは多岐に分散されており、特定の産業やビジネスに固有のリスクがグループ全体の財務状況に与え得る影響は限定的ですが、適切なリスク管理を継続的に強化し、気候変動に対するレジリエンスを更に高めていきます。

シナリオ分析対象事業の選定

下図マトリックスの右上部分をシナリオ分析の対象としました。

シナリオ分析対象事業の選定

シナリオ分析結果

選出した各事業に対するシナリオ分析結果は以下の通りです。
記載しているシナリオおよび事業環境認識は、IEA(国際エネルギー機関)などの国際的な機関が提示する主なシナリオおよびそれらに基づく丸紅グループの認識であり、丸紅グループの将来見通しではありません。

分析のプロセス

事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))
■現行シナリオ
対象事業に関する現行シナリオ下の需要予測を踏まえた、事業環境認識を記載しています。
■移行シナリオ
対象事業に関する移行シナリオ下の需要予測を踏まえた、事業環境認識を記載しています。
  • 対象事業に関する各シナリオ下の需要予測に関し、該当するシナリオ/データがある場合、シナリオごとの変化を示しています(注記がない限りは全世界のデータを示しています)。
  • 現行シナリオと移行シナリオに大きな差がない場合は、まとめた情報の記載にしています。

    例:石炭火力 発電量(グラフはサンプルを表示)

  • 事業環境認識の各項目に関し、移行リスク/機会、物理的リスク/機会および時間軸(短期、中期および長期)を記載しています。
  • 気候関連の「移行リスク」とは、低炭素経済に移行する取り組みから生じるリスク(政策、法律、技術、市場およびレピュテーション・リスク)のことをいいます。
  • 気候関連の「物理的リスク」は、気候変動によりもたらされるリスクで、事象を契機とすることがあるもの(急性の物理的リスク)または気候パターンの長期的な変化によるもの(慢性の物理的リスク)をいいます。
財務的影響【中期】
  • 対象事業における気候関連のリスクおよび機会が、中期の時間軸において当社の財政状態、財務業績およびキャッシュ・フローに与えた、もしくは与えると予想される影響に関する見通しを記載しています。なお、当該影響を見積もるには測定の不確実性が高いため、以下の構成を活用して定性的情報を記載しています。
総合評価を矢印を使用して7段階で記載。
左記評価に関する説明を記載。
対応方針・取り組み
上記シナリオの事業環境認識を踏まえた当社の事業に対する対応方針・取り組みを記載しています。
財務関連情報
対象事業が属するセグメント(本部)の親会社の所有者に帰属する当期利益(損失)、セグメントに対応する資産または対象事業のエクスポージャーを記載しています。

 エクスポージャー:出資、融資、有形固定資産、保証の合計

  • 発電事業
    (石炭火力・ガス火力・
    再生可能エネルギー)
  • エネルギー資源権益事業
    (石油・ガス・LNG)・
    代替エネルギー事業
  • 金属資源権益事業(銅)
  • 金属資源権益事業
    (鉄鉱石・原料炭)
  • 航空機リース事業
    (Aircastle)
  • 船舶事業
  • 北米アグリインプット事業
  • 森林事業

発電事業(石炭火力・ガス火力・再生可能エネルギー)

事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))
■現行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:世界の電力需要は増加。
  • 短~長期:ガス火力・再生可能エネルギーは増加。

【移行リスク】

  • 短~中期:化石燃料依存が続き、石炭火力は同水準を維持または減少傾向。

【物理的リスク】

  • 短~長期:過去40年間において世界全体で強い熱帯低気圧の発生割合が増加(IPCC第6次評価報告書)。
  • 短~長期:地域によっては、想定を超える強度の洪水・台風等が発生する場合に一定の影響度があると想定。
■移行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:世界の電力需要は増加。
  • 短~長期:再生可能エネルギーは大幅に増加。
  • 短~長期:電力卸売・小売事業や分散型電源事業等における再生可能エネルギー電力の取り扱いが拡大。環境証書等の再生可能エネルギー関連商品の取引が拡大。蓄電池・電力需給調整等を含むエネルギーマネジメント事業へのニーズが上昇。
  • 中~長期:代替エネルギーとしての水素・アンモニアの需要が増加。

【移行リスク】

  • 短~中期:低炭素化・脱炭素化が進み、石炭火力は大幅に減少。
  • 中~長期:ガス火力は、2030年までは現状と同水準を維持。2030年以降は減少するが、一部ケースでは現状維持。
  • 中~長期:カーボンプライシングの導入・強化などにより、化石燃料の利用に係る費用が増加。

【物理的リスク】

  • 短~長期:過去40年間において世界全体で強い熱帯低気圧の発生割合が増加(IPCC第6次評価報告書)。
  • 短~長期:地域によっては、想定を超える強度の洪水・台風等が発生する場合に一定の影響度があると想定。
  • 石炭火力 発電量

  • ガス火力 発電量

  • 再生可能エネルギー 発電量

財務的影響【中期】
石炭火力
ネガティブ(小)
当社発電事業の大半は、発電容量に対して対価が支払われる長期売電契約に基づいており、石炭火力への需要減による既存事業への影響は限定的。ただし、退役資産により石炭火力からの収益は縮小。
ガス火力
ポジティブ(小)
事業環境として、現行シナリオでは需要増、移行シナリオでも短中期的には一定の新規需要が見込まれるため、新規開発により収益に与える影響はポジティブ。
再生可能エネルギー
ポジティブ(大)
事業環境は現行シナリオで需要増、移行シナリオでは顕著に増加するため、新規開発および再生可能エネルギー関連ビジネスの拡大(電力卸売・小売事業や分散型電源事業などにおける再生可能エネルギー電力の取り扱い、環境証書取引、蓄電池・電力需給調整等を含むエネルギーマネジメント事業など)により、収益に与える影響は大きくポジティブ。
対応方針・取り組み
  • 世界的な電力需要の増大が見込まれるため、特に再生可能エネルギーの急成長を捉え、電力事業を拡大させる。
  • 再生可能エネルギー発電事業を拡大させる。電力卸売・小売事業や分散型電源事業などにおいても、顧客ニーズにあわせて再生可能エネルギー電力や環境証書の取り扱いを拡大し、低炭素社会の実現に貢献する。
  • 分散型電源事業、蓄電池、電力需給調整等を含むエネルギーマネジメント事業を推進し、スマートシティ・新事業を通じて脱炭素ソリューションを拡充する。
  • 新規石炭火力発電事業には取り組まない。また、2025年までに石炭火力発電事業によるネット発電容量を2019年3月期末時点の約3GWから半減し、2030年には約1.3GW、2050年までにゼロとする。
  • 低炭素社会への移行に向けた社会のニーズに応えるべく、ガス火力発電事業の新規開発は継続する。なお、火力発電事業については、水素/アンモニア混焼など新技術の活用によるCO2排出量の削減へも取り組む。
  • 炭素税課税や排出量取引制度の導入によるCO2排出コスト増のリスクが想定されるが、当社の発電事業の大半は長期売電契約に基づいており、契約上そうした制度変更リスクはヘッジされている。

【物理的リスク対応】

  • 自然災害リスクを含む様々なリスクを考慮したプロジェクト組成・運営に取り組んでいる。
  • 建物等に対する直接的な被害を回避・軽減するための各種適応策を講じている。
  • 財物損害および(事業によっては)操業停止による逸失利益に対する損害保険を付保している。
  • 丸紅グループの株式会社マルニックスは、創業以来、海外のインフラプロジェクトの保険ブローカーとしての実績を積み上げており、当該事業(一部)について、包括的に分析・評価し、リスクマネジメントプログラムの提案・実行を支援している。
財務関連情報

電力本部

  • 対象事業が属するセグメントの利益:2024年3月期 約473億円
    (うち、電力IPP事業の連結損益:約558億円)
  • セグメントに対応する資産:2024年3月期末 約1兆2,811億円

 電力IPP事業における連結子会社損益および持分法による投資損益の合計

参考:2024年3月期末時点電源構成:石炭火力約2.4GW、再生可能エネルギー約1.8GW、ガス火力・その他約7.2GW

エネルギー資源権益事業(石油・ガス・LNG)・代替エネルギー事業

事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))
■現行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:一次エネルギー全体に占める石油・天然ガス需要量は増加傾向。
  • 短~長期:石油は需要量・生産量共に2030年までは増加、2030年以降はほぼ横ばい。需給バランスは均衡。
  • 短~長期:ガスは需要量・生産量共に2040年まで増加。需給バランスは均衡から若干の供給不足。
  • 短~長期:代替エネルギーは、徐々に増加傾向。

【移行リスク】

  • 短~長期:各国の炭素税・賦課金制度の変化により、商流が変化する可能性。
  • 短~長期:代替エネルギーに係る需要拡大の不透明さから、技術開発投資の萎縮や技術革新の行き詰まり等による製造コストの高止まり。

【物理的リスク】

  • 短~長期:強い熱帯低気圧の発生割合が世界全体で過去40年間増加(IPCC第6次評価報告書)。
  • 短~長期:地域によっては、想定を超える強度の洪水・台風等が発生する場合、一定程度の影響が及ぶ可能性。
■移行シナリオ

【機会】

  • 短~中期:ガスは、需要量は2030年までほぼ横ばい。
  • 短~長期:代替エネルギーは、2030年まで徐々に増加し、2030年以降は堅調に増加。

【移行リスク】

  • 短~長期:各国の炭素税・賦課金制度の変化により、商流が変化する可能性。
  • 中~長期:ガスは、2030年以降は減少。生産量は減少。需給バランスは均衡から若干の供給不足。
  • 中~長期:一次エネルギー全体に占める石油・天然ガス需要量は減少傾向。
  • 短~長期:石油は需要量・生産量共に2030年までは微減、2030年以降は減少。需給バランスは均衡から若干の供給過剰。

【物理的リスク】

  • 短~長期:強い熱帯低気圧の発生割合が世界全体で過去40年間増加(IPCC第6次評価報告書)。
  • 短~長期:地域によっては、想定を超える強度の洪水・台風等が発生する場合、一定程度の影響が及ぶ可能性。
  • 石油 需要量

  • 天然ガス 需要量

  • 水素 需要量

  • バイオエネルギー 需要量

財務的影響【中期】
石油
中立
2030年までは、需要減が業績に与える影響は限定的。
天然ガス・LNG
ポジティブ(小)
2030年までは、需要が横ばい~増加のため、業績に影響を与え得る外部環境の変化は中立~ややポジティブ。
代替エネルギー
ポジティブ(中)
中長期的な市場拡大に向け、取り組みの深化に努める。収益に与える影響は技術革新の進捗次第でポジティブ。
対応方針・取り組み
  • 技術革新・気候変動対策の進捗を見極めつつ、低炭素社会への移行を新たな事業創出の機会と捉え、環境負荷の低い燃料(バイオ燃料、合成燃料)の取り組み拡大、環境価値の開発・売買等を積極的に推進することによりGHG排出抑制・削減を進めるとともに、需要増加が見込まれる天然ガス・LNGをはじめ、既存燃料の安定供給にも引き続き注力することでエネルギー安全保障への貢献との両立を図る。
  • 水素・アンモニアなど、今後大量に必要とされているエネルギーの開発、生産、トレードを積極的に推進し、収益性の向上を目指すとともに、社会的役割を担うべく取り組みを深化させる。
  • 2024年3月期、新エネルギー開発推進部を新設した。エナジー・インフラソリューショングループ内のエネルギー本部・電力本部・インフラプロジェクト本部から新エネルギー関連事業を集約し、各本部の事業基盤を活用しながら既存分野の強みを発揮することによって、新エネルギー領域において脱炭素に資する製造から利用までのサプライチェーン構築を目指す。
  • その他の代替エネルギー(バイオ燃料、バイオメタンガス、合成燃料など)の生産・販売事業や、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)事業の開発についても積極的に検討・推進する。

【物理的リスク対応】

  • 自然災害リスクを含む様々なリスクを考慮したプロジェクト組成・運営に取り組んでいる。
  • 建物等に対する直接的な被害を回避・軽減するための各種適応策を講じている。
  • 財物損害および(事業によっては)操業停止による逸失利益に対する損害保険を付保している。
  • 丸紅グループの株式会社マルニックスは、創業以来、海外のインフラプロジェクトの保険ブローカーとしての実績を積み上げており、当該事業(一部)について、包括的に分析・評価し、リスクマネジメントプログラムの提案・実行を支援している。
財務関連情報
  • エネルギー資源権益(石油・ガス・LNG)事業が属するセグメントの利益:2024年3月期 エネルギー本部 約392億円(うち、LNG事業の連結損益:約84億円、石油・ガス開発事業の連結損益:約122億円)
  • エネルギー資源権益(石油・ガス・LNG)事業のエクスポージャー:2024年3月期末 原油・ガス権益 約900億円、LNG権益 約500億円
  • 2024年3月期、新エネルギー開発推進部を新設
  • 代替エネルギー事業は、新エネルギー開発推進部、エネルギー本部、インフラプロジェクト本部、電力本部、フォレストプロダクツ本部、化学品本部、航空・船舶本部など、複数のセグメントにおいて取り組みを実施

金属資源権益事業(銅)

事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))
■現行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:銅の需要は、人口増・経済成長に加え、脱炭素化や電化の促進により増加。

【移行リスク】

  • 炭素税や排出量取引制度等新たな法制度の導入による燃料・資材等のコスト増の可能性。

【物理的リスク】

  • 干ばつや降雨・降雪等の異常気象による鉱山操業や輸送への影響が一定程度発生する可能性。
■移行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:銅の需要は、人口増・経済成長に加え、脱炭素化や電化の促進により大幅に増加。

【移行リスク】

  • 炭素税や排出量取引制度等新たな法制度の導入による燃料・資材等のコスト増の可能性。
  • 環境許認可や規制強化に伴う新規開発の難易度上昇。

【物理的リスク】

  • 干ばつや降雨・降雪等の異常気象による鉱山操業や輸送への影響が一定程度発生する可能性。

銅の需要

財務的影響【中期】
ポジティブ(中)
拡大する需要を捉え、収益に与える影響はポジティブ。特に、電化の促進により、銅需要の更なる拡大および収益の更なる向上を期待。
対応方針・取り組み
  • 拡大する銅の需要を捉え、チリでの銅鉱山事業を通じ、銅の安定供給に貢献する。
  • チリ銅鉱山の操業に使用する電力の再生可能エネルギーへの転換は完了し、重機の電化や操業用水を海水由来とするなど環境負荷の低減を徹底した持続可能な鉱山事業経営に取り組んでいる。
  • 中長期的な需要増加への対応、コスト競争力強化のために、鉱量の維持および将来的な拡張の可能性を追求する。
  • 現地法令・規制に則り、環境耐性や従業員・地域コミュニティの安全・健康を意識した操業・インフラ整備を維持・推進する。

【物理的リスク対応】

  • 自然災害リスクを含む様々なリスクを考慮したプロジェクト組成・運営に取り組んでいる。
  • 建物等に対する直接的な被害を回避・軽減するための各種適応策を講じている。
  • 財物損害および(事業によっては)操業停止による逸失利益に対する損害保険を付保している。
財務関連情報

金属本部

  • 対象事業が属するセグメントの利益:2024年3月期 約1,635億円
    (うち、Marubeni LP Holdingの連結損益:約101億円)
  • 対象事業のエクスポージャー:2024年3月期末銅権益 約3,900億円

 チリにおける銅事業への投資を行う事業会社

金属資源権益事業(鉄鉱石・原料炭)

事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))
■現行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:鉄鋼生産量は、人口増や経済成長に伴い、堅調に増加する見込み。既存の高炉生産が一定量維持。
  • 中~長期:脱炭素化の促進により高品位鉄鉱石・直接還元鉄の需要増加。
  • 短~長期:原料炭需要は、人口増や経済成長に伴う鉄鋼需要増および海外原料炭を必要とする高炉生産が一定量継続されることから、堅調に推移する見込み。

【移行リスク】

  • 炭素税や排出量取引制度等新たな法制度の導入による燃料・資材等のコスト増の可能性。

【物理的リスク】

  • 干ばつや降雨・降雪等の異常気象による鉱山操業や輸送への影響が一定程度発生する可能性。
■移行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:鉄鋼生産量は、人口増や経済成長に伴い、横ばいか増加。
  • 中~長期:脱炭素化の促進により高品位鉄鉱石・直接還元鉄の需要増加。
  • 短~長期:原料炭は、脱炭素化の促進による需要減少に対して新規開発や拡張計画の実行が停滞することによって供給量も減少するため、当社保有資産の競争力は維持。CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)等脱炭素ソリューションのニーズ増加。

【移行リスク】

  • 中~長期:鉄鋼業カーボンニュートラル化の実現に向けた高炉から電炉へのシフト・新技術(大型高炉によるスクラップ利用、高炉水素還元による水素利用)の開発。
  • 中~長期:電炉比率の増加により高炉用鉄鉱石および原料炭需要が減少。
  • 中~長期:原料炭供給側の投資難易度が上昇することにより、供給の安定性が脆弱化。

【物理的リスク】

  • 干ばつや降雨・降雪等の異常気象による鉱山操業や輸送への影響が一定程度発生する可能性。

鉄鋼生産量

財務的影響【中期】
鉄鉱石
ポジティブ(小)
豪州鉄鉱石事業を中心に、拡大する需要を捉え、収益に与える影響はポジティブ。
原料炭
中立
現行シナリオでは、原料炭需要は堅調に推移。移行シナリオでは、原料炭需要減が予測されるものの、一定の高炉生産は継続される見込みであるため、収益に与える影響は限定的。
対応方針・取り組み

鉄鉱石

  • 今後も鉄鋼業カーボンニュートラル化の動向を見極めながら、人口増や経済成長に伴い拡大する鉄鋼の需要を捉え、豪州での鉄鉱石事業を通じ、鉄鉱石の安定供給に貢献する。
  • 中長期的な需要増加への対応、コスト競争力強化のために、終掘する鉱量の補充および将来的な拡張や還元鉄事業の可能性を追求する。
  • 現地法令・規制に則り、環境耐性や従業員・地域コミュニティの安全・健康を意識した操業・インフラ整備を維持・推進する。

原料炭

  • 今後も鉄鋼業カーボンニュートラル化の動向、原料炭の世界需給環境などの外部環境を見極めながら、当社原料炭資産の競争力強化に取り組み、需要家への安定供給に努める。
  • 同時に、当社原料炭事業操業の低炭素化や、CCS等の脱炭素ソリューション提供への対応を進めることで、低炭素化、脱炭素化に向けた社会課題への貢献にも取り組む。
  • 現地法令・規制に則り、環境耐性や従業員・地域コミュニティの安全・健康を意識した操業・インフラ整備を維持・推進する。

【物理的リスク対応】

  • 自然災害リスクを含む様々なリスクを考慮したプロジェクト組成・運営に取り組んでいる。
  • 建物等に対する直接的な被害を回避・軽減するための各種適応策を講じている。
  • 財物損害および(事業によっては)操業停止による逸失利益に対する損害保険を付保している。
財務関連情報

金属本部

  • 対象事業が属するセグメントの利益:2024年3月期 約1,635億円
    (うち、Marubeni Resources Developmentの連結損益:約630億円、ロイヒル鉄鉱山事業の連結損益:約424億円)
  • 対象事業のエクスポージャー:2024年3月期末原料炭権益 約1,100億円、鉄鉱石権益 約1,900億円

 豪州における鉄鋼原料事業への投資を行う事業会社

航空機リース事業(Aircastle)

事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))
■現行シナリオ ■移行シナリオ

 以下の通り、顧客である航空会社のリスク/機会が本事業のリース需要や採算性などに影響を与える可能性がある。

【機会】

  • 短~長期:航空を活用した移動需要が安定的に拡大、環境負荷の低い新機材の導入が段階的に進捗。
  • 短~長期:機材の技術的な改善など、燃費効率が向上し、燃油費のコスト削減が進捗。
  • 中~長期:SAFなど環境負荷の低い航空機燃料の安定供給が進み、環境対策費用が低減。

【移行リスク】

  • 短~長期:GHG排出規制の強化に伴う新機材への更新、環境クレジット購入による費用の増加。
  • 中~長期:人々の行動変容により、消費者の航空利用が減少。
  • 中~長期:SAFの開発・製造・普及の遅れによる供給量不足や供給地域の偏り、価格の高止まりによる収支への影響。
  • 中~長期:気候変動対応の遅れに伴う消費者意識への影響(航空を利用した移動需要の低迷)、国内や近距離輸送におけるモーダルシフトに伴う航空需要の減退。

【物理的リスク】

  • 短~長期:異常気象の深刻化、甚大な自然災害に起因する旅客数の減少および欠航便増加による収益の悪化。
  • 短~長期:災害に伴う機体・施設の被害復旧費用の増加、災害対策関連など設備投資コストの増大。

航空での移動距離

財務的影響【中期】
ポジティブ(中)
環境負荷の軽減に取り組むことで、移行シナリオでも需要増による収益に与える影響はポジティブ。
対応方針・取り組み
  • 航空旅客需要の中長期的な成長を見込み、環境負荷を軽減した新型機の取り扱いを中心に事業運営を行い、収益の拡大を図る。
  • 航空業界に対する排出規制・カーボンプライシングの導入等は業界環境に影響を与える可能性があるため、今後の動向を注視する。
財務関連情報

金融・リース・不動産本部

  • 対象事業が属するセグメントの利益:2024年3月期 約439億円
    (うち、Aircastle事業の連結損益:約26億円)
  • 対象事業のエクスポージャー:Aircastle社連結投資簿価 2024年3月期末 約1,862億円

船舶事業

事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))
■現行シナリオ ■移行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:世界経済の成長・人口増加に連動する形で、海上輸送量は継続的に増加。
  • 短~中期:低燃費船ないし低炭素の次世代燃料船への入れ替えを進める必要性から、船舶売買仲介や燃費向上デバイス販売の機会が増加。
  • 中~長期:発電燃料の低炭素化が進捗するにつれ、アンモニアや水素に代表されるクリーンエネルギーや、トランジション・バックストップ燃料として利用されるLNGの海上輸送量が伸長。また洋上風力発電の普及に伴い設置・メンテナンス用等の関連船舶需要が増加。

【移行リスク】

  • 中~長期:炭素税の導入や環境規制の強化により、運航コストが上昇するとともに、燃費性能に劣る老齢船の市場競争力は徐々に低下。

【物理的リスク】

  • 特段なし

船舶での移動距離

財務的影響【中期】
ポジティブ(中)
環境規制の強化に伴い、燃費性能に優れた新鋭船への入れ替え、配船効率の向上、既存船の省エネ技術の導入により、燃費性能向上に取り組むことで収益が拡大。
対応方針・取り組み
  • 海上輸送需要の増加を事業機会と捉え、事業規模および収益の拡大を図る。
  • 環境規制、顧客ニーズ、市場の変化や動向を見据えながら、燃費性能に優れた新鋭船への入れ替えを行うほか、配船効率の向上、既存船の省エネ技術の導入により燃費性能向上に取り組む。
  • 次世代燃料船は発展途上にあるが、中長期的な需要・技術・価格動向を見据え、次世代燃料船および新燃料輸送船の新規事業の成長機会に向け取り組む。
  • 「脱炭素化・運航最適化・省人化」に焦点を当て、新技術を活用した新規分野のビジネスへの取り組み・展開を図る。
財務関連情報

航空・船舶本部

  • 対象事業が属するセグメントの利益:2024年3月期 約264億円
  • セグメントに対応する資産:2024年3月期末 約3,791億円

北米アグリインプット事業

事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))
■現行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:世界の穀物需要は増加。
  • 短~長期:穀物需要増に伴って耕地用面積は他用途の土地に代わり増加。
  • 中~長期:北米地域では気温上昇により西部および南部を中心に農業の栽培可能期間長期化を想定。
  • 中~長期:全般的には降水量が増加するエリアが多く、その傾向は現行シナリオでより強化。

【移行リスク】

  • 中~長期:北米地域の水ストレスは、西部が高く、東部は相対的に低くなることが想定。

【物理的リスク】

  • 中~長期:気候パターンの変化により主力地域である北米地域における穀物不作が生じると、農業資材ビジネスの収益に大きな影響を与える可能性。
  • 中~長期:異常気象の激甚化で物流機能の麻痺が生じると、事業オペレーションは影響を受ける可能性。
■移行シナリオ

【機会】

  • 短~長期:世界の穀物需要は増加するとともに、穀物収量も、研究開発投資等の技術革新による環境的に持続可能な生産方法にて増加。
  • 短~長期:穀物需要増に伴って耕地用面積は他用途の土地に代わり増加。
  • 中~長期:北米地域では気温上昇により西部および南部を中心に農業の栽培可能期間長期化を想定。

【移行リスク】

  • 中~長期:全般的には降水量が増加するエリアが多いが、南西エリアおよび中央エリアでは減少傾向となる地域も存在。
  • 中~長期:北米地域の水ストレスは西部が高く、東部は相対的に低くなることが想定されるが、現行シナリオよりはその影響は低下。

【物理的リスク】(以下2点はいずれも現行シナリオよりはその影響は低い)

  • 中~長期:気候パターンの変化により主力地域である北米地域における穀物不作が生じると、農業資材ビジネスの収益に大きな影響を与える可能性。
  • 中~長期:異常気象の激甚化で物流機能の麻痺が生じると、事業オペレーションは影響を受ける可能性。
  • 穀物需要

  • 耕地用面積

  • 穀物収量(2012年の収量を100とした場合の指数)

財務的影響【中期】
ポジティブ(小)
穀物需要の拡大により、収益に与える影響はポジティブ。移行シナリオでは、収量拡大に対するニーズが更に高まり、アグリインプット事業の成長率を拡大させる可能性あり。
対応方針・取り組み
  • 生産性向上に寄与する農業資材の開発やサービス提供を通じた農業支援ビジネスを拡大させる。
  • 自然災害の増加・激甚化による物流機能への影響については、商品・サービスの多角化により、また、水ストレスについては、影響を相対的に受けにくいエリアでの拠点網拡大により、物理的リスクの軽減を図る。
  • 調達・販売拠点網の地理的分散・拡大、商品・サービスの多角化など、総合的にリスク管理を行う。
財務関連情報

アグリ事業本部

  • 対象事業が属するセグメントの利益:2024年3月期 約415億円
    (うち、Helena Agri-Enterprisesの連結損益:約394億円)
  • セグメントに対応する資産:2024年3月期末 約1兆2,224億円

 米国における農業資材の販売および各種サービスの提供を行う事業会社

森林事業

事業環境認識(移行リスク/機会、物理的リスク/機会、時間軸(短期・中期・長期))
■現行シナリオ

【機会】

  • 中~長期:森林面積は微減する一方、東南アジアを中心に単位面積当たりの収量が緩やかに増加。
  • 短~長期:一部の国でのカーボンプライシング制度やボランタリーなカーボンクレジットの売買においてCO2回収・固定機能が注目。気候変動関連の国際イニシアティブの中で、サプライチェーン内でのCO2回収・固定の取り組みを奨励する動きあり。

【移行リスク】

  • 短~長期:気候変動の影響による火災保険料の増加、気候変動対策を目的とした関連施策の導入(バイオディーゼル義務化や電気自動車の導入等)。

【物理的リスク】

  • 中~長期:気候変動による極端な気温の上昇、乾期の長期化や落雷の増加に伴う山火事の発生、病虫害の発生等。
■移行シナリオ

【機会】

  • 中~長期:植林由来のバイオマス燃料の需要は増加傾向。
  • 中~長期:森林減少・劣化の抑制や森林回復に資する政策等の実施により、保護地域を含む森林面積が拡大。
  • 中~長期:2030年以降カーボンプライシングの導入加速・強化に伴い、植林などによるCO2回収・固定機能に関わる重要性が現状以上に増加(その方策として、環境植林やバイオエネルギーの利用や貯蔵(BECCS:Bioenergy with Carbon Capture and Storage)等を想定)。CO2回収・固定事業への投資や回収・固定量の売買の活発化に伴い、森林事業も木質資源供給以外の価値提供に転換する必要性が発生。

【移行リスク】

  • 短~長期:気候変動の影響による火災保険料の増加、気候変動対策を目的とした関連施策の導入(バイオディーゼル義務化や電気自動車の導入等)。

【物理的リスク】

  • 中~長期:気候変動による気温の上昇、乾期の長期化や落雷の増加に伴う山火事の発生、病虫害の発生等。
  • 森林面積(2020年の森林面積を100とした場合の指数)

財務的影響【中期】
ポジティブ(中)
現行シナリオでは、森林面積の縮小に伴う既存植林資産の価値向上を期待。移行シナリオでは、気候変動対策により森林価値が向上し、また、森林面積の拡大によって事業規模拡大の機会が増加することから、収益に与える影響はポジティブ。
対応方針・取り組み
  • 森林再生に係る課題認識のもと、従来の素材利用に加えて森林による炭素吸収・固定を通じたカーボンクレジットプログラムの確立といった分野においても、機会を追求する。
  • 世界2カ国2つのプロジェクトで約12万ヘクタールの植林事業(総事業面積約30万ヘクタール)を適正管理するとともに、将来の脱炭素社会に向けた森林資源の利活用を研究する。
  • 植林地・管理林の炭素蓄積量の増大、植林資産の多目的利用により炭素固定量を拡大し、環境価値を高め、資産価値向上に繋げていく。
  • 山火事対策として、消火設備の整備、消防・監視体制の徹底、地元コミュニティへの啓蒙活動などを実施。植林地はブロックごとに植林地を囲むように防火帯(何も植えていない更地)を数メートルの幅で設けており延焼を防ぐ(火災がそこで止まる)工夫をする。
財務関連情報

フォレストプロダクツ本部

  • 対象事業が属するセグメントの利益(損失):2024年3月期 約△142億円
    (うち、ムシパルプ事業※1の連結損益:約3億円、WA Plantation Resources※2の連結損益:約13億円)
  • セグメントに対応する資産:2024年3月期末 約3,386億円

1 インドネシアにおける植林事業(広葉樹植林)、パルプの製造および販売事業を行う事業会社

2 豪州における製紙用・バイオマス燃料用木材チップ製造、販売並びに植林事業を行う事業会社

  • 発電事業
    (石炭火力・ガス火力・
    再生可能エネルギー)
  • エネルギー資源権益事業
    (石油・ガス・LNG)・
    代替エネルギー事業
  • 金属資源権益事業(銅)
  • 金属資源権益事業
    (鉄鉱石・原料炭)
  • 航空機リース事業
    (Aircastle)
  • 船舶事業
  • 北米アグリインプット事業
  • 森林事業

財務的影響【現在】【短期】

現在(2024年3月期)および短期(~3年間)において、気候関連のリスク(キャッシュ・フロー、ファイナンスへのアクセスまたは資本コストに影響を与えると合理的に見込み得るリスク)が、丸紅グループに与える財務的影響(財政状態、財務業績、キャッシュ・フローへの影響)について、2024年3月期の決算(①総資産:8兆9,236億円、②純利益:4,714億円、③基礎営業キャッシュ・フロー※1:5,480億円)を基準として、気候関連の「移行リスク」および「物理的リスク」に基づき検討した結果※2、現在および短期の時間軸における丸紅グループへの直接的な影響は①~③それぞれにおいて1%未満であり、影響は限定的です。

1 基礎営業キャッシュ・フロー:営業キャッシュ・フローから営業資金の増減等を控除

2 気候関連の「移行リスク」とは低炭素経済に移行する取り組みから生じるリスク(政策、法律、技術、市場およびレピュテーション・リスク)、「物理的リスク」とは気候変動によりもたらされるリスクで、事象を契機とすることがあるもの(急性の物理的リスク)または気候パターンの長期的な変化によるもの(慢性の物理的リスク)をいいます。
「移行リスク」の検討にあたっては、カーボンプライシングが導入されている主要国の政策や法律の動向を踏まえて試算しました。試算にあたっては、事業実施国において現時点で導入済もしくは今後3年以内(短期)に導入予定のカーボンプライシング制度に当該事業が該当し、かつ当該制度変更リスクがヘッジされていない場合を対象としました。その結果、現在の財務的影響は1%未満であり、今後、短期の時間軸で試算根拠となるカーボンプライシングの価格が現行の2倍になったとしても、その影響は同じく1%未満であると分析しています。
「物理的リスク」の財務的影響については現在および短期の影響は限定的ですが、丸紅グループでは、当該リスクへの対応として、各事業拠点における設備、物流・サプライチェーンへの影響など、各事業に対する影響を想定し、BCP(Business Continuity Plan)の策定、防災対策、各種保険への加入、関連するステークホルダー(従業員・地域住民含む)への災害に関する啓蒙活動の実施(例:山火事対策)など、種々リスク対策を実施しています(詳しくは「シナリオ分析」の「対応方針・取り組み」をご参照ください)。

ガバナンス

丸紅グループはサステナビリティ関連の重要事項(対応方針、目標、アクションプランなど)について、経営会議および取締役会にて審議・決定しており、取締役会の監督が十分に得られる体制を構築しています。取締役の報酬では、個人定性評価において、グリーン戦略を含むサステナビリティに関する取り組み等に関する貢献を考慮する等、中長期的な企業価値との連動性をより高める仕組みを取り入れています。

社長直轄の「サステナビリティ推進委員会」においては、サステナビリティに関連する幅広い事項を議論の対象としており、例えば、気候変動対応に関し、TCFD提言に基づく気候関連のリスクおよび機会の評価、戦略、リスク管理、指標および目標の設定や見直し、モニタリングを、気候関連のイノベーションの進捗や外部環境の変化を踏まえて議論し、定期的(年1回以上)に取締役会への報告を行っています。2024年3月期はサステナビリティ推進委員会を4回開催し、中期経営戦略GC2024で掲げるグリーン戦略の推進やTCFD開示について議論しました。

サステナビリティ推進委員会の委員長(Chief Sustainable Development Officer)は常務執行役員が務めています。社外役員もアドバイザーとしてメンバーに加わっており、独立した外部の視点も踏まえながらサステナビリティに関する事項の管理・統括を行っています。

サステナビリティ推進体制

リスク管理

丸紅グループは、気候変動、自然資本およびサプライチェーンマネジメントをはじめとする、サステナビリティの観点で重要度の高いリスクおよび機会について、サステナビリティ推進委員会で管理・モニタリングを行っています。

ビジネスのサステナビリティ面における潜在的なリスク評価として、環境、安全衛生、社会の3カテゴリ、27項目の多角的観点から分析・検討を行う仕組みを構築し、それぞれの評価項目における潜在リスクの重要度と影響度を判断しています。このリスク評価手法を用いて、グループ内やサプライヤーのサステナビリティ調査を実施しています。投融資決定プロセスにおいても、このリスク評価手法を用いて、既存事業のモニタリングを含め、グループの事業をサステナビリティの観点より継続的に評価する体制を構築しています。

とりわけ重要度の高い気候変動の影響に関しては、IEA等の様々なシナリオ分析を参照してリスクが高いと判断される場合には、想定されるGHG排出量の削減計画、案件実施国における脱炭素計画、気候変動長期ビジョンとの整合性等を考慮し、気候関連のリスクおよび機会、事業の優先度等を踏まえたうえで、投融資の意思決定に活かしています。また、気候変動の影響を含むリスクの高い事業領域については、必要に応じ、投融資委員会・経営会議・取締役会で審議しています。これらのリスク管理体制については、毎年実施している内部統制の基本方針の見直しの中で、前期の運用状況が取締役会に報告され、有効性を確認しています。

気候関連の「物理的リスク」については、丸紅グループでは、個々の対策が最適かを評価し、あらゆる危機に関して対応する体制の構築に継続して取り組んでいます。2022年4月、それまでの個別の危機事象をベースにしたBCP(Business Continuity Plan)を改定し、自然災害などを含む、オールハザード型の丸紅グループBCPを導入しています。BCPを有効に機能させ、BCM(Business Continuity Management)体制を構築・推進するため、本社総務部内に専任組織を設け、人員・システム・オフィス(建物)・決済機能およびグループ会社経営に関わる重要リソースに対する罹災が生じた場合には人命の安全を最優先に速やかに対応できる体制を構築しています。

事業におけるサステナビリティに係るリスク評価項目(3カテゴリ27項目)
環境 気候変動/環境汚染/生物多様性/資源管理/対策・管理手順(環境)
安全衛生 機械安全/火災・爆発/有害物質との接触/感染/危険性のある作業/対策・管理手順(安全衛生)
社会 強制労働・人身取引/児童労働/労働時間/賃金・雇用契約/差別/ハラスメント・懲罰/多様性の尊重/結社の自由および団体交渉権/土地の問題/地域コミュニティへの負の社会的影響/先住民・文化遺産/紛争鉱物/プライバシー/アニマルウェルフェア(動物福祉)/責任あるマーケティング/対策・管理手順(社会)

指標および目標

気候関連の指標および目標

気候関連のリスクおよび機会への対応の一環として、丸紅グループでは以下の指標および目標を定めています。

指標および目標 実績
  1. 石炭火力発電事業によるネット発電容量を2019年3月期末の約3GWから2025年までに半減、2030年までに約1.3GW、2050年までにゼロにする
約2.4GW(2024年3月期末時点)
  1. 2024年3月期までにグリーンレベニューを約1兆3,000億円に拡大
約1兆700億円(2024年3月期)
  1. 2050年までにGHG排出ネットゼロ※1
    2030年までに
    1. (1)Scope 1・Scope 2のCO2排出量を2020年3月期
      (約1百万CO2トン)対比50%削減
    2. (2)Scope 3カテゴリ15(投資)のCO2排出量を2020年3月期
      (想定CO2排出量約36百万CO2トン※2)対比20%削減
  2. 1 対象範囲:Scope 1・Scope 2およびScope 3(カテゴリ15(投資))

    2 既存投資先の2020年3月期実績に、2021年3月時点での約定済み案件(電力事業については売電契約締結済みで商業運転開始前の案件)からの想定排出量を加えた排出量

  1. (1)Scope 1・Scope 2:1.05百万CO2トン※3(2024年3月期)
  2. (2)Scope 3カテゴリ15(投資):25百万CO2トン(2024年3月期)
    内訳
    発電事業※4   23百万CO2トン
    資源権益事業  2百万CO2トン
    その他     1百万CO2トン
  3. 3 Scope 1・Scope 2の合算値は、6.5ガスを含みません。単位未満の数字を四捨五入して表示しています。

    4 実績値には、売電契約締結済みで商業運転開始前の案件からの想定排出量は含みません。商業運転開始後は、実際の排出量が実績値に反映されます。

 Scope 1~3の排出量データについては、データをご参照ください。

 Scope 1・Scope 2およびScope 3カテゴリ15(投資)の実績値については第三者保証を取得しています。詳細は、環境データをご参照ください。

石炭関連事業に関する取り組み方針

石炭火力発電事業によるネット発電容量推移

石炭火力発電事業に関する取り組み

丸紅は、2018年に石炭火力発電事業に関する方針を策定し、新規石炭火力発電事業には取り組まないことを宣言しています。
既契約済みの石炭火力発電事業については、ホスト国などのステークホルダーへの責任を果たすため、責任を持って発電所の運営方針を検討していきます。また、同時に、ホスト国の脱炭素に向けたエネルギー政策への貢献を通じ、丸紅グループの脱石炭プロセスを加速化していきます。
なお、ネット発電容量の削減目標は長期売電契約の満期終了などに伴い達成する見込みです。

石炭火力発電事業及び再生可能エネルギー発電事業に関する方針 はこちら[93KB]

一般炭権益に関する取り組み

丸紅は、2020年に一般炭権益についての方針を策定し、一般炭権益は保有しておらず、また新規権益獲得も行わないことを宣言しています。

内部炭素価格

事業に影響し得る炭素税や排出権取引における炭素価格の勘案については、投融資案件の決裁申請時において、想定GHG排出量と排出権価格(EU ETS※1など)をもとに社内炭素価格(インターナルカーボンプライシング(ICP:Internal Carbon Pricing))を設定し、将来のGHGインパクトを参考値として定量化・可視化しています(2024年3月期において試算に用いた炭素価格の年間平均価格は約€80/t-CO2)。

1 EU ETS:欧州連合域内排出量取引制度(EU Emissions Trading System)。

データ

GHG排出量

<GHG排出に関する指標および目標はこちら[1.2MB]

<Scope 1・2排出量>
  • (単位:t-CO2e)
2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
Scope 1 丸紅単体主要拠点 4 12 75 120 121
丸紅単体(主要拠点以外)
+連結子会社
773,194 797,963 1,016,412 1,000,004 948,704
合計 773,198 797,975
(6.5ガス※1を含む)
(683,025
(6.5ガス※1を除く))
1,016,487
(6.5ガス※1を含む)
(896,877
(6.5ガス※1を除く))
1,000,124
(6.5ガス※1を含む)
(849,910
(6.5ガス※1を除く))
948,825
(6.5ガス※1を含む)
(790,865
(6.5ガス※1を除く))
Scope 2 丸紅単体主要拠点 2,307 2,146 0 0 0
丸紅単体(主要拠点以外)
+連結子会社
308,193 280,025 222,559 221,821 254,928
合計 310,500 282,171 222,559 221,821 254,928
総計 1,083,698 1,080,146
(6.5ガス※1を含む)
(965,196
(6.5ガス※1を除く))
1,239,046
(6.5ガス※1を含む)
(1,119,436
(6.5ガス※1を除く))
1,221,946
(6.5ガス※1を含む)
(1,071,731
(6.5ガス※1を除く))
1,203,753
(6.5ガス※1を含む)
(1,045,793
(6.5ガス※1を除く))
  • 燃料および蒸気のCO2排出係数
    地球温暖化対策推進法の係数(令和6年4月施行前)を使用しています。
  • 電力のCO2排出係数
    単体については、電気事業者別排出係数(調整後排出係数)を使用しています。
    国内の連結子会社については、2020年3月期までは地球温暖化対策推進法に基づく代替値を使用していましたが、2021年3月期からは調整後排出係数を使用しています。排出係数の変更に伴う排出量への影響は7,627t-CO2の減少となります。
    海外の連結子会社については、国際エネルギー機関(International Energy Agency, IEA)による国別のCO2排出係数(CO2 emissions per kWh from electricity generation)の値を使用しています。2021年3月期からは再生可能エネルギー由来の電力については、ゼロの排出係数を適用しています。
  • 事業活動に伴うエネルギー起源CO2以外の温室効果ガス(6.5ガス)排出係数
    地球温暖化対策推進法の係数(令和6年4月施行前)を使用しています。
  • 2020年3月期以前のGHG排出量には6.5ガスを含んでいません。2021年3月期以降のGHG排出量には6.5ガスを含んでいますが、Scope 1の合計および総計においては6.5ガスを除いたGHG排出量についても開示しています。
  • 2022年3月期から、丸紅単体国内事業所における購入電力を再生可能エネルギー100%にし、東京本社でエネルギーとして購入した蒸気・冷水については、再生可能エネルギー熱由来のJ-クレジットを調達することで、丸紅単体主要拠点のScope 2ゼロを実現しています。
<Scope 1排出量(6.5ガス※1)内訳>
  • (単位:t-CO2e)
2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
6.5ガス総量 114,950 119,610 150,214 157,960
内訳 二酸化炭素(CO2 5,203 9,500 31,740 31,192
メタン(CH4 72,081 71,658 75,149 76,979
一酸化二窒素(N2O) 36,602 38,096 42,612 49,196
ハイドロフルオロカーボン(HFCs) 1,064 355 712 593
パーフルオロカーボン(PFCs) 0 0 0 0
六ふっ化硫黄(SF6 0 0 0 0
三ふっ化窒素(NF3 0 0 0 0

1 6.5ガスは、ドライアイスの使用に伴う二酸化炭素、廃棄物の焼却もしくは製品の製造の用途への使用・廃棄物燃料の使用に伴う二酸化炭素、メタンおよび一酸化二窒素、燃料の燃焼の用に供する施設および機械器具における燃料の使用、家畜の排せつ物の管理に伴うメタンおよび一酸化二窒素、家畜の飼養(家畜の消化管内発酵)に伴うメタン、業務用冷凍空気調和機器の整備におけるHFCの回収および封入におけるハイドロフルオロカーボン、変圧器等電気機械器具の使用における六ふっ化硫黄を対象としています。なお、パーフルオロカーボンと三ふっ化窒素の排出はありません。また、六ふっ化硫黄については、地球温暖化対策推進法に基づく報告義務が生じる会社はありませんでした。

 各内訳の合計と全体の合計は四捨五入の関係で一致しない場合があります。

<Scope 3排出量>

国際基準であるGHGプロトコルを参照し、サプライチェーン上の各カテゴリにおける温室効果ガス排出量を算定し、自主的に開示しています。

  • (単位:百万t-CO2e)
カテゴリ 2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
1 購入した製品・サービス - - - - 36
2 資本財 - 0.3 0.3 0.3 0.4
3 Scope 1・2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 - 0.2 0.2 0.2 4
4 輸送、配送(上流) - 0.02 0.01 0.01 1
5 事業から出る廃棄物 - 0.01 0.02 0.1 0.1
6 出張 - 0.01 0.01 0.01 0.01
7 雇用者の通勤 - 0.01 0.01 0.01 0.01
8 リース資産(上流) - Scope 1・2に含む Scope 1・2に含む Scope 1・2に含む Scope 1・2に含む
9 輸送、配送(下流) - カテゴリ4に含む カテゴリ4に含む カテゴリ4に含む カテゴリ4に含む
10 販売した製品の加工 - - - - 1
11 販売した製品の使用 - - - - 18
12 販売した製品の廃棄 - - - - 3
13 リース資産(下流) - - - - 0.3
14 フランチャイズ - 該当なし 該当なし 該当なし 該当なし
15 投資 26 25 25 22 25
内訳 発電事業 22 21 21 19 23
資源権益事業 3 3 2 2 2
その他 1 1 1 1 1
合計 26 25 25 23 89

 カテゴリ15の内訳とカテゴリ15の合計値は四捨五入の関係で一致しない場合があります。

 各カテゴリと全カテゴリの合計値は四捨五入の関係で一致しない場合があります(2025年1月17日に、Scope 3 カテゴリ15以外のカテゴリを追加して更新しました)。

 算定カテゴリ:2023年3月期までは、カテゴリ2~9、15のみを算定対象としています。2024年3月期からは、カテゴリ1、10~13を算定対象に含めています。

カテゴリ1~14共通:

  • 算定範囲:単体および連結子会社を対象に算定しています。カテゴリ3、4については、2024年3月期より算定範囲を拡大しています。
  • 集計対象の会社間でのダブルカウントについては、明確な場合は除外しています。
  • トレーディングにおいて、仕入先・売先が集荷・輸出入・卸売・仲介業者との取引(トレーダーとの取引)については、明確な場合は除外しています。
  • 排出係数:主に国立研究開発法人産業技術総合研究所によるInventory Database for Environmental Analysis(IDEA)を使用。その他、 IEAによる国別のCO2排出係数(CO2 emissions per kWh from electricity generation)、環境省排出原単位データベース、各業種のLCA文献等の値を使用しています。
  • 参照文献:Corporate Value Chain (Scope 3) Accounting and Reporting Standard (GHG Protocol)、Technical Guidance for Calculating Scope 3 Emissions (GHG Protocol)、Estimating petroleum industry value chain (Scope 3) greenhouse gas emissions (International Petroleum Industry Environmental Conservation Association, IPIECA)、化学産業のための製品カーボンフットプリントガイドライン(Together for Sustainability)等

カテゴリ1:肥料、穀物、化学品等が含まれます。
カテゴリ4:2023年3月期までは、国内の丸紅単体の荷主としての国内委託輸送のみを算定対象としています。2024年3月期からは、国内の丸紅単体および連結子会社における日本発着の国際海上輸送を算定対象に含めています。 カテゴリ10:中間製品・原料の販売に関して、その最終製品までの加工プロセスが把握できないものについては除外しています。
カテゴリ11:化石燃料等が含まれます。

カテゴリ15:

  • 当社のScope 1・2に含まれない持分法適用関連投資先のScope 1・2を算定の範囲としており、当社持分比率を乗じて排出量を算定しています。なお、清算・売却方針決定済みの事業、再生可能エネルギー事業、オフィス業務中心の事業からの排出量は含みません。
  • 主に当社のScope 1・2と同様に算定していますが、一部、投資先から報告を受けた排出量や推計による排出量が含まれています。
  • 発電事業のうち、海外発電事業については、2006年気候変動に関する政府間パネル(IPCC)国別温室効果ガスインベントリガイドラインのCO2、CH4、N2Oを含む排出係数を使用しています。石炭は、すべて気乾ベースの重量と仮定し排出量を算定しています。

エネルギー・電力消費量

<2026年3月期までの東京本社の目標設定はこちら

2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
丸紅単体主要拠点の電力消費量(単位:千kWh) 5,227 4,629 8,888 8,956 9,086
丸紅単体+連結子会社のエネルギー消費量(単位:千GJ) 15,303 13,771 17,515 16,992 16,056
  • 電力の単位発熱量は、3.6GJ/MWhを使用しています。
  • 燃料は地球温暖化対策推進法の単位発熱量(令和6年4月施行前)を使用しています。
  • バイオマスエネルギーは含みません。
  • 2022年3月期から、丸紅単体国内事業所における購入電力を再生可能エネルギー100%にし、東京本社でエネルギーとして購入した蒸気・冷水については、再生可能エネルギー熱由来のJ-クレジットを調達しています。

輸送時の環境負荷

2020年3月期 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
輸送量(千トンキロ) 484,678 364,538 266,675 220,170 207,757
CO2排出量(t-CO2 22,617 17,516 13,768 11,787 10,246
原単位(原油換算kl/千トンキロ) 0.0173 0.0178 0.0192 0.0199 0.0182
  • 丸紅株式会社の荷主としての国内委託輸送に伴って発生する環境負荷を対象としています。

気候変動に関するコスト

  • (単位:千円)
項目 内容 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期
気候変動リスク回避のためのコスト 非常用発電機関係および異常気象による洪水等対策 5,732 6,255 6,519
気候変動リスク回避のための研究開発費 森林保全、温室効果ガス削減などに関する研究開発費 5,830 8,127 11,204
  • 【本環境データの集計対象拠点について】
  • 丸紅単体主要拠点
    東京本社、北海道支社、中部支社、大阪支社、九州支社を対象としています。
  • 丸紅単体(主要拠点以外)
    丸紅単体主要拠点を除く、国内支社・支店・出張所、多摩センター等の施設、海外支店等、海外現地法人およびこれらの支店等を対象としています。
  • 丸紅単体国内事業所
    丸紅単体主要拠点(5拠点)、および丸紅単体(主要拠点以外)のうち東北支社、静岡支店、浜松支店、北陸支店、中国支社、沖縄支店、多摩センターを対象としています。
  • 連結子会社
    清算・売却方針決定済みの子会社は含みません。
    2021年3月期より排水量の実績に米国南東部を拠点とする農業資材販売会社を含みます(廃棄物発生量には含まれていません)。
  • 集計値には一部1~12月実績が含まれます。

イニシアティブへの参加

丸紅は、環境・社会マテリアリティの一つとして特定している気候変動対策に貢献すべく、業界団体やイニシアティブの取り組みに参加しています。
当社が参加する業界団体やイニシアティブが気候変動等に関する方針を策定する過程において、当社は、「気候変動長期ビジョン[1.2MB]」等を含む当社方針に基づいて意見表明を行っています。また、方針策定の段階で当事者間に意見の相違が見られる場合は、関係者と調整を行い、当社方針との齟齬が生じないよう適切に対応しています。

ISSB “Championing the ISSB’s climate global baseline” に対する賛同表明について

ISSB “Championing the ISSB’s climate global baseline” に対する賛同表明について

当社は、International Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審議会。以下、ISSB)が「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議」(以下、COP28)において公表した気候関連開示基準※1に関する以下声明について、賛意を表明しました。

1 IFRS (国際会計基準、International Financial Reporting Standards (IFRS)) Standard 1 (S1号):サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項、IFRS Standard 2 (S2号):気候関連開示

声明: “Championing the ISSB’s climate global baseline”

Climate risks are increasingly having a real effect on companies and capital. Therefore - in response to calls for climate action at COP28 - we support the establishment of market infrastructure to enable consistent, comparable climate-related disclosures at a global level. We are committed to advancing the adoption or use of the ISSB’s Climate Standard as the climate global baseline.

詳しくは、IFRS ウェブサイトをご覧ください。

CDP

CDPの水セキュリティ対策においてAリストに選定

当社は、国際環境非営利団体CDP※1より、水セキュリティ対策においてAリスト企業に選定され、コーポレートサステナビリティにおける先進企業として認定されました(2024年2月現在)。2021年に続き、3度目の選定となります。また、気候変動及び森林分野においても、それぞれA-を取得しました。

2023年のCDP Aリスト並びに他の公開スコアは、こちらをご覧ください。

1 国際環境非営利団体CDP:
CDPは、企業や自治体を対象とした世界的な環境情報開示システムを運営する国際環境非営利団体です。当社は2007年より回答しています。CDPは資本市場と企業の購買力を活用することで、企業が環境影響を開示し、温室効果ガスを削減し、水資源や森林を保護することを促進する取り組みを先導してきました。現在では136兆米ドル以上の資産を保有する740を超える署名金融機関と協働しています。2023年には、世界の時価総額の3分の2に相当する23,000社以上、そして1,100以上の自治体を含む、世界中の24,000を超える組織がCDPの質問書を通じて環境情報を開示しました。CDPは、TCFDに完全に準拠した世界最大の環境データベースを保有しており、CDPスコアはゼロカーボンで持続可能な強靭な経済の実現に向けて投資や調達の意思決定を促すために広く利用されています。CDPは、科学に基づく目標イニシアティブ(SBTi: Science Based Targets initiative)、We Mean Business連合、機関投資家の気候変動対策推進イニシアティブ(The Investor Agenda)、ネットゼロ・アセットマネージャーズ・イニシアティブ(NZAMI: Net Zero Asset Managers Initiative)の創設メンバーです。

気候変動に対応する「GXリーグ」への賛同

当社は、経済産業省が設立した「グリーントランスフォーメーションリーグ」(以下、GXリーグ)に加盟しました。
GXリーグは、脱炭素化を目指す企業群と官・学・金融で経済社会システムの変革を目指すもので、排出量取引(GX-ETS)やサステナブルな市場創造に取り組みます。当社は、GXリーグでの市場ルール形成の各種議論(ボランタリークレジットやカーボンオフセットに関する議論等)の場において、総合商社の強みであるグローバルかつ幅広い事業分野でのノウハウを活かした意見発信をしていくことで、日本の温室効果ガスの排出削減、脱炭素化に貢献していきます。

低炭素社会実行計画

当社は、日本経済団体連合会(以下、経団連)が提唱する低炭素社会実行計画に、日本貿易会の一員として賛同し、経団連や日本貿易会の気候変動に関するワーキンググループや意見交換会等に参加しています。
当社は、経団連の低炭素社会実行計画の方針に則って、気候変動対策に取り組んでおり、東京本社の2026年3月期のエネルギー使用量(電気、ガス)を2016年3月期比10%以上削減する目標を設定して省エネ設備の導入等を進めています。

サステナビリティ推進委員会

当社は、日本貿易会のサステナビリティ推進委員会(以下、同委員会)とその傘下の環境ワーキングループのメンバーとして、商社業界全体の環境に関する取り組みに関する検討に参加しています。
同委員会では、商社業界の「環境自主行動計画(脱炭素社会・循環型社会形成)」の策定と進捗状況のフォローアップを行い、目標達成に向けて尽力しています。また、近年は気候変動をはじめとしたサステナビリティ情報開示への対応として、関係機関への意見発信も実施しています。

環境委員会

当社は、経団連の環境・エネルギー関係の委員会である「環境委員会」に参加し、気候変動対策・循環経済(サーキュラーエコノミー)・生物多様性の主流化の推進、環境規制・制度等の改善等、経済と両立する環境政策の実現に取り組んでいます。

気候変動イニシアティブ

事業会社の三峰川電力(株)では、「気候変動イニシアティブ」に参加し、水力発電を中心とした再生可能エネルギーの発電事業を推進し、低炭素社会の実現を目指しています。

エコアクション21

三峰川電力(株)は、2005年より、環境省の制度である「エコアクション21」(以下、本制度)に参加しています。本制度の認証登録にあたり、「環境への取り組みを効果的・効率的に行う方法を構築・運用し、環境への目標を持ち、行動し、結果をまとめ、評価し、報告する」ことを継続的に行っています。この取り組みが高く評価され、2015年には、「エコアクション21中央事務局」より、感謝状と記念品が贈呈されました。今後も、「廃棄物削減」「水質維持」「省エネ/省資源」「地域での環境活動」を行い、地球環境保全を目指し、積極的に行動していきます。

<活動目標と実績(抜粋)>
2024年3月期実績 2025年3月期目標 アクションプラン
社用車燃料の削減 社有車全体の平均燃費: 12.97km/L 社有車全体の平均燃費: 14.04km/L以上
  • 使用目的にあわせ燃費性能が良い車両を優先使用、アイドリングストップ
  • 車両管理システムによるデータ収集
事業所使用電力の削減 集中制御所使用電力: 130,438kWh 集中制御所使用電力: 147,291kWh以下 空調設定温度の管理、稼働時間の制御を継続し、空調機器の適正使用に取り組む。空調の適正使用および不用照明の消灯徹底
一般排出量の削減
  • 資源ごみの割合: 67.5%
  • 年度末時点における排出量: 1,115.5kg
  • 最終処分量: 362.7kg
  • 資源ごみの割合: 75%以上
  • 年度末時点における排出量: 1,062kg以下
  • 最終処分量: 270kg以下
  • リユースによる全体廃棄量の削減
  • 分別の徹底

上述以外の取り組み内容は三峰川電力のウェブサイトをご覧ください。

ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)

当社は、サステナブルファッション実現に向けた課題に対して、共同で解決策を導き出していくための企業連携プラットフォームである「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(Japan Sustainable Fashion Alliance)」に正会員として加盟しています。「適量生産・適量購入・循環利用によるファッションロスゼロ」と「2050年カーボンニュートラル」を目標に、ファッションおよび繊維業界の共通課題について共同で解決策を導き出し、サステナブルなファッション産業への移行を推進することを目的としています。「気候変動対策への貢献」を環境・社会マテリアリティの一つに特定している当社は、その目標実現に向け正会員として主導的に関与し貢献していきます。

JSFAウェブサイトはこちら

ACT FOR SKY

当社は、国産の持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel、以下、SAF)商用化および普及・拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」に加盟しています。地球温暖化対策として、世界的にCO2排出量削減への対応が急速に求められる中、航空業界においてはSAFの技術開発・製造・流通および利用を加速させる必要があります。世界的なSAF需要の高まりに対し、日本でも国産SAFの安定的な供給が必須です。「気候変動対策への貢献」を環境・社会マテリアリティの一つに特定している当社は、「ACT FOR SKY」を通じて、国産SAFの商用化および普及・拡大に向けた動きを加速させると同時に、企業・自治体等が協調・連携して行動を起こし、SAFやカーボンニュートラル、資源循環の重要性を訴えながら市民・企業の意識変革を通じて行動変容に繋げていくことを目指します。

ACT FOR SKYウェブサイトはこちら

取り組み

再生可能エネルギー発電事業への取り組み

持続可能な開発目標としての気候変動を緩和する低炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギー発電事業の積極的な推進と拡大に取り組んでいます。

電力地図

風力・太陽光・バイオマス発電事業への取り組み

丸紅は、小水力発電事業のほかに、風力・太陽光・バイオマス発電事業を通じ、地域環境の保全や生物多様性の保全に資する再生可能エネルギーの創出に積極的に取り組んでいます。

再生エネルギー日本地図

小水力発電事業への取り組み

丸紅は、小水力発電事業(以下、本事業)を重要なビジネスの一つとして考え、2006年からグループ会社である三峰川電力(株)(以下、三峰川電力)において小水力発電事業に取り組んでいます。本事業では、自然エネルギーを活用するため、水質維持や廃棄物削減、省エネ・省資源、地域環境保全活動をはじめとする環境への配慮が不可欠です。当社は、2025年までに日本国内で40カ所程度の小水力発電所の開発を目指し、全国で、地域環境の保全や生物多様性の保全に資する再生可能エネルギーの創出に積極的に取り組んでいきます。

小水力発電とは、生態系に大きな影響を与えるダムのような大規模な工事を伴う施設を使用せず、河川や農業用水などを利用して開発地域を最小限に抑えることができる1,000kW以下の小規模な発電方法です。河川への水質汚染や水中の生物に及ぼす影響が極めて少なく、設置により地形や景観を損なわない、運用時のCO2排出がほとんどないといった、生物多様性への影響および環境保全上のメリットがあります。また、地域の水資源を活用するため、エネルギーの地産地消を実現する技術として、地域の自立的発展に役立つ可能性も秘めています。更に、地域と共生した発電所を目指して、環境をテーマとした地元住民の方々向けイベントや講師派遣、計画地の歴史への理解を深めることなどを通じ、地元関係団体や関係者の理解と協力を得ながらの事業実現を心がけています。

現在、当社は、三峰川第一・第二発電所をはじめ以下の小水力発電所を運営しています。

  • 「地域に近い発電所を目指して」三峰川電力
  • 小水力発電所(山梨県北杜市)

小水力発電事業(2024年3月現在)

発電所名 所在地 許可出力
三峰川第一発電所※1 長野県伊那市 23,100kW
三峰川第二発電所※1 10,800kW
三峰川第三発電所 260kW
三峰川第四発電所 480kW
蓼科発電所 長野県茅野市 260kW
蓼科第二発電所 141kW
蓼科第三発電所 93kW
蓼科第四発電所 145kW
新宮川発電所 長野県駒ヶ根市 195kW
北杜西沢発電所 山梨県北杜市 220kW
北杜川子石発電所 230kW
北杜蔵原発電所 200kW
本門寺第一発電所 静岡県富士宮市 120kW
本門寺第二発電所 140kW
白石発電所 宮城県白石市 95kW
花の郷発電所 福島県下郷町 175kW
番屋川発電所 150kW
姫沼発電所 福島県猪苗代町 160kW
水内川発電所 広島県広島市 180kW
砂谷発電所 108kW
豊平発電所 広島県北広島町 112kW
舂米発電所 鳥取県若桜町 7,890kW
小鹿第一発電所 鳥取県三朝町 3,700kW
小鹿第二発電所 4,990kW
日野川第一発電所 鳥取県日野町 4,300kW
宝沢ほたる発電所 山形県山形市 170kW

1 三峰川第一・第二発電所は中水力発電に該当

外部との協働と地域との共生

二酸化炭素隔離回収・貯留への取り組み

丸紅は、日本CCS調査株式会社に出資しています。
同社は、2008年5月、地球温暖化対策としてのCCS※1を推進するという国の方針に呼応して、CCS各分野の専門技術を有する大手民間会社が結集して設立された、民間CCS技術統合株式会社で、二酸化炭素(CO2)の分離・回収、輸送、地中貯留技術の事業化調査および研究開発業務、実証試験を推進しています。

1 CCS:Carbon dioxide Capture and Storageの略。二酸化炭素(CO2)の回収、貯留を意味しており、工場や発電所などから発生するCO2を大気放散する前に回収し、地中貯留に適した地層まで運び、長期間にわたり安定的に貯留する技術。

日本CCS調査株式会社
株主一覧

地域との共生

小水力発電事業に取り組む三峰川電力は、三峰川発電事業所において、エコアクション21※1の認証を取得しており、これは水力発電所として第1号です。最も標高の高い位置にある第二発電所の取水口は国定公園に接しており、三峰川発電事業所の設備は生物多様性においても価値の高い地域にあることを踏まえ、自然破壊をしないことはもとより、自然を保護していくことを目指しています。その一環として、河川清掃活動や油流出事故に備えた設備保守および緊急時対応訓練を実施していることに加え、年2回の水質検査を実施し、汚染の有無だけでなく、生物の要求する酸素量を満たしているかをチェックすることにより、生物多様性の保全対策を講じています。また、毎年地域の小・中学生や市民100人以上の発電所見学を受け入れ、ハイブリッド(風力、太陽光、水力)発電システムの展示などを紹介し、再生可能エネルギーの啓蒙活動や地域の伝統文化の伝承も支援しています。

北杜市村山六ヶ村堰ウォーターファーム※2では、既存の農業用水路を利用することにより農地への灌漑用水、生活用水と共存すべく利用水量を適宜調整しながら再生可能エネルギーを供給しています。

宮城県白石市の小水力発電所では、上水道施設の送水管の落差を利用した周辺環境への負荷が非常に少ない発電に取り組んでいます。
このほか、丸紅新電力(株)を通じた売電により、電気料金の一部を森林の維持管理活動にあて、生物多様性の改善に努めています。

M&C鳥取水力発電(株)(以下、M&C鳥取水力発電)は、地域住民とのコミュニケーションにより信頼関係を構築することは、水力発電事業を安心・安全・安定に行うために必要不可欠であると考えています。そのため、M&C鳥取水力発電は、「地域共生担当職員」を配置するとともに、ホームページ等に寄せられた住民の皆様の声を業務に反映し、事業の運営を行っています。また、工事や点検等によって生じえる、河川への環境面の影響や、水資源の保全・安定供給等に関する重要事項について、地元6自治体(若桜町、八頭町、倉吉市、三朝町、日南町、日野町)や各種協議会などの地域のステークホルダーの皆様と、定期的に対話を通じたコミュニケーションを行っています。一連の取り組みにより、各自治体のニーズ(苦情を含む)や事業リスクを把握し、経営戦略に組み込んでいきます。
また、M&C鳥取水力発電は、水力発電事業をテーマとした、小・中学校向けの出前教室や職場体験を計画しています。地域住民の知識向上を図るとともに、次世代の人材育成へと繋げ、地域の経済発展に貢献します。

丸紅クリーンパワー(株)(以下、丸紅クリーンパワー)は、「地域における社会課題の解決、地域社会や自然環境との共存を重視し、地域に密着した安定的なエネルギーサービス事業」の推進を目指し、バイオマスを中心とした再生可能エネルギーの開発を行っています。事業活動の一環として、地域の環境フェアや美化運動、地域の小学生向けの発電所の見学会の実施・ソーラーキット配布、商工会の勉強会への参加など、地域のステークホルダーとの交流にも積極的に取り組んでいます。
丸紅クリーンパワーは、「一般社団法人バイオマス発電事業者協会」(以下、同協会)に正会員(理事会社)として参加し、代表理事の職務に就いています。同協会には、発電事業者だけでなく、燃料供給事業者、メーカー、金融機関、コンサルタント会社など各業界からステークホルダーが参画しています。バイオマス発電事業の促進とバイオマス産業の健全な発展を図り、持続可能な循環型社会の構築と地球環境保全の推進に寄与すべく活動しています。

丸紅伊那みらいでんき(株)※3は、地域の日々の暮らしの課題に対するサービス創造を目的に、長野県伊那市およびその周辺において、電力小売やエネルギー関連サービスの提供を行っています。伊那市が管轄する「新産業技術推進協議会サスティナブル環境部会」のメンバーとなり、気候変動・生物多様性を含む持続可能な環境構築に向けた連携に率先して取り組んでいます。また、長野県上伊那郡南箕輪村が進める地球温暖化対策の実施に向けた計画策定の中で、南箕輪村地球温暖化対策実行計画(区域施策編)策定に関する特別委員会へ参加し、本社のある伊那市周辺地域の気候変動への対応について、地域と連携し取り組んでいます。
なお、丸紅グループの三峰川電力の水力発電事業も当該地域で展開しています。グループとして地域共生社会に貢献する事業ポートフォリオを構築していくことで、持続的な地域発展に貢献します。

1 環境省が定めた環境経営システムや環境報告に関するガイドラインに基づく制度

2 北杜市村山六ヶ村堰上に整備された4つの小水力発電所(北杜西沢発電所、北杜市村山六ヶ村堰水力発電所(北杜市営)、北杜川子石発電所、北杜蔵原発電所)

3 同社の株主構成(出資比率)は丸紅(株)(56%)、中部電力ミライズ(株)(34%)、伊那市(10%)です。株主間の協議を通じた地域開発に関する目標や期限や成果に対するモニタリングを行うシステムを構築しています。

丸紅株式会社