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自然との共生(TNFD提言に基づく情報開示)

自然との共生(TNFD提言に基づく情報開示)をご紹介します。

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環境自然との共生(TNFD提言に基づく情報開示)

TNFD提言に基づく情報開示

丸紅グループは多岐にわたる分野のビジネスをグローバルに展開しており、そのいずれのビジネスにおいても自然に何らかの影響を与えていること、すべてのビジネスが自然の恩恵の上に成り立っていることを認識しています。
丸紅グループは、ビジネスの持続的発展には、ビジネスに関連する自然への依存・インパクト、そこから生じ得るリスクと機会を適正に分析、評価することが重要であると考えています。また、その内容に関する自然関連財務情報開示の重要性についても認識しており、2024年1月に、TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:自然関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、「TNFD Adopters」に登録しました。
また、2022年3月に、TNFDのビジョンとミッションを共有し、サポートする組織であるTNFDフォーラムにも参画しています。

一般要件

本開示における一般要件は以下の通りです。

  1. マテリアリティの適用
    丸紅グループは、財務的マテリアリティに加え、自然資本・生物多様性に与える影響(インパクトマテリアリティ)の観点においても分析・評価を行い、ダブルマテリアリティでの開示を行っています。
  2. 開示のスコープ
    本開示では、TNFD提言の4つの柱(ガバナンス、戦略、リスクとインパクトの管理、測定指標とターゲット)に沿った情報開示をします。「戦略」では、丸紅グループのすべての商材の直接操業およびバリューチェーン上下流を対象とした自然関連課題(自然関連の依存・インパクト、リスク・機会)の評価結果と、ビジネスを展開するロケーション(バリューチェーン上下流を含む)における要注意地域の評価結果を開示します。
  3. 自然関連課題がある地域
    丸紅グループのすべてのビジネスのバリューチェーンの上流、下流の整理を行うとともに、その各バリューチェーンのロケーションについても情報の整理を行い、自然関連課題がある地域を分析しました。
  4. 他のサステナビリティ関連の開示との統合
    丸紅グループは自然資本・生物多様性に関連する各種課題と気候変動に関連する課題は相互に関係していることを認識しており、TNFD、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく開示をしています。丸紅グループのサステナビリティに関する開示はホームページ内「サステナビリティ」にまとめており、サステナビリティ全般に関わる考え方、マテリアリティ、テーマ別開示等を公開しています。今後はTNFD開示とTCFD開示の統合も視野に、開示の拡充に努めていきます。
  5. 検討される対象期間
    本開示において、短期を3年まで、中期を3~10年、長期を10~30年として時間軸を定義しています。
  6. 先住民族・地域社会・影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント
    丸紅グループは事業の開発・操業に関して、その用地およびその周辺地域で自然に及ぼす影響により間接的に影響を受け得るあらゆるステークホルダーの方々の人権に負の影響がないかをモニタリング、管理および是正できるプロセスの重要性を認識しています。当社グループは人権に関するすべての国際規範等を支持しており、自らのビジネス活動により影響を受けるすべての人々の人権を尊重し、その責任を果たすべく努力していくことが最重要であるという認識のもと、丸紅グループ人権基本方針に基づいて事業の投資・運営に関する人権デューデリジェンスを実施しています。このほか、地域コミュニティとのエンゲージメント(対話)の実施状況の把握に努め、人権の尊重に関する取り組みを強化しています。詳細につきましては後段の「ガバナンス」をご参照ください。

ガバナンス

丸紅グループはサステナビリティ関連の重要事項(対応方針、目標、アクションプランなど)について、経営会議および取締役会にて審議・決定しており、取締役会の監督が十分に得られる体制を構築しています。取締役の報酬では、個人定性評価において、グリーン戦略を含むサステナビリティに関する取り組み等に関する貢献を考慮する等、中長期的な企業価値との連動性をより高める仕組みを取り入れています(グリーン戦略の詳細は、後述の「自然に関する長期戦略」をご参照ください)。
社長直轄の「サステナビリティ推進委員会」においては、サステナビリティに関連する幅広い事項を議論の対象としており、例えば、自然関連の対応に関し、TNFD提言に基づく自然関連の依存・インパクト、リスクおよび機会の評価、戦略、リスク管理、指標および目標の設定につき議論・報告し、定期的(年1回以上)に取締役会への報告を行っています。報告内容には、気候変動を含む自然関連の指標・目標の進捗状況も含まれます。2025年3月期はサステナビリティ推進委員会を2回開催し、中期経営戦略GC2024で掲げるグリーン戦略の進捗や成果報告、TNFD開示について議論しました。
サステナビリティ推進委員会の委員長は常務執行役員が務めています。委員長は、丸紅グループのサステナビリティの推進および関連開示についての責任を担います。社外役員もアドバイザーとしてメンバーに加わっており、独立した外部の視点も踏まえながらサステナビリティに関する事項の管理・統括を行っています。

丸紅グループは、ネイチャーポジティブに貢献し、自然と共生する社会の実現に向けて取り組むうえで、当社の事業やサプライチェーンが自然に及ぼす影響により間接的に影響を受け得るあらゆるステークホルダーの方々(特に環境の悪化によって脆弱な立場に置かれやすい方々として、例えば、先住民族、地域コミュニティ、高齢者(および地域によっては女性)、身体的なハンディキャップを持っている方、若年者や子どもなどを含みます)の人権(「清潔で健康的かつ持続可能な環境への権利」を含みます)を尊重しています。とりわけ、ステークホルダーの方々が正確で適切な情報を得る権利(Free, Prior and Informed Consentを含む)、環境に関する意思決定に実効的に参加する権利(先住民族・地域コミュニティの自己決定権や強制移住の防止を含む)、実効性のある救済措置を受ける権利、およびこれらを支援・実現するためのエンゲージメント(対話)の実行については、特にその重要性を認識しており、優先的に対応の拡充を目指しています。人権やエンゲージメントへの対応状況については、サステナビリティ推進委員会による定期的な(年1回以上)取締役会報告事項に含まれ、取締役会による監督が機能する体制を構築しています。
また、事業の開発・操業に関してその用地およびその周辺地域でこうした人権への負の影響がないかをモニタリング、管理および是正できるプロセスが重要であると認識しています。個別事業検討の段階で、こうしたリスクと影響に関するモニタリング・評価を行い、社内のプロセスをルール化し実行しています。苦情処理(救済)を行う社内プロセスも構築しており、機密性・匿名性が保証され、あらゆるステークホルダーからの人権侵害についての苦情を対象に利用できる正式な仕組みを設けています(人権侵害についての苦情を提出するための専用窓口)。

サステナビリティ推進体制

詳細は「人権の尊重」の方針 健全な環境に対する人権についての考え方および取り組み 人権デューデリジェンスをご参照ください。

先住民族・地域コミュニティなどのステークホルダーの方々の人権の尊重は不可欠の前提と認識しており、関連官公庁・行政・国際機関関係者との不定期の意見交換の機会や国連人権フォーラムへの参加などを通じ人権尊重取組の普及促進を図っています。
詳細は自然に関する政策提言・ロビー活動についてをご参照ください。

自然関連については、当社役員の自然関連課題に関する政策審議会への出席などを通じ、環境負荷低減に向けた発言・提案を行っています。

戦略

自然に関する長期戦略

丸紅グループは、経営理念として、社是「正・新・和」の精神に則り、公正明朗な企業活動を通じ、経済・社会の発展、地球環境の保全に貢献する、誇りある企業グループを目指しています。丸紅グループの長期戦略は、経営理念の実践であり、顧客・社会の課題を先取りし、ソリューションを提供することで価値を創造し成長することです。
顧客・社会の課題は、多様で変化し続けます。変化を先取りするために、丸紅グループは、1. 人財、2. 地域、3. セクター、4. ビジネスモデルの4つの多様性を差別化要因の一つとし、自らも変化し続けています。これが、丸紅グループの強みであり、価値創造の源泉です。強みを更に高めるため、「基盤マテリアリティ(①新たな価値を創造する人財、②揺るがない経営基盤、③社会と共生するガバナンス)」を特定し、継続的に強化に努めています。

ビジネスが自然資本・生物多様性に与える影響(インパクトマテリアリティ)は、顧客・社会の課題であり、ソリューションの提供を通じて当社グループに「成長」という財務インパクト(財務的マテリアリティ)を与えます。従って、当社グループにとってダブルマテリアリティとシングルマテリアリティは不可分の関係にあり、ビジネスに付随する自然関連課題を把握することは、当社グループの成長機会を探求することにほかなりません。
丸紅グループは自然の劣化という社会課題を先取りし、国際社会の目標である昆明・モントリオール生物多様性枠組み(GBF)に則したネイチャーポジティブ(自然資本や生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せること)の実現を目指すとともに、グループ内外のネイチャーポジティブ経済への移行を推進することで、自らの成長にも繋げていきます。その基盤となるのが中期経営戦略(2022-2024年度)GC2024「グリーン戦略」、および中期経営戦略(2025-2027年度)GC2027「グリーンへの取組」です。

グリーン戦略は、脱炭素、循環経済への移行、水資源・生物多様性の保全などの自然との共生に関連する社会課題の解決に顧客・パートナーなどステークホルダーの方々と一緒になって取り組むことで、丸紅グループの成長に繋げるため、GC2024における基本方針の一つとして策定しました。

グリーン戦略:詳細は統合報告書2023(P21-22)[33.1MB]をご参照ください。

グリーン戦略を現場主導で実践するため、2022年度には営業本部別グリーン戦略を策定しました。セクターごとに多岐にわたるビジネスと自然の関係を踏まえ、営業本部ごとに優先して取り組むべき課題を抽出し、ソリューションを提供し、成長に繋げる戦略です(グリーン事業およびグリーン化の主な取り組み事例については以下参照)。戦略策定時に実施したセクターごとのビジネスと自然の関係の分析・評価、優先課題の抽出と戦略詳細については、後述の「グリーンポータル」に整理・統合しました。

グリーン事業の主な取り組み状況:詳細は統合報告書2024(P106-107)[36.4MB]をご参照ください。
全事業におけるグリーン化の主な取り組み状況:詳細は統合報告書2024(P108)[36.4MB]をご参照ください。

GC2024グリーン戦略・営業本部別グリーン戦略の策定・実践を通じ、「グリーン」を「成長」に繋げる意識がグループ全体に浸透しました。中期経営戦略GC2027においては、「次の成長ステージに向け経営のギアチェンジを図り、利益成長・企業価値向上を加速させる」という基本方針のもと、「グリーンへの取組を推進し企業価値を向上」させる、つまり、「グリーン」も次のステージを目指します。

GC2027 グリーンへの取組:詳細はGC2027(P13)[2.2MB]をご参照ください。

グリーンポータル

「グリーンポータル」は、丸紅グループの営業本部別グリーン戦略策定プロセスを再整理・統合し、ビジネスと自然の関係を把握・評価、優先課題の抽出、ソリューションの検討をグループ内外で行うためのプラットフォームとして開発中のデータベースです。営業本部別グリーン戦略は、総合商社丸紅グループの全事業を、そのバリューチェーンを含め、対象に策定しており、多種多様な商材、バリューチェーン、地域が網羅されており、ネイチャーポジティブへの移行にも貢献することを目指しています。
グリーンポータル構築にあたり、自然関連課題の特定と評価にはTNFDの「LEAPアプローチ」を適用しました。LEAPアプローチとはTNFDが提示している自然関連課題を把握するための任意のアプローチのことで、「LEAP」とは「Locate:発見」、「Evaluate:診断」、「Assess:評価」、「Prepare:準備」の4つのステップの頭文字です。LEAPの実施により、どの商材・バリューチェーンのどの地域における活動がマテリアルであるかが一覧で把握でき、これがグリーンポータルの基盤となる情報となっています。
グリーンポータルは以下のステップで構築しています。

1. ビジネスの定義を整理

丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のビジネスを、「商材」、「バリューチェーン(VC)」、「取扱組織(グループ内/外)」、「ロケーション(活動地域)」の4つの座標軸で定義しました。

  1. ① 商材×VCの整理:丸紅グループが扱う商材とそのバリューチェーンの洗い出し
  2. ② 取扱組織の特定:①で整理した商材×VCに取扱組織を紐づけ
  3. ③ ロケーションの特定:②までで整理した情報のロケーションを特定

上記①~③の結果、商材は100種類を超え、商材×VCの組み合わせも500を超えるパターンとなり、多岐にわたるビジネスをグローバルに展開していることが、総合商社丸紅グループの特徴となっています。

 本社・連結子会社・持分法適用関連会社を「グループ内」、それ以外のバリューチェーン上下流の会社・組織を「グループ外」としています。

2. 商材×VCの要注意地域の評価とバイオームの確認【Locate】

「原材料の主要原産国」と「自社操業地域」について、要注意地域の評価を実施しました。ここではTNFDの基準に基づき、事業を展開しているロケーションが自然の観点で要注意な地域周辺に位置しているかを確認しています。要注意地域周辺での活動がある商材×VCについては、その後のステップ(下記4)で更に評価を深めました。あわせて、ビジネスを展開しているロケーションのバイオームを確認しています。
要注意地域の評価に関する詳細は次項「丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のビジネスと要注意地域との接点」をご参照ください。

3. 商材×VCの依存・インパクトの評価【Evaluate】

上記1で定義した丸紅グループおよびバリューチェーン上下流の各商材×VCの自然に対する依存・インパクトは5段階(Very Low、Low、Medium、High、Very High)で評価しました。依存・インパクトの評価には、UNEP-FI(国連環境計画金融イニシアティブ)・UNEP-WCMC(国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター)・Global Canopy(英シンクタンク)が運営するツール「ENCORE」を用いました。ENCOREは2024年12月時点の情報を参照しています。なお、各商材×VCの業種分類にもENCOREを適用しました。

4. 商材×VCにおけるリスク地域の評価【Assess】

各商材×VCの要注意地域の評価結果(上記2)、依存・インパクトの評価結果(上記3)を掛け合わせ、事業活動において自然関連課題を抱えている可能性のある地域(リスク地域)を整理しました。このステップではバイオームや要注意地域の評価結果を縦軸、依存・インパクトの評価結果を横軸とするマトリクスからリスク地域を絞り込んでいます。
丸紅グループは商材×VCでの依存・インパクトの確認だけではなく、その依存・インパクトにロケーション情報を加味した自然との関係性を整理しており、これが丸紅グループの実施したLEAPアプローチの最大の特色です。このアプローチは多岐にわたる商材×VCに対し横展開が可能で、グリーンポータルの基幹となる情報を提供します。

5. グリーン戦略との紐づけ【Prepare】

自然への依存・インパクトを回避、低減することが自然関連リスクを低減させることに繋がるため、各商材×VC×ロケーションの情報に営業本部別グリーン戦略を紐づけました。これにより、「依存・インパクトの低減に貢献するグリーン戦略」と「ビジネスを展開しているロケーションの特性」が結び付き、丸紅グループが自然関連課題に対しどのようにアプローチするかを体系的に整理することができます。
なお、グリーンポータルは2025年度上半期中を目途に一般公開予定です。

以下では、上記の5つのステップから浮かび上がった丸紅グループおよびバリューチェーン上下流と自然との関連の概観をご説明します。

丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のビジネスと要注意地域との接点

自然関連課題は地域ごとに異なる特性があることから、自社の事業活動がどのような自然や生態系と接点を持ち、そこでどのような活動を行っているかを把握することが肝要です。TNFDでは、組織の直接操業やバリューチェーン上における生態学的に要注意と考えられる地域(要注意地域)や、組織が重要な自然関連課題を特定した地域(マテリアルな地域)を把握し、開示することを求めています。本資料では要注意地域に着目して開示します。
要注意地域の特定は以下のステップで実施しています。

1. ロケーション情報の整理

丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のロケーション情報はグリーンポータルで整理した「ビジネスの定義」を参照しました。なお、一部の商材やVCのトレーサビリティは、国や州レベルのものを含みます。

丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のロケーションの例(背景マップはOpenStreetMapを使用)

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2. 指標の選定

TNFDにおける要注意地域は「生物多様性の重要性」、「生態系の十全性」、「生態系サービス供給の重要性」、「水の物理的リスク」の4つの基準が示されています。TNFD開示では、これらの基準をもとにツールや指標を選定し、組織が要注意地域をどのように定義したかを説明することが求められます。
丸紅グループが関連する商材は多岐にわたることから、多様なセクターを横断的に評価できるよう下記の通り指標を選定しました。これらの地域と接点を持つロケーションを丸紅グループおよびバリューチェーン上下流の要注意地域と定義し、要注意地域で展開されているビジネスはより詳しく自然への依存・インパクトを確認しています。

基準 観点 指標名 指標の概要
生物多様性の
重要性
自然的・生態学的に
保護されている地域
保護地域(WDPA) 国際条約その他で保護地域に指定されているエリアのデータで、世界保護地域データベース(WDPA:World Database on Protected Areas)を参照している。国際自然保護連合(IUCN:International Union for Conservation of Nature and Natural Resources)によって開発され、保護地域を分類するために管理カテゴリがⅠ~Ⅵで設定されている。
(データソース:IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool):生物多様性評価ツール)
生物多様性重要地域(KBA:Key Biodiversity Area) 国際基準で選定された、生物多様性の保全の鍵となる重要な地域のデータ。
国際環境NGO「BirdLife International」が選定した鳥類の重要地域の考え方を、他の生物分類群にも拡張したもの。(データソース:IBAT)
絶滅危惧種にとって
重要な地域
STAR指標(陸域)(Species Threat Abatement and Restoration(STAR) metric(terrestrial environments)) 陸域の生物種を対象に、そこでの種の脅威軽減活動が世界全体の絶滅リスク軽減に寄与する可能性を定量化した指標。
(データソース:IBAT)
STAR指標(海洋域)(Species Threat Abatement and Restoration(STAR) metric(marine environments)) 海洋域の生物種を対象に、そこでの種の脅威軽減活動が世界全体の絶滅リスク軽減に寄与する可能性を定量化した指標。
(データソース:Turner et al.(2024). Targeting ocean conservation outcomes through threat reduction)
生態系の
十全性
生態系の十全性が
高い地域
生物多様性完全度指数(BII:Biodiversity Intactness Index) 土地の改変など、人間の圧力がかかっていない原生的な自然の状態から、どの程度個体数が残っているかを表した指標。
(データソース:Newbold et al.(2016). Has land use pushed terrestrial biodiversity beyond the planetary boundary? A global assessment)
十全性が低下している地域 樹木被覆の減少 2001年~2023年における樹木被覆の減少を示した指標。
(データソース:Global Forest Watch)
生態系
サービス供給
の重要性
先住民族を含む地域コミュニティにおいて、
生態系サービス供給の重要性が高い地域
先住民族・地域コミュニティ 先住民族と地域コミュニティが集団的に所有し使用している土地に関する地図などを公開しているデータプラットフォーム。
(データソース:LandMark)
水の物理的
リスク
水の利用可能性が低い地域 ベースライン水ストレス 流域の水供給量に対する取水量の割合に基づくスコア。水需給のひっ迫度を表す。(データソース:Aqueduct)
洪水リスクの高い地域 洪水の浸水深 再現期間100年の洪水の浸水深(m)。
(データソース:MS&AD 洪水リスクファインダー)
水質の低下が
懸念されている地域
生物化学的酸素要求量(BOD) 世界銀行が出しているBODによる水質汚染指標。
(データソース:世界銀行)
その他 事業を展開する地域の
バイオーム
Global Ecosystem Typology 2.0 生物圏の5つの主要な分類(Realm:領域)である、陸上、淡水、海洋、地下、大気から、生態系の機能に基づいてトップダウンで更に細かく区分された24のグループ(Functional Biome:機能的バイオーム)。
(データソース:IUCN)
3. 分析

1で整理したロケーション情報と2で選定した指標をGIS(地理情報システム)ソフト上で重ね合わせ、丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のロケーションの周辺地域における生態学的な特徴を確認しました。2で選定したすべての指標について分析を実施しています。

丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のロケーションと保護地域の近接(背景マップはOpenStreetMapを使用)

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丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のロケーションと十全性が高いエリアの近接(背景マップはOpenStreetMapを使用)

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丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のロケーションと先住民族・地域コミュニティが権利を主張しているエリアの近接
(背景マップはOpenStreetMapを使用)

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丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のロケーションと水ストレス地域の近接(背景マップはOpenStreetMapを使用)

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4. 要注意地域の選定と整理

3で実施した分析結果をもとに、生態学的に要注意と考えられるロケーション(要注意地域)を選定しました。要注意地域は「生物多様性の重要性」、「生態系の十全性」、「生態系サービス供給の重要性」、「水の物理的リスク」の4つの基準ごとに選定しています。選定した要注意地域については、グリーンポータルで整理した取扱組織からグループ内/外で整理しました。

なお、今回の分析評価を国や州レベルで実施した商材×VCは過大評価されている可能性があることから、トレーサビリティが市レベルよりも細かいレベルで確保できている商材×VCを対象に評価結果を整理しました。
上記1~4の結果から、生態学的に要注意と考えられる地域を含む国の一例を下記の通り示します。要注意地域に該当する商材×VCについては、次のステップとして、該当する4つの基準ごとに、丸紅グループが事業活動を行っているロケーションにおける生態学的影響の実態を確認のうえ、必要に応じた対策を検討します。なお、「水の物理的リスク」に対する対応状況については、CDP Water Securityの回答をご参照ください。

また、公的資金やプロジェクトファイナンスを活用して運営しているインフラ施設については、資金供与先、および管轄政府機関の基準に則した環境アセスメントを実施のうえ、事業活動を行っています。

基準 観点 要注意地域を含む国
生物多様性の
重要性
自然的・生態学的に
保護されている地域
[グループ内]ベトナム、ブラジル、ミャンマー、アメリカ、台湾、ポルトガル、日本
[グループ外]エチオピア、グアテマラ、インドネシア、メキシコ、日本など
絶滅危惧種にとって重要な
地域
[グループ内]ベトナム、ブラジル、ミャンマー、アメリカ、フィリピン、バングラディシュ、
日本など
[グループ外]インドネシア、メキシコ、チリ、オーストラリア、サウジアラビア、日本など
生態系の十全性 生態系の十全性が高い地域 [グループ内]ベトナム、ブラジル、タイ、アメリカ、チュニジア、台湾、日本など
[グループ外]エチオピア、グアテマラ、チリ、サウジアラビア、インドネシア、メキシコ、
日本など
十全性が低下している地域 [グループ内]インドネシア、フィリピン、日本など
[グループ外]オーストラリア、マレーシア、インドネシアなど
生態系サービス
供給の重要性
先住民族を含む地域コミュニティにおいて、生態系サービス供給の重要性が高い地域 [グループ内]台湾、アメリカ、インドネシア、オーストラリア、サウジアラビア、日本など
[グループ外]エチオピア、グアテマラ、インドネシア、オーストラリアなど
水の物理的リスク 水の利用可能性が低い地域 [グループ内]台湾、インドネシア、サウジアラビア、チリ、オーストラリアなど
[グループ外]タイ、サウジアラビア、インドネシア、オーストラリアなど
洪水リスクの高い地域 [グループ内]チリ、日本など
[グループ外]ミャンマー、パプアニューギニア、チリなど
水質の低下が懸念されている
地域
[グループ内]チリ、日本など
[グループ外]中国、日本など

丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のビジネスと自然関連の依存・インパクト

ENCOREによる依存・インパクトの評価の結果として、グループ内外それぞれにおいて依存・インパクトの重要度が特に高いものを抜粋して掲載します。すべての商材×VCにおける依存・インパクトの評価結果は、グリーンポータルにて掲載予定です。(なお、下記の表における大分類、項目名はENCOREの業種分類を採用しており、丸紅グループが取り扱っていない商材、事業も表記に含まれております。)
丸紅グループおよびバリューチェーン上下流のビジネスと自然の関係の特徴として、グループ内よりもグループ外の方が、依存・インパクトの影響度が高い傾向となっています。グループ外のビジネスは、多種多様なセクターにおよび、これらビジネスの主体に対して、自然関連の依存・インパクト低減のソリューションを提供することは、ネイチャーポジティブへの貢献度が高いだけでなく、当社グループにとってネイチャーポジティブへの移行に伴う機会であり、成長に資するものです。気候変動関連のインパクト低減の取り組みについてはTCFD開示もご参照ください。
これまでの検討の結果から、直接操業については、紙・パルプが商材となる産業植林事業(フォレストプロダクツ本部(2025年4月よりライフスタイル部門))の依存・インパクトがマテリアルであると判断しました。なかでも、インドネシアにおける事業は要注意地域に位置し、リスク地域にあることから、今年度はインドネシアにおける産業植林事業を対象としてLEAPを深掘りしました。産業植林事業については自然関連リスク・機会の整理も実施しており、その結果は後述の「産業植林事業」でご説明します。

【依存/グループ内】

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【依存/グループ外】

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【インパクト/グループ内】

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【インパクト/グループ外】

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産業植林事業

産業植林と自然との接点

丸紅グループは、顧客・社会の課題を先取りし、ソリューションを提供し、自らの成長に繋げていくために、環境・社会マテリアリティとして「気候変動対策への貢献」「自然と共生する社会の実現に貢献」「循環型経済構築への貢献」「人権を尊重し、コミュニティとの共発展に貢献」を特定しています。ビジネスと自然の関係において、森林関連ビジネスの重要度は高く、丸紅グループは、インドネシア、オーストラリアの2ヵ国に約12万ヘクタールの産業植林事業を有しています。特にインドネシアの産業植林事業は、ネイチャーポジティブへの移行における機会の一つとして、当社グループの成長に寄与する要素としても重要です(詳細はTCFD開示 気候変動に関する長期戦略 低炭素・脱炭素社会への移行を先取りした丸紅グループの取り組み ③森林・植林分野における取り組みをご参照ください)。また、前述の通り、丸紅グループのバリューチェーンを通した自然への依存・インパクトを分析した結果、直接操業においては、特に依存の観点で産業植林事業がマテリアルであることが判明しました。そこで、今年度は産業植林事業を対象に、LEAPに沿った詳細の分析を行いました。

初めに、事業拠点の中での要注意地域の評価を実施しました。分析の結果、要注意地域と評価されたインドネシアの産業植林事業において、依存している生態系サービスと、自然に与えているインパクト要因を特定しました。その後、特定した依存・インパクトから起因するリスクと機会を特定し、定性的な重要度の評価を実施しました。更に、重要度が高く優先して対応すべきと評価されたリスク項目は、グリーン戦略や既存の取り組み事項と紐づけを行いました。各評価の詳細を以下に示します。

要注意地域の評価【Locate】

事業拠点の中での要注意地域の特定のため、下記の指標を用いて分析しました。これらは、TNFDにて示されている要注意地域の4つの基準のうち3つの基準(生物多様性の重要性、生態系の十全性、水の物理的リスク)について、WWF Biodiversity Risk Filter(BRF)のデータより対応している関連指標を抽出したものです。WWF BRFでは、スコアが3.4以上の場合リスクが高いと評価されているため、各指標のスコアが3.4以上に該当する拠点を「要注意地域」として特定しました。

結果は下記の通りです。インドネシアの一部地域では事業地近郊に保護地域が多く存在しており、他の地域と比較して生態系の十全性が高いため、自然にとって重要な価値のある場所であると確認できました。また、インドネシアに位置するPT. Musi Hutan Persada社(MHP社)は丸紅グループのパルプ関連主要商材の材料生産を担っているのみならず、前述の通り、丸紅グループの成長にとっても重要であるため、MHP社の産業植林事業における自然関連課題を特定し、営業本部別グリーン戦略の対象として戦略を策定しています。

TNFDの基準 用いた指標 指標の概要
生物多様性の重要性 Protected/Conserved Areas
(保護・保全地域)
UNEP-WCMCの世界保護地域データベース(WDPA)に登録されている保護地域との近接性/重複の可能性が確認できる指標。
Key Biodiversity Areas
(生物多様性重要地域)
生物多様性の保全の鍵となる重要な地域であるKBAとの近接性/重複の可能性が確認できる指標。
Range Rarity(希少な生息域) 付近に希少な絶滅危惧種が生息しているほどスコアが高くなる指標。
Sites of International Interest
(国際的に関心を集めている場所)
ラムサール条約や世界遺産に登録されている場所との近接性/重複の可能性が確認できる指標。
生態系の十全性 Ecosystem Condition
(生態系の状態)
原生的な自然がどの程度残っているか、また哺乳類が保護地域間を移動できる可能性がどの程度残っているかが確認できる指標。
水の物理的リスク Water Scarcity(水不足) 乾燥、水枯渇、ベースライン水ストレス※1、ブルーウォーター※2不足、利用可能な水の残量、干ばつの頻度の確率、干ばつの発生の予測変化という7つの観点から総合的に水不足を確認できる指標。
Water Condition(水の状態) 淡水、海水それぞれにおいて生物化学的酸素要求量(BOD)など水質の指標を複数組み合わせて算出された水の状態指標。

1 利用可能な水資源量に対する人間活動に伴う水需要の比率

2 地上に降った雨水のうち、地表面を流れて河川や土に浸透して地下水になる水のこと

国名 地名 生物多様性の重要性 生態系の
十全性
水の物理的リスク
保護・
保全地域
生物多様性重要地域 希少な
生息域
国際的に関心を集めている場所 生態系の
状態
水不足 水の状態
オーストラリア 西オーストラリア 地点① H H H VL L L H
インドネシア 南スマトラ州南部 地点① H H H VL L L H
インドネシア 南スマトラ州南部 地点② L L L VL H L H
インドネシア 南スマトラ州南部 地点③ H H H VL L L H
インドネシア 南スマトラ州南部 地点④ L L L VL L L H
インドネシア 南スマトラ州南部 地点⑤ VH H L H H L H
インドネシア 南スマトラ州南部 地点⑥ VH H L H H L H
依存・インパクトの特定【Evaluate】

インドネシアの産業植林事業に着目して、実際の事業に沿った依存・インパクトの内容を特定しました。
依存・インパクトの特定にあたっては、MHP社の所有する事業情報や施業方法および現場担当者へのヒアリングを実施し、実際の依存とインパクトの程度を確認しました。その結果、インドネシアにおけるMHP社の産業植林事業に特に関連したマテリアルな自然への依存・インパクトは下記の通りとなりました。
樹木そのものに関連するバイオマスや遺伝資源の供給サービスへの依存や、生育に必要な土質調整、水災や土砂滑りなど自然災害の抑制、生息地の個体数と生息環境の維持など調整・維持サービスに特に依存していることが判明しました。

生態系サービス マテリアルな依存 MHP社に関する情報
供給サービス 淡水供給 育林に使用する水は天水もしくは天水貯水池からの利用であり、対象地内の淡水域への依存は極めて低いため、マテリアルでないと判断。
バイオマス供給 木材資源そのものに依存している。
遺伝資源 ユーカリ類など特定の樹種に依存している。
調整・維持
サービス
固形廃棄物の浄化 事業により生じる有害な固形廃棄物は確認されていないため、マテリアルでないと判断。
土壌と土砂の保持 インフラ安定の基盤のためや産業植林を継続するため、自然由来の土壌の保持機能に依存している。
水質浄化 樹木の生育は降雨に依存しており、水質浄化に依存していないため、マテリアルでないと判断。
大気浄化 事業や外部環境において大気汚染物質の排出は確認されず、大気浄化に関する依存度は低いとして、マテリアルでないと判断。
土質調整 樹木の健康的な生育のため、育林時は、生態系による土壌の維持や栄養循環に依存している。
しかし、苗木生産時と林地への植栽時には化学肥料の施肥を行うことで生態系サービスへの依存度を低減させている。
水流調整 産業植林地や周辺インフラは、雨水流出を抑え洪水を緩和する生態系サービスに依存している。
降雨パターンの調整 樹木の生育に十分な降水量を確保するため、降雨パターンの調整機能に依存している。
地球規模の気候の
調整
産業植林対象木は、その生育に適した気候条件に依存している。
局地的な気候の調整
(微・中規模)
産業植林対象木は、自然由来の安定した湿度の調整サービスに依存している。
洪水緩和 産業植林地のインフラを維持する自然の洪水緩和機能に依存している。
暴風雨の緩和 一定程度依存していると考えられるが、産業植林地の事業継続に影響を与えるほどではないと考え、マテリアルでないと判断。
生息地の個体数と
生息環境の維持
苗木生育環境は野生動物からの食害を保護するために、自然の生息地の生息環境の維持に依存している。
花粉媒介 現在の苗木生産において花粉媒介機能に依存しているが、挿し木などによる苗木生産も可能であるため、マテリアルでないと判断。
生物学的防除 産業植林地の植栽木はユーカリ類であり、植栽木の揮発性物質に防虫効果が認められている。
この事業においては、病虫害に強い特性を持つ母樹から挿し木や接ぎ木を利用した人工増殖を行っているため、自然由来の防除機能には依存していないと判断。
インパクト要因 マテリアルな
インパクト
MHP社に関する情報
気候変動 GHG排出 林業機械や輸送時等からGHGが排出される。また伐採樹木はパルプ用材として使用されるため、下流の製造工程や輸出の過程等でもGHGが排出される。
土地・淡水域・
海洋の利用
土地利用 植林地は元々裸地に造林をしているため、土地利用変化のインパクトはマテリアルでないと判断。
一方で、社会的な関与を土地所有者、NGO、政府部門や政府機関、コミュニティ、利益団体など、様々な利害関係者と連携して実施。
資源利用/回復 水利用 育林に使用する水は天水もしくは天水貯水池からの利用であり、事業を通じて与えるインパクトはマテリアルでないと判断。
汚染/汚染除去 GHG以外の
大気汚染物質
使用している資材に揮発性物質は含まれておらず、事業を通じた大気汚染物質の排出はないため、マテリアルでないと判断。
土壌・水への
汚染物質
汚染物質、栄養塩流失を確認するための水質検査において、国の定める基準値をクリアしていることから、マテリアルでないと判断。
かく乱 自然保護区域でのすべての重機利用は禁止されているため、マテリアルでないと判断。
侵略的外来種 外来種の導入 植林樹木はEucalyptus pellitaであることから風散布などにより外来種が拡散する恐れがある。

当該植林地は裸地を造林していることから改変による生態系へのインパクトはマテリアルではないと判断している一方で、土地の様々な利害関係者とのエンゲージメントは重要であると理解しています。当該地域における社会的な関与は、土地所有者、NGO、政府部門や政府機関、コミュニティ、利益団体など、様々な利害関係者と連携して行われます。事業が許可された境界内には権利を有するコミュニティが数多く存在し、当社の企業の社会的責任チームは定期的にそれらの村を訪問し、調和のとれた関係が維持されていることを確認しています。
また、地域コミュニティとの更なる調和を目的とした取り組みの一つとして、MHP社はPartnershipプログラムと呼ばれる地域協業事業を実施しています。代表的な例として、地域コミュニティからユーカリ種を生育する用地拠出を受け、MHP社が伐採した後に生じる経済的利益を地域コミュニティと分収するというスキームが挙げられます。現時点で既に約1,000ヘクタールの植栽実績があり、今後も順次拡大していく予定です。

リスクと機会の特定【Assess】/今後の取り組み・活動【Prepare】

自然関連リスク・機会の特定にあたっては、産業植林事業の活動を「植林」「伐採(主伐)」の2つに分け、前項で特定した自然への依存・インパクトから起因する各事業のリスク・機会を整理しました。特定したリスクに関してはMHP社の実際の操業内容も鑑みて、リスクが発生した場合の影響度とリスクの発生可能性の2軸から定性的な重要性の評価を行いました。評価の結果、インドネシアの産業植林事業において主要なリスクと判明した項目に対しては、リスク低減のための既存の取り組みと、追加の対応や機会の実現のための営業本部別グリーン戦略への落とし込みを実施しました。主要なリスク・機会と対応策の一覧表は、下記の通りです。
特に「自然災害が発生した場合の樹木やインフラ、従業員の被災」などの急性リスク、「気候変動に伴う木材の生産性低下や植林環境の変化」、「単一樹種のみの植栽による樹木の疫病の蔓延」などの慢性リスクといった、物理的リスクに関連したリスクが重要であると特定されました。MHP社の事業に関連した営業本部別グリーン戦略の一つである「林地残渣や下流のパルプ工場残渣を活用したバイオ炭事業」は、温室効果ガス(GHG)排出の抑制や植林環境の一つである土質調整の維持に寄与する取り組みです。インパクト低減による課題の解決と丸紅グループの更なる価値創造の機会として、今後積極的に推進していくため、営業本部別グリーン戦略を策定し、取り組んでいます。

MHP社に関するフォレストプロダクツ本部(2025年4月よりライフスタイル部門)グリーン戦略(例)

  • 森林価値創造型ビジネス(MHP社事業の経済価値・環境価値最大化、環境植林によるカーボンクレジット組成など)を通じたグリーン事業の推進
  • 持続可能な森林経営/森林保全(森林管理)、森林由来製品の多目的利用(商品別調達方針)
リスク分類 主なリスク内容 関連事業 主な対応策 特に関連する
自然への依存/インパクト
植林 伐採
(主伐)
物理的 急性 大雨や洪水、森林火災など突発的な自然災害の発生による操業の停止・停滞
  • 持続可能な森林経営のための方針(森林経営方針)の策定、遵守

【グリーン戦略】

  • 林地残渣や下流のパルプ工場残渣を活用したバイオ炭事業の推進
【依存】土壌と土砂の保持、水流調整、降雨パターンの調整、地球規模の気候の調整、局地的な気候の調整(微・中規模)、洪水緩和、生息地の個体数と生息環境の維持
自然災害による苗木へのダメージ、苗木の生育施設や林道などのインフラ設備の毀損、従業員や現地スタッフへの人的被害
自然災害による林道などのインフラ設備の毀損、従業員や現地スタッフへの人的被害
慢性 気候変動に伴う気温上昇、降水量の減少、干ばつの長期化による木材の生産性の低下/収穫材積の減少 【依存】遺伝資源、土質調整、降雨パターンの調整、地球規模の気候の調整、局地的な気候の調整(微・中規模)、生息地の個体数と生息環境の維持
植林環境の変化による植栽樹種の変更(その環境での生育に適した樹種の導入)
暑熱による労働生産性の低下
単一樹種のみの植栽による樹木の疫病の蔓延、野生動物の食害 【依存】生息地の個体数と生息環境の維持
移行 市場評判 産業植林に対するネガティブイメージの拡大による顧客の選好性の低下
  • 森林経営方針の策定、遵守
  • インドネシアの森林認証制度であるIndonesian Forestry Certification Cooperationの取得
【インパクト】GHG排出、外来種の導入
評判
損害賠償
外来種導入などに伴う自然資本の毀損に対する罰金や損害賠償 【インパクト】外来種の導入
機会分類 主な機会内容
ビジネス 製品サービス 植林~伐採(主伐)のサイクルが短く、CO2吸収量が多い成長期の樹木を植えている期間が長い(一般的に樹木は成長期の方が老木よりも炭素吸収量が多い)
市場 環境に優しい製品への嗜好による認証製品に対する需要の増加
市場/評判 自然環境に配慮した操業による顧客の選好性や評判、ブランド価値の向上
財務インセンティブ 自然環境に配慮した操業による投資家の選好性の向上、資金調達の拡大、自然関連グリーンファンドへのアクセス
サステナビリティ 生態系の保護・回復・再生 コンセッションエリアを持つことによる、その土地の第三者による開発の抑制

シナリオ分析

森林事業については、気候変動に起因する中期の財務的影響および対応方針・取り組みについて、シナリオ分析を実施しました。詳細についてはTCFD開示(シナリオ分析結果 森林事業)を参照ください。

財務的影響【現在】【短期】

現在(2024年3月期)および短期(~3年間)において、気候関連のリスク(キャッシュ・フロー、ファイナンスへのアクセスまたは資本コストに影響を与えると合理的に見込み得るリスク)が、丸紅グループに与える財務的影響(財政状態、財務業績、キャッシュ・フローへの影響)についてはTCFD開示(財務的影響【現在】【短期】)をご参照ください。気候関連以外の自然関連のリスクが、現在および短期の時間軸において丸紅グループに与える財務的影響は、今回実施したTNFDの「LEAPアプローチ」の分析結果からは、限定的です。

リスクとインパクトの管理

丸紅グループは、気候変動、自然資本およびサプライチェーンマネジメントをはじめとする、サステナビリティの観点で重要度の高いリスクおよび機会について、サステナビリティ推進委員会で管理・モニタリングを行っています。
ビジネスのサステナビリティ面における潜在的なリスク評価として、環境、安全衛生、社会の3カテゴリ、27項目の多角的観点から分析・検討を行う仕組みを構築し、それぞれの評価項目における潜在リスクの重要度と影響度を判断しています。このリスク評価手法を用いて、グループ内やサプライヤーのサステナビリティ調査を実施しています。投融資決定プロセスにおいても、このリスク評価手法を用いて、既存事業のモニタリングを含め、グループの事業をサステナビリティの観点より継続的に評価する体制を構築しています。

事業におけるサステナビリティに関わるリスク評価項目(3カテゴリ27項目)

環境 気候変動/環境汚染/生物多様性/資源管理/対策・管理手順(環境)
安全衛生 機械安全/火災・爆発/有害物質との接触/感染/危険性のある作業/対策・管理手順(安全衛生)
社会 強制労働・人身取引/児童労働/労働時間/賃金・雇用契約/差別/ハラスメント・懲罰/多様性の尊重/結社の自由および団体交渉権/土地の問題/地域コミュニティへの負の社会的影響/先住民・文化遺産/紛争鉱物/プライバシー/アニマルウェルフェア(動物福祉)/責任あるマーケティング/対策・管理手順(社会)

例えば、自然への影響の中でもとりわけ重要度の高い気候変動の影響に関しては、IEA等の様々なシナリオ分析を参照し、リスクが高いと判断される場合には、想定されるGHG排出量の削減計画、案件実施国における脱炭素計画、気候変動長期ビジョンとの整合性等を考慮し、気候関連のリスクおよび機会、事業の優先度等を踏まえたうえで、投融資の意思決定に活かしています。
また、気候変動の影響等の自然関連リスクを含む、サステナビリティの観点からリスクが高いと考えられる事業案件については、必要に応じ、投融資委員会・経営会議・取締役会で審議しています。これらのリスク管理体制については、毎年実施している内部統制の基本方針の見直しの中で、前期の運用状況が取締役会に報告され、有効性を確認しています。

多岐にわたる業種および地域における事業のリスクを俯瞰的に捉え、規律をもって管理するため、個別リスクへの対応に加えて、丸紅グループ全般を見渡す「統合リスク管理」を行っており、この仕組みには「市場リスク」、「法規制リスク」、「環境・社会リスク」、「自然災害などのリスク」などが統合されています。統合リスク管理では、丸紅グループが抱える連結ベースのエクスポージャーに対して、各項目のリスク特性に応じた「想定最大損失率」を乗じて最大下落リスク額(リスクアセット)を計量し、自らの体力である資本の範囲内に収めることをリスクマネジメントの基本方針としており、2024年3月末時点での当社のリスクアセットは株主資本の範囲内に収まっています。
丸紅グループでは、グループ全体としてリスクに対するリターンの最大化を図るべく、個別の投融資案件の精査・厳選を行うとともに、RORA(リスクアセット利益率/Return on Risk Asset)を用いたリスクリターンのモニタリングを通じて、資産の毀損リスクに対する収益力強化を推進し、ROEの維持・向上と株主資本コストの低減を追求しています。
主なリスク項目:詳細は統合報告書2024(P59)[36.4MB]をご参照ください。

加えて、自然関連の「物理的リスク」については、丸紅グループでは、個々の対策が最適かを評価し、あらゆる危機に関して対応する体制の構築に継続して取り組んでいます。2022年4月、それまでの個別の危機事象をベースにしたBCP(Business Continuity Plan)を改定し、自然災害などを含む、オールハザード型の丸紅グループBCPを導入しています。BCPを有効に機能させ、BCM(Business Continuity Management)体制を構築・推進するため、本社総務部内に専任組織を設け、人員・システム・オフィス(建物)・決済機能およびグループ会社経営に関わる重要リソースに対する罹災が生じた場合には人命の安全を最優先に速やかに対応できる体制を構築しています。

測定指標とターゲット

自然への依存・インパクトに関する指標を下記の通り設定しました。

自然関連の依存とインパクトに関するグローバル中核開示指標と測定結果

測定指標番号
自然の変化の要因 気候変動
指標 GHG排出量
測定指標 気候変動対策への貢献(TCFD提言に基づく情報開示)をご参照ください。
実績 気候関連の指標および目標をご参照ください。
C1.1 自然の変化の要因 陸/淡水/海洋利用の変化
指標 陸/淡水/海洋の利用変化の範囲
測定指標
  • 陸域利用の範囲(km2
    –事業
    –バリューチェーン
    –分析レベル
    –該当する施設・所在地のバイオーム
実績 陸域利用の範囲:

1)LEAP分析を実施した産業植林事業における陸域利用の状況(裸地から植林地への改変)

事業 バリュー
チェーン
土地利用
面積(km2
分析
レベル
該当する施設・所在地のバイオーム
植林 インドネシア 1,100.00 ポイント 熱帯・亜熱帯林、集約的土地利用システム、人工地中淡水、人工湿地、外洋、人工海洋システム、海岸線システム、人工海岸

2)その他、当社グループの事業における主要な陸域利用の状況

事業 バリュー
チェーン
土地利用
面積(km2
分析
レベル
該当する施設・所在地のバイオーム
太陽光
発電
IPP(Independent Power Producer) 9.72 砂漠と半砂漠、集約的土地利用システム、地下洞窟と岩石システム、地下淡水、植生湿地、河川、湖、沿岸の入江と湾、海洋大陸棚、海岸線システム、海上植生、人工海岸、汽水潮汐システム
4.00 熱帯・亜熱帯林、温帯北方林と森林地帯、灌木地と低木林、砂漠と半砂漠、集約的土地利用システム、人工地中淡水、湖、海洋大陸棚、外洋、海岸線システム
5.16 温帯北方林と森林地帯、灌木地と低木林、サバンナと草原、砂漠と半砂漠、極地/高山帯、集約的土地利用システム、人工地中淡水、湖、海洋大陸棚、外洋、深海底、人工海洋システム、海岸線システム、海上植生、人工海岸、汽水潮汐システム
8.00 サバンナと草原、砂漠と半砂漠、集約的土地利用システム、人工地中淡水、湖
畜産 肥育(牧場等) 46.10 熱帯・亜熱帯林、温帯北方林と森林地帯、灌木地と低木林、サバンナと草原、砂漠と半砂漠、極地/高山帯、集約的土地利用システム、地下洞窟と岩石システム、人工地下空間、地下淡水、人工地中淡水、植生湿地、湖、人工湿地、沿岸の入江と湾、海洋大陸棚、外洋、人工海洋システム、海岸線システム、海上植生、人工海岸、汽水潮汐システム
一次加工(と殺場・加工場等) 1.47 ポイント サバンナと草原、集約的土地利用システム、人工地中淡水、湖、人工湿地
合計 74.45

 IUCN Global Ecosystem Typologyで割り当てられているバイオームを引用。
データソース: KEITH, David A., et al. A function-based typology for Earth’s ecosystems. Nature, 2022, 610.7932 : 513-518.

C2.1 自然の変化の要因 汚染/汚染除去
指標 廃水排出
測定指標
  • 合計排水量
    –海洋
    –地表水
    –地下・井戸
    –オフサイトでの水処理
    –その他
実績 環境データ 水マネジメント 排水量をご参照ください。
C2.2 自然の変化の要因 汚染/汚染除去
指標 廃棄物の発生と処理
測定指標
  • 廃棄物発生量
  • リサイクル量

 集計対象:単体および連結子会社

実績 環境データ 環境マネジメント 廃棄物発生量をご参照ください。
C2.4 自然の変化の要因 汚染/汚染除去
指標 温室効果ガス(GHG)以外の大気汚染物質総量
測定指標
  • 窒素酸化物(NOx)
  • 揮発性有機化合物(VOC)
  • 硫黄酸化物(SOx)
実績 環境データ 環境マネジメント NOx、SOx、VOC排出量をご参照ください。
C3.0 自然の変化の要因 資源使用/資源補充
指標 水不足の地域からの取水量と消費量
測定指標
  • 取水量
    –水資源別取水量内訳
  • 水ストレス地域からの取水量
実績 環境データ 水マネジメント 取水量および水ストレス地域からの取水状況をご参照ください。
丸紅グループは、上下水道事業等を通じ、都市近代水道の普及による水利用の効率化にも貢献しています。

給水人口(万人)

水ストレスレベル 造水/浄水 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
造水 886 886 1,111 1,111
浄水 1,307 1,312 1,299 1,328
130 130 130 130
合計 2,323 2,328 2,540 2,569

 水ストレス:利用可能な水資源量に対して、人間活動による水需要が過度に高い状態。主な原因として、人口増加、都市化、気候変動、農業や工業での過剰な水使用などが挙げられる。

取り組み

生物多様性と生息環境の保全

水禽類生息数調査 / Asian Waterbird Census
  • パグビラオ発電所内外のモニタリング地点で撮影されたAnas luzonica(アカノドカルガモ)、Lonchura oryzivora(ブンチョウ)。

丸紅が50%株主としてフィリピンで発電事業を行うTeaM Energy Corporation (TeaM) のCSR活動を目的に設立されたTeaM Energy Foundation, Inc. (TEFI)は、Wild Bird Club of the Philippines (WBCP)および環境天然資源省と協力して、国際NGO “国際湿地保全連合(Wetlands International)”が実施するアジアの水禽類生息数調査“Asian Waterbird Census (AWC)”に2010年より毎年継続して参加しており、パグビラオ、スアル発電所および近隣10kmの範囲で水禽類に関するデータ収集を行っています。当該調査により発電所の近隣への環境負荷が低く、健全な環境が保持されていることを確認しています。
パグビラオ、スアル両発電所は、国際自然保護連合 (International Union for Conservation of Nature) が発表する「絶滅のおそれのある種のレッドリスト(2014年)」でVulnerable=危急種に指定されているフィリピン固有種のアカノドカルガモ(Anas luzonica)の聖域であり、発電所の敷地は渡り鳥を含む多くの鳥たちの休息の場となっています。
TEFIは騒音抑制、開発の抑制、開発の際の生息環境移転作業によりこれらの鳥たちの生息環境を保護する活動も実施しています。
2020年から2022年にかけての新型コロナウイルスによるパンデミック期間中、TEFIはWBCPとのバードウォッチング活動を中止しましたが、スアル発電所とパグビラオ発電所では、別途、外部機関によるモニタリング調査を行っています。

2021年にスアル発電所で行われた調査では、56種34科の合計1,056羽の鳥類が記録され、内3種類の絶滅危惧鳥類が記録されました。
3種類の絶滅危惧鳥類とは、Lonchura oryzivora(ブンチョウ)、Streptopelia bitorquata(オオベニバト)、Anas luzonica(アカノドカルガモ)です。
アカノドカルガモは、第1回半期報告で260羽、第2回半期報告で60羽が記録され、この地域の人工潟湖を利用しているとされています。
追加種はなく、記録された鳥類は全体で129種にとどまりますが、Motacilla cinerea(キセキレイ)とOrthotomus derbianus(ルソンサイホウチョウ)の再来が確認されており、前者は2011年、後者は2015年に観察されたのが最後となっています。

2021年にパグビラオ発電所で行われた調査では、9種の鳥たちが繁殖しているとされています。
18種のうち9種は、非森林から森林への生息環境に関連しており、絶滅危惧種はアカノドカルガモの1種のみが記録され、16種はIUCNの低危険種に分類されます。

パグビラオ発電所以外にも、3つの地点でモニタリングが行われています。
1)ビナハン流域森林保護区、2)ビナハンマングローブ林、3)ダンラガンマングローブ林の3カ所です。
これらの4地点において、39種584羽の鳥類が記録されました。

植林プログラム
植林地域

TEFIは2001年よりパグビラオ発電所およびスアル発電所にて発電所周辺の地域コミュニティやSioasio East Forest Developers Association等NGOと共同でアカシアやユーカリ等の植林活動を行っており、Sioasioで植林された苗木の平均生存率は96.5%を誇ります(2023年3月時点)。2001年よりこれまでにスアルでは約100ヘクタール、パグビラオでは約328ヘクタールを植林・維持しており、TEFIは今後もこのような植林・維持活動を継続して行います。

2021年、パグビラオ発電所では、従業員ボランティアがアゴホ、ナラ、タリサイの苗木を植え、発電所敷地内の4,806㎡内に合計300本の自生木を植樹しました。

一方、TeaM Sual Corporationは、過去5年間、毎年マングローブの植樹とメンテナンスを通じて、スアルのバランガイ・バキウーンの海岸を修復しています。
2021年には、スアル発電所の従業員ボランティアが、バキウーンのバランガイ政府ユニットの代表者と共に、スアルのバランガイ・バキウーンの海岸沿いに3,000本のマングローブの苗木を植樹しました。
2022年には、従業員ボランティア、同政府ユニットの代表者、地元の学校、請負業者とともに、同地区に2,000本のマングローブの苗を植樹しました。
2022年、TEFIは外部パートナーおよび地元コミュニティのメンバーとともに、パンガシナン州ボリナオ町のサンチャゴ島にあるバランガイ・ビクトリアとパイラーにマングローブの増殖材21,000本を植えました。
この活動はTEFIのプロジェクトCATCH ME(海岸の生息地とマングローブ生態系を変える地域連合)のもとで行われたものです。

丸紅は、2024年から2025年にかけて両発電所の所有権が国営電力公社へ移転されるまでの間、TEFIが保全・植林を行ってきた区域および活動対象区域計約144,000ヘクタールの自然林の保護・維持を引き続き支援し、今後も生物多様性を守り森林保全を促進していくことを目標として活動していく予定です。

生物多様性への悪影響の低減と回復を目指す植樹活動

丸紅グループがフィリピン国マニラ首都圏で上下水道事業を行うMaynilad Water Services, Inc.(Maynilad社)は、土地保全(種の保存を含む)や人口増加による悪影響の軽減および回復を目的に、沿岸部に21.9万本以上のマングローブの植樹を行いました。この活動により、一部の地域では漁師が雇用され、更なる収入機会がもたらされています。また、同国の政府機関(環境天然資源省や地方自治体等)、企業およびボランティアの協力を得て、責任ある水の消費と適切な排水管理について啓蒙するイベントも開催しています。Maynilad社は、ステークホルダーとともに、植樹活動を通じて地域社会に投資し、生態系の保全、洪水の防止、高品質な水の供給および持続可能な水ビジネスの運営に取り組んでいきます。

生物多様性の損失を軽減するためのエンゲージメント

森林保全活動と先住民族への生計手段の提供
  • 森林保全活動の様子
  • 地域住民との交流の様子
  • 生産された商品/蜂蜜

TEFIは2010年より、環境天然資源省、地域住民、国際的・現地NGOと協力のもと、ケソン州General NakarにてCommunity Carbon Poolsプログラム(C2P2)を実施しています。

TEFIではトレーニングの実施、太陽光エネルギーにて稼働する蜂蜜製造施設への資金供与をしており、General Nakarのコミュニティで蜂蜜等の食品に加え、樹脂、食品等非材木製品等がつくられており、染物や茶葉の収穫もしています。
34コミュニティ、2,000人以上の地域住民を対象に生計手段の提供・生計の改善をすることで、約144,000ヘクタールの森林保全・森林破壊防止に協力しており、森林破壊による温室効果ガス排出の削減、森林の持続的保全、森林による炭素貯蔵の促進に寄与しています。

西オーストラリア州政府とのエンゲージメントを通じた持続可能な森林経営・生物多様性の保全への貢献

丸紅が100%出資するオーストラリアの植林・木材チップ事業会社WA Plantation Resources Pty., Ltd. (以下、WAPRES社)は、現地政府とのエンゲージメントを通じて、Environment Protection and Biodiversity Conservation Act 1999 (as amended) を含む現地法令等の遵守を行うことで、国際的な森林認証を取得しています。

丸紅グループの森林経営と森林認証について詳細はこちら

WAPRES社は、持続可能な森林経営を行うことが生物多様性の保全に貢献するものと考えており、このような事業活動を継続していきます。

チリでの造水・送水事業を通じた生物多様性の保全への貢献

当社は、チリ・国営銅公社(Corporación Nacional del Cobre de Chile)向け造水・送水事業(以下、本プロジェクト)の参画にあたり、本プロジェクトに伴う生物多様性への影響を事業参画前に特定し、ネガティブインパクトの回避と削減策を講じています。

チリ共和国・国営銅公社向け造水・送水事業の長期売水契約に関する融資契約締結ならびに着工について詳細はこちら

デューデリジェンスの実施

本プロジェクトの建設予定地の一部は、絶滅危惧種に特定されているサボテンの一種(Eriosyce Laui、以下、ELサボテン)の重点保全地区に該当しています。そのため、種の保全対策を目的に、事業参画前に外部専門家を起用し、重点保全地区内の建設予定サイトにおける当該種の生息の有無、生息状況に関するデューデリジェンスを実施しました。その結果、建設予定地でのELサボテンの生息がないことを確認しました。

生物多様性行動計画(BAP)、生物多様性管理計画(BMP)の策定

本プロジェクトでは、特に保全上重要な場・種・機能をもつエリアを特定して生物多様性に関する行動計画(BAP: Biodiversity Action Plan)を策定しています。該当エリアについては、有識者による詳細調査を実施し、その結果を生物多様性管理計画(BMP: Biodiversity Management Plan)に反映し、継続してモニタリング(監査)することで生物多様性の保全に取り組んでいます。

サーモンの閉鎖循環式陸上養殖業への参入

世界の水産需要増加への対応

新興国を中心とした食生活の質向上や、先進国におけるヘルシー志向の高まりにより、世界の水産需要は年々増加しています。一方で、天然漁獲量はこの30年間ほぼ横ばいで推移しており、養殖漁業の重要性が高まっています。その中でも海面養殖に適した沿岸地域が限られるサーモンの養殖は、養殖地域に地理的制限を受けない閉鎖循環式陸上養殖(Recirculated Aquaculture System:以下「RAS」※2)の拡大が特に期待されています。

2 閉鎖循環式陸上養殖(RAS)とは、閉鎖された陸上設備内で、使用された水を濾過して90%以上を再循環させる養殖。設備の中で水温および水質等をコントロールするために外的要因を受けにくい。

2020年4月、当社はNippon Suisan (Europe) B.V.と共同で、RAS事業において世界トップレベルの生産実績を有するDanish Salmon A/S(以下DS社)の株式を取得いたしました。同事業分野での製造ノウハウ・技術を確立した数少ない企業の1社であるDS社を通じて、世界の水産需要増加に対応していきます。

サステナビリティへの貢献

RASは閉鎖した設備内で水を循環して使用するため、水質汚染や養殖魚の流出といった周辺環境や生態系への影響が小さく、管理体制を確立し履歴に残すことが可能なことから、トレーサビリティーにも対応した養殖手法です。また、将来的な人口増加に伴うタンパク質の供給不足解消の有効手段としても有望視されています。
当社は、拡大する世界の水産物需要に応えるのみならず、環境に配慮した水産物を安定供給することで、社会課題解決に貢献していきます。

  • RAS養殖の仕組み
    RAS養殖の仕組み
  • サーモン

RSPO/ISCC認証品の取り扱いについて

パーム油の取り扱いに関しては、丸紅の事業会社であるPasternak, Baum & Co., Inc.社にてRSPO/ISCC/RFA認証品あわせて全取り扱いの約3割程度の取り扱いがあります。環境・社会に配慮したお客様の要請に応じて普及の一端を担っています。

イニシアティブへの参加

TNFD Adopter声明への賛同について

TNFD Adopter声明

丸紅は、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)による以下の「TNFD Adopter」※3声明に賛同します。「TNFD最終提言」(2023年9月公表)に基づく開示に向けて取り組んでいきます。

3 TNFD提言に沿った情報開示を行う意思をTNFDのウェブサイト上で登録した企業・組織。

声明:

Our organization intends to publish its first TNFD-aligned disclosures alongside financial statements as part of the same reporting package for our financial year 2025 outcomes.

TNFDのウェブサイトはこちら

賛同を表明した企業の一覧はこちら

自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラムへの参画

TNFDフォーラムは、自然資本および生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的な組織である自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures※4)のビジョンとミッションを共有し、サポートする組織です。丸紅は、2022年3月に、TNFDフォーラムに参画しました。
当社はTNFDフォーラムへの参画を通じ、上述の枠組み構築に関する議論をサポートすることにより、気候変動と並ぶ世界の喫緊の課題である生物多様性保全に一層貢献していきます。

4 TNFDは、2021年6月に設立された、民間企業や金融機関が、自然資本および生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的な組織です。2019年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で着想され、資金の流れをネイチャーポジティブに移行させるという観点で、自然関連リスクに関する情報開示枠組みを構築することを目指しています。

TNFDフォーラムのウェブサイトはこちら

ネイチャーポジティブ宣言への賛同

丸紅は、2030生物多様性枠組実現日本会議(J-GBF、会長:経団連会長、事務局:環境省)の「ネイチャーポジティブ宣言」に賛同し、政府・関係省庁ならびに業界団体等とも連携しながら、生物多様性国家戦略の取組方針に則り、ネイチャーポジティブの実現に向けて取り組んでいます。

J-GBF 「ネイチャーポジティブ宣言」のウェブサイトはこちら

経団連生物多様性宣言・行動指針

当社は、経団連(一般社団法人日本経済団体連合会)および経団連自然保護協議会が2018年10月に改訂した「経団連生物多様性宣言・行動指針」への賛同を2020年1月に表明しました。

経団連生物多様性宣言・行動指針(改定版)の詳細はこちら

マリン・エコラベル・ジャパン協議会

丸紅は水産資源の持続的利用、環境や生態系の保全に配慮した漁業・養殖・加工・流通を推進しているマリン・エコラベル・ジャパン協議会の正会員です。
丸紅は今後も環境や生態系に配慮した持続的な水産資源利用に向け、自社およびサプライチェーンにおける取り組みを継続していきます。

マリン・エコラベル・ジャパン協議会(MEL)のウェブサイトはこちら

丸紅株式会社