エンゲージメントとは「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献し合う関係」であると考え、組織マネジメントや諸制度の改善を促し、社員が活き活きと働く環境をつくるために、エンゲージメントスコアを測定しています。2023年7月に実施した調査の結果は約97%の回答率で、スコアが他社平均50.0に対し、当社は62.4となり、働く環境の充実とあわせて、社員のやりがい、モチベーションの向上に繋がっていると考えています。なお、こうした取り組みにより、株式会社リンクアンドモチベーションが2023年に従業員エンゲージメント調査を実施した企業の中から、「エンゲージメントスコア」の高い10社を表彰する「ベストモチベーションカンパニーアワード2024」大手企業部門(2,000名以上)において、丸紅は第2位を受賞しました。サーベイ結果から抽出された当社の強みを引き続き強化するとともに、課題については、各種施策の中で改善に向けた取り組みを行っています。
方針
GC2024グループ人財戦略
丸紅人財エコシステム
人財は当社グループの最大の資本であり、価値創造の原動力です。中期経営戦略GC2024では、その強化に向けてこれまでGC2021で掲げてきた「丸紅人財エコシステム」を更に進化させていきます。「丸紅人財エコシステム」は、当社の在り姿であるGlobal crossvalue platformを実現していく上で人財戦略の基本となる概念であり、変革の方向性を示すものです。
多様なバックグラウンドを持つマーケットバリューの高い人財が丸紅グループに集い、活き活きと活動し、会社・組織を越えて行き交い・繋がり、多様な価値観や知を掛け合わせることで、新たな価値創造にチャレンジし続ける、そうした魅力溢れるエコシステムを創っていきます。
「丸紅人財エコシステム」の考え方の起点となるのは、経営戦略と人財戦略の連動です。社長、CHRO、CSO、CAOを主要メンバーとする人財戦略会議「タレントマネジメントコミッティ」では、経営戦略に沿った人財戦略の実現を目指し、具体的には人財配置、リーダー開発、エンゲージメント、ダイバーシティ、人事制度改革レビューなどの重要アジェンダを継続的に議論し、経営主導で必要な変革をスピード感をもって推進しています。また、2024年3月期より、経営戦略に資する人財戦略を策定・推進することを役割としてCHROを新設しました。2025年3月期からは、グループ人財戦略の推進をより一層強化することを目的に、CHROを社長直轄としました。CHROは、社長を補佐し、人財戦略に関する経営全般に参画しています。そのほか、経営層と社員が直接つながる対話の機会や、社員の企業価値向上への一体感を高めるため特別奨励金を支給している従業員持株会制度(2024年3月末加入率94.5%)など、各種取り組みで経営との連動を強化しています。
丸紅人財エコシステムの進化
ミッションを核とする人事制度
当社では、各組織が個人の実力や特性に応じてミッション(期待役割及び定量・定性目標)を付与し、社員一人ひとりがより大きなミッションに果敢にチャレンジすることで、組織の戦略実行力の向上と人財の成長を促しています。この制度を支える仕組みとして、ミッションの大きさと報酬水準を一致させることで、実力に見合うミッションの付与を推進するとともに、客観性が高く、より時価的な処遇を実現する「ミッションレーティング」を導入しています。従来管理職のみに適用していた仕組みですが、2025年3月期からは非管理職にも適用範囲を拡大し、更に、求められる業務やキャリアパスが異なっていた総合職・一般職という職掌区分を廃止する「職掌制度の改定」を実施しました。これにより、実力本位の適材適所、より大きなミッションへの挑戦、キャリア・オーナーシップが一層促進され、社員一人ひとりがフルに活躍し、人財と会社がともに成長することを目指しています。
- “ミッションは「組織の戦略実行」と「人財の成長」の根幹”
-
- 長期的な企業価値向上の追求は、各組織における戦略実行によって実現する
- 実力や特性に応じたミッションを付与しそれぞれの人財の貢献を大きくすることが、組織の戦略実行力を高める
- 戦略実行に資する、より大きなミッションへ挙(こぞ)って果敢にチャレンジし、切磋琢磨することが、人財の成長を促し、マーケットバリューを高める※1
1 社員一人ひとりがストレッチされた役割や目標に挑戦できるよう、本人・上長が互いに能動的なコミュニケーションを取った上でミッションを設定、期末の評価・本人へのフィードバックを実施、その内容も踏まえ次年度のミッションを設定、これら一連のサイクルを通じて、社員の能力開発やキャリア開発に繋げています。
人財開発に関する基本方針
企業価値の源泉となるグループ人財の成長・活躍を促進すべく、On the Job TrainingとOff the Job Trainingの両輪で、人財の開発を推進しています。
On the Job Trainingでは、タレントアセスメントにより可視化されたデータを活用したミッション付与・異動計画による最適配置の推進、若手層の海外早期派遣の推奨や現場経験の促進などのアサインメント施策を実施しています。
Off the Job Trainingでは、階層別・公募型研修のほか、国内外ビジネス・スクールとタイアップするセレクションプログラムなどを整備するとともに、各組織の人財戦略に基づいた組織別研修や国内外グループ社員を対象としたグループワークショップなど、個々のキャリアに合わせた成長機会を提供しています。
人財開発体系図
拡大する
取り組み
On the Job Training
タレントアセスメント
多面観察や自己診断を通じて、一人ひとりの行動の特徴や強み、課題等を可視化します。2024年3月期は全社員の約59.1%に対して実施し、今後も対象を一層拡大していく予定です。可視化された情報は、各組織が異動・配置、ミッション付与や日々のチームマネジメントへ活用するとともに、各個人が、自身を振り返る気づきの機会、今後の能力開発やキャリアプランの検討へ活用しています。
Off the Job Training
次世代経営者育成プログラム「Marubeni Executive LEAD Program」
「丸紅グループをリードする、次世代経営層の育成へ」をコンセプトに、スイスの経営大学院・IMDによる当社専用カスタマイズドセッションを通じて、世界最先端の経営論及びリーダーシップを学ぶ選抜型のプログラムです。
社内MBAプログラム「丸紅マスターコース」
国内ビジネス・スクールの教授を招聘し、経営戦略、会計、財務、組織マネジメント、マーケティング等、事業経営に必須となる知識を講義、ケーススタディ、ディスカッション等を通じて修得するプログラムで、部署・年代を問わず多様な社員が受講しています。
外部オンライン学習プログラム
多様な学習コンテンツを「いつでもどこでもタイムリーかつ効率的に学べる」外部オンライン学習プログラムを導入しています。個々人の成長に向けて、幅広い知識・スキルの習得を一層促進していきます。
自主学習支援
従業員の能力開発や業務では得られない知識・経験の習得を支援することで、意欲ある社員の自律性を更に高めています。中小企業診断士や公認会計士などの資格獲得支援は年間210件程度、ビジネスナレッジに関わる学習サービス支援は延べ2,000人の利用実績があります。
デジタル人財育成(デジタル人財認定制度・デジタル人財の有効活用に向けた施策)
丸紅グループのDXを推進する人財強化を目的として、様々な研修プログラムや講習会を実施しています。
こうした取り組みを通じて、デジタルスキルを現場レベルで活用できる「デジタル人財」の認定者が、2024年6月末時点で650名超(昨年比で約3050名増加)となりました。またデジタル関連の基礎知識を全社で習得すべく、2024年から昇格要件にITパスポート取得が加わりました。
2023年に丸紅社内デジタル人財公表サイトを開設し、社内のデジタル人財と保有スキルが可視化されることにより、必要な時に必要な人に声をかけられる状態となりました。実際に社内研修を通じてスキルを会得した人財が、他部署のプロジェクトに参画するという事例も出始めています。
「既存の枠組みを超える」施策
常に変化する社会・顧客のニーズを掴み、時代に見合ったソリューションつまりは新たな商流を創造するための働き方を推進するため、2019年3月期より、「人財」・「仕掛け」・「時間」の観点から、様々な施策に取り組んでいます。
「人財」
これからの丸紅を担う人財には、一つの商品分野のプロであるだけではなく、商品軸を超えて、社会や顧客の課題を多面的に把握する力と、丸紅グループが有する様々なビジネス基盤、いわばプラットフォームを最大限に活用して、そのソリューションを想像する発想力が必要です。そこで、「人財」の観点より以下の施策に取り組んでいます。
・丸紅アカデミア
これからの丸紅グループを牽引するグローバル・イノベーション・リーダーを養成することを目的とし、グローバルで活躍する多様な人財を選抜し、1年をかけて様々なテーマで議論を深めるプログラムです。
・丸紅デジタルチャレンジ
データサイエンスの領域においては、2021年3月期より丸紅デジタルチャレンジを展開しています。これは、理論よりも実践に重きを置き、自ら手を動かしてデータサイエンス力を会得するプログラムで、当社が実ビジネス・実業務で直面する課題を全社から公募し、参加者がこれをプログラミングなどのデジタル技術の活用で解決するものです。
・社外人財交流プログラム
丸紅の将来の経営幹部候補社員を対象に、各業界のトップ企業へ数年間派遣し、実践の中で成果を追求するプログラムです。社外におけるネットワークを構築するだけでなく、丸紅グループを外から見ることで今まで提供できていなかった価値・機能を発見し、新たな事業展開に結びつけることができる人財の育成を促進します。
・クロスケット(クロスバリュー助っ人システム)
社内組織がパートタイムでの協力・参画を求めて助っ人を全社で公募し、協力・参画を希望する社員が応募して、組織を越えた協働を図る仕組みです。
・トライアングルメンター
所属部署・世代の異なる3者でトリオをつくり、定期的に双方向のコミュニケーションを取ることで、組織や世代を超えた繋がりの形成、経験の共有、異なる価値観・考え方への相互理解、新入社員の土台づくりを促進します。
・服装の新ガイドライン“Self-Biz”
自分で考え行動する文化を醸成する取り組みとして、フォーマル⇔カジュアルといった区分を廃し、最低限守られるべきガイドラインを示した上で、社員一人ひとりが最適と思う服装を選択する“Self-Biz”を導入しています。
「仕掛け」
商品縦割りの組織を超えてイノベーション創出を促進する仕掛けとして、以下を実施しています。
・ビジネスモデルキャンバス(BMC)
BMCサイトを設け、丸紅グループが持つ資産やビジネスモデルを見える化し、全社員と共有しています。新たなビジネスの創造する一助となるべく、サイト機能拡充を図るとともに、ビジネスの現場でBMCのフレームワークを活用できる施策を平行して推進します。
・アイディアボックス
新たなビジネスアイディア、自身が挑戦したい課題や業務改善に繋がる案等、全グループ社員が投稿できる窓口として開設しています。
・ビジネスプランコンテスト
丸紅グループグローバルの公募型ビジネス提案プロジェクトです。開始から7年目となり、インドネシアにおけるデジタル母子手帳事業など、当コンテストで提案され事業化した案件の中には、事業として評価され発展するものも出てきました。今後も新規事業の創出とイノベーション風土醸成を促す場として重要な役割を果たしていきます。
・M-Alumni(まるムナイ)
退職者が登録するアルムナイネットワークを立ち上げ、専用 SNS の中で会社と退職者、及び退職者同士が繋がる場(オフラインの交流会含む)をつくっています。退職者とのビジネス協業やオープンイノベーション等を期待するものです。
・クロスバリューコイン
組織を越える協力・連携の促進を目的として、他組織や地域戦略に対する情報提供から事業創出まで様々な粒度の貢献に報酬で報いる仕組みです。
「時間」
いくら「人財」と「仕掛け」が揃っていても、そのための時間がなければ新しいことには取り組めません。そこで、以下の取り組みを実施しています。
・15%ルール
社員一人ひとりが、丸紅グループのネットワーク、ビジネスモデル、ノウハウ、人財などを活用し、社会・顧客に対し、新しいソリューションを探求、発案しやすい環境をつくるため、社員個人の意思によって就業時間の最大15%を目安として、丸紅グループの価値向上につながるような事業の創出に向けた活動にあてることができるようにしました。
・どこでもワーク
在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務など、勤務場所の選択肢を増やし、時間をより有効活用することで、社員個人がアウトプットの質・スピード・量を従来以上に充実させ、ひいては組織としてのパフォーマンスを高めることを目的とした、「どこでもワーク」を導入しています。
社員とのコミュニケーション
社員交流会
経営層と社員や社員同士のコミュニケーションを促進し、一体感の醸成に資することを目的として、社員交流会を定期的に実施しています。2024年3月期までに延べ2,800名以上の社員が参加しています。
今後も経営層と社員のダイレクトな対話の場や社員同士の交流の場を継続的に設けることにより、社内コミュニケーションの活性化・深化を図っていきます。
エンゲージメントサーベイ
労働組合とのかかわり
丸紅従業員組合は1949年に発足しました。2024年3月末現在、組合員は2,735名、組織率は約63%となっています。会社と丸紅従業員組合は、会社の繁栄と従業員の社会的・経済的地位の向上を共通目的として、それぞれの立場を尊重し、誠実な話し合いを通じて、秩序ある労使関係を築いています。2024年3月期は、経営との経営組合懇談会や、各種団交※2・委員会等を年間10回開催しました。また、働く環境に関する制度や施策の導入、その運用において、丸紅従業員組合との協業による活動を積極的に推進しています。
2 労働協約において、1. 組合員の労働条件に関する事項、2. その他会社・組合および組合員に重大な影響を及ぼす事項、は団体交渉事項である旨を定めています。また、会社および組合は、相手方から正当な団体交渉の申入れがあった時は誠意をもってこれに応じ、問題を迅速に解決するよう努力しなければならない旨を規定しています。
従業員組合より
丸紅従業員組合が目指す会社の在り姿は、丸紅グループ全従業員が個々の能力を最大限に発揮し、会社と従業員が共に持続的な成長を遂げることができる組織です。この目標を達成するためには、経営・従業員一人ひとりが互いに絶え間ない努力を重ね、会社をより良いものにし、同時に社会にも貢献していこうという強い想いが重要です。
丸紅従業員組合では、経営組合懇談会をはじめとする経営との対話機会を通じて、会社全体のあらゆる経営課題に対し、組織単位を超えて個人を繋ぎ、全社的知見や多様な価値観を集約して会社へ提言することで、会社と共に全体最適での課題解決に取り組んでいます。同時に、同じ課題意識を抱える他組合とのネットワークも拡げて協働して課題解決を図ることで、社会全体に価値提供できるよう日々活動しています。
日本貿易会 人事委員会等への参加
丸紅は、日本貿易会の人事委員会に参加し、海外安全管理対策や組織風土改革・エンゲージメント向上に向けた取り組み、DE&Iの推進等について、社外との意見交換を実施しています。
2024年度の議事内容
- 海外安全管理対策強化に向けた取り組み
- 組織風土改革・エンゲージメント向上に向けた取り組み
- 人材力強化に向けた取り組み
- (1)グローバル人材育成
- (2)DE&Iの推進
- (3)在外教育施設における教育環境の改善・施設の拡充
- 商社研修事業の継続
- 諸外国との社会保障協定の締結促進に向けた要望活動およびフォローアップ
- 人的資本情報開示への対応
このほか、「人的資本経営コンソーシアム」や「女性活躍サポート・フォーラム(公益財団法人 21世紀職業財団)」の会員企業として、各種研修・セミナーに参加し、情報収集を行っています。
人財が経営戦略の推進に最大限の力を発揮できるよう、社外との連携で得た知見を人財戦略の策定・推進に役立てています。
データ
従業員の能力開発にあてられた時間※3
2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | |
---|---|---|---|
延べ年間研修受講者数 | 32,535名 | 43,320名 | 61,031名 |
延べ総研修受講日数 | 24,340日 | 27,029日 | 30,464日 |
延べ総研修受講時間 | 177,000時間 | 196,000時間 | 220,864時間 |
1人当たり平均研修時間(日数) | 41時間(5.6日) | 46時間(6.3日) | 52時間(7.1日) |
- 人事部主催研修に加えて、CS部・営業本部主催研修および全社e-Learning受講実績等も集計対象に追加しています。
主な研修・教育実績
受講者数 (2022年3月期) |
受講者数 (2023年3月期) |
受講者数 (2024年3月期) |
|
---|---|---|---|
新入社員研修 | 126名 | 127名 | 116名 |
キャリア入社社員フォローアップ研修 | 29名 | 22名 | 34名 |
ステップアップ研修※4 | 226名 | 76名 | 87名 |
シニア向けキャリア開発研修 | 88名 | 89名 | 138名 |
新任部長研修 | 28名 | 24名 | 20名 |
新任課長研修 | 70名 | 61名 | 81名 |
次世代経営者育成プログラム 「LEAD」※5 |
- | 10名 | 10名 |
社内MBAプログラム 「丸紅マスターコース」 |
29名 | 21名 | 27名 |
国内外ビジネススクール派遣 | 10名 | 21名 | 18名 |
女性向け経営者育成外部プログラム派遣 | 10名 | 10名 | 15名 |
語学研修 | 87名 | 33名 | 41名 |
海外 HR マネジメント・コンプライアンス研修 | 163名 | 196名 | 147名 |
- :2021年3月期は、コロナ禍で実施中止。感染症対策を講じた上で2022年3月期に実施を延期。
- :2023年3月期より開始。