タレントアセスメント
多面観察や自己診断を通じて、一人ひとりの行動の特徴や強み、課題等を可視化します。2025年3月期は対象者を拡大し、非役職者含む全社員の7割に対して実施しました。可視化された情報は、各組織が異動・配置、ミッション付与や日々のチームマネジメントへ活用するとともに、各個人が、自身を振り返る気づきの機会、今後の能力開発やキャリアプランの検討へ活用しています。
丸紅の人財マネジメントをご紹介します。
人財は当社グループの最大の資本であり、価値創造の原動力です。中期経営戦略「GC2027」では、「Global crossvalue platform」を追求するための仕掛けの一つとして「グループ人財戦略の強化」を掲げています。これまでの中期経営戦略「GC2021」「GC2024」で構築してきた「多彩な人財が集い、活き、繋がる場」は、人財戦略を遂行する上での強固な基盤です。GC2027における人財戦略では、この基盤を活かし、これまでも追求してきた「ミッション本位・実力本位」を更に徹底していきます。当社では、人財の成長の源泉は質の高いミッションの遂行にあると考えています。社員一人ひとりが組織の戦略にアラインした、より大きなミッションを掲げ、実現に向けて全力を尽くすことで、組織としての競争力の強化に繋がります。この積み重ねをより一層徹底し、組織と人財がともに成長する在り姿を実現していきます。丸紅グループ全体で、人財の持てる力を最大限に引き出すとともに、「成長領域への人財シフト」、「事業投資・経営人財の強化」、「株主目線の報奨拡充」に重点的に取り組み、更なる高みに向けてグループ人財を強化していきます。
当社の人財戦略の推進力の源泉は、経営戦略と人財戦略の連動です。社長、CHRO※1、CSO、CAOを主要メンバーとする人財戦略会議「タレントマネジメントコミッティ」では、経営戦略に沿った人財戦略の実現を目指し、具体的には人財配置、リーダー開発、エンゲージメント、ダイバーシティ、人事制度改革レビューなどの重要アジェンダを継続的に議論し、経営主導で必要な変革をスピード感をもって推進しています。
1 当社のCHROは、2023年度に経営戦略に資する人財戦略を策定・推進することを役割として新設し、2024年度からは、グループ人財戦略の推進をより一層強化することを目的に社長直轄とし、社長を補佐する立場から、人財戦略に関する経営全般に参画しています。
経営層と社員が直接つながる対話の機会を定期的に実施するとともに、社員一人ひとりの経営参画意識や企業価値向上への一体感を高めるため特別奨励金を支給している従業員持株会制度(2025年3月末加入率95.9%)など、各種取り組みを通じて経営戦略に連動した人財戦略の推進を強化しています。
女性活躍推進をはじめとするダイバーシティ・マネジメント、ワークライフマネジメント、健康経営等、人財一人ひとりが活躍し続けられる環境の構築やオープンイノベーションを促進する取り組みの更なる充実を図り、これまで中期経営戦略「GC2021」「GC2024」で構築してきた当社の人財戦略の基盤である「多彩な人財が集い、活き、繋がる場」を引き続き強化していきます。
多様化する社会課題・顧客ニーズに十分に対応するためには、従来型の同質性・集団思考を脱し、多様なバックグラウンドを持つ人財が必要不可欠です。丸紅グループの多様性をより進化させるために、様々な人財へのアプローチや魅力の発信を強化しています。
当社では独自の採用手法を取り入れながら、専門性・能力・個性を活かし新たな価値創造のドライバーとなる多彩な人財へアプローチしています。
施策 | 取り組み状況 |
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Career Vision採用 | 入社後の初期配属を明示して募集する配属先決め型採用です。広報活動・選考プロセスの企画~実際の選考は募集部署の社員主導で行っており、2025年3月期入社の新卒採用活動では計21部署が実施し、全体で21名が入社しました。 |
キャリア採用 | 各部署のニーズに基づき、社内にはない知見・経験を持つ人財を通年で募集し、毎年30~50名程度を採用しています。ファーストキャリアで当社では得られない異なる経験を積み、今後の成長も見込まれる多様な人財を募集・採用しています。2025年3月期入社は全体で47名です。 |
リファラル採用 | キャリア採用を対象に、友人・知人を社員が紹介する「リファラル制度」をトライアル実施しています。 |
当社は、『ONE CAREER』※2の就活クチコミアワード2024※3にて約5万の掲載企業の中から総合ランキング5位(商社1位)、(株)ダイヤモンド・ヒューマンリソース「2025年【春】(26卒就活後半戦調査)大学生が選んだ就職人気企業ランキング」※4の女性ランキングで1位に選出されました。
当社では、障がい者雇用の推進を目的に、2009年3月期に丸紅オフィスサポート(株)を設立し、特例子会社の認定を受けています。同社は2021年3月期には「障害者雇用に関わる優良事業主の認定(もにす認定)」を東京都の第1号として取得したほか、2022年3月期には東京都から「東京都『心のバリアフリー』好事例企業」として選定されました。
2025年3月現在で、丸紅単体とあわせて107名の障がい者を雇用しており、雇用率は、法定を上回る2.97%となっています。
丸紅グループは、社員一人ひとりが自らミッションを掲げて困難な目標にチャレンジし、人財と会社がともに成長する姿を目指しています。人財が活き活きと活躍できるように、ミッションを核とする人事制度を導入したうえで、人財開発や健康経営などの取り組みにも注力しています。
当社では、各組織が個人の実力や特性に応じてミッション(期待役割および定量・定性目標)を設定し、社員一人ひとりが大きなミッションに果敢にチャレンジすることで、組織の戦略実行力の向上と人財の成長を促しています。
この制度を支える仕組みとして、ミッションの大きさと報酬水準を一致させることで、実力に見合うミッションの付与を推進するとともに、客観性が高く、より時価的な処遇を実現する「ミッションレーティング」を導入しています。従来管理職のみに適用していた仕組みですが、2025年3月期からは非管理職にも適用範囲を拡大し、更に、求められる業務やキャリアパスが異なっていた総合職・一般職という職掌区分を廃止する「職掌制度の改定」を実施しました。より大きなミッションへの挑戦、キャリア・オーナーシップが一層促進されることで、人財と会社がともに成長し、長期的な企業価値の向上に繋がります。
GC2027の定量目標・利益成長計画の達成に向けてミッションの質(=組織ミッションとのアラインメント×ストレッチ度合×ジブンゴト化)を高めるべく、既に社内でミッションを設定するための対話にこれまで以上に力を入れ始めています。各社員が質の高いミッションを「心を込めて」「やり抜くこと」を目指していきます。社員一人ひとりのミッション達成が、各組織のミッションの達成に繋がり、その総和としてGC2027の達成が実現されると考えています。この考え方を丸紅グループ全体で共有し、グループ一丸となってより大きなミッションを掲げ、達成していく好循環を創っていきます。
5 社員一人ひとりがストレッチされた役割や目標に挑戦できるよう、本人・上長が互いに能動的なコミュニケーションを取った上でミッションを設定、期末の評価・本人へのフィードバックを実施、その内容も踏まえ次年度のミッションを設定、これら一連のサイクルを通じて、社員の能力開発やキャリア開発に繋げています。
当社では、エンゲージメントを「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献し合う関係」であると考え、エンゲージメントスコア※6 を測定しています。当社の2025年3月期のスコアは前回比で上昇しており、(株)リンクアンドモチベーションが発表した「ベストモチベーションカンパニーアワード2025」において、大手企業部門(5,000名未満)で「第2位」を受賞しました。
本サーベイの結果を踏まえ、改善を希望する組織に対して「組織改善プログラム」を提供しています。改善に向けたアクションプランを策定・実行することで、プログラムに参加した多くの組織でスコアが改善する結果が得られています。こうした取り組みを通じて、エンゲージメントスコアが高い組織の割合も年々上昇しています。
企業価値の源泉となる人財の成長・活躍を促進すべく、「On the Job Training」と「Off the Job Training」の両輪で、人財の開発を推進しています。
人財開発体系図
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タレントアセスメント
多面観察や自己診断を通じて、一人ひとりの行動の特徴や強み、課題等を可視化します。2025年3月期は対象者を拡大し、非役職者含む全社員の7割に対して実施しました。可視化された情報は、各組織が異動・配置、ミッション付与や日々のチームマネジメントへ活用するとともに、各個人が、自身を振り返る気づきの機会、今後の能力開発やキャリアプランの検討へ活用しています。
Marubeni Executive LEAD Program
「丸紅グループをリードする、次世代経営層の育成へ」をコンセプトに、スイスの経営大学院・IMDによる当社専用カスタマイズドセッションを通じて、世界最先端の経営論およびリーダーシップを学ぶ選抜型のプログラムです。
丸紅マスターコース
国内ビジネス・スクールの教授を招聘し、経営戦略、会計、財務、組織マネジメント、マーケティング等、事業経営に必須となる知識を講義、ケーススタディ、ディスカッション等を通じて修得するプログラムで、部署・年代を問わず多様な社員が受講しています。
Marubeni Learning Platform(MLP)
多様な学習コンテンツを集約し、いつでもどこでもタイムリーかつ効率的に学べる、人財開発プラットフォーム「MLP」を導入しています。社員はMLPを通じて、ミッションの達成や目指すキャリアの実現に向けてアップスキル・リスキルに積極的に取り組み、上司は可視化された学習履歴をもとに、日常的な対話を通じ、部下の成長に向けてサポートを強化し、社員の成長を一層加速させていくことを目指しています。
丸紅グループのDXを推進する人財強化を目的として、様々な研修プログラムや講習会を実施しています。
こうした取り組みを通じて、デジタルスキルを現場レベルで活用できる「デジタル人財」の認定者が、2025年3月末時点で730名超となりました。またデジタル関連の基礎知識を全社で習得すべく、2024年から昇格要件にITパスポート取得が加わりました。
2023年に丸紅社内デジタル人財公表サイトを開設し、社内のデジタル人財と保有スキルが可視化されることにより、必要な時に必要な人に声をかけられる状態となりました。実際に社内研修を通じてスキルを会得した人財が、他部署のプロジェクトに参画するという事例も出始めています。
社内外の組織を越えた人財の繋がりの強化は、新たな価値創造を生み出すと考え、人財のコラボレーションを促す仕組みを設けています。自部署以外の社員との交流や、イノベーション風土の醸成に向けた取り組みがグローバルに広がっています。
当社では、社内外の組織を超えて人財が行き交う独自のキャリアマーケットの活性化により、社員の自律的なキャリア開発とオープンコミュニティを促進し、新たな価値や機能の発見、事業展開に結び付けています。社内の取り組みとしては、部署が人財を求めて公募する「社内人財公募」や、社員が他部署への異動を求めて登録する「ジョブマッチングシステム」を実施しています。社外との関わりでは、他業界のリーディングカンパニーと社員を派遣し合う「社外人財交流プログラム」を実施しています。
丸紅キャリアマーケット
社員一人ひとりが、丸紅グループのネットワーク、ビジネスモデル、ノウハウ、人財などを活用し、社会・顧客に対し、新しいソリューションを探求、発案しやすい環境をつくるため、社員個人の意思によって就業時間の最大15%を目安として、丸紅グループの価値向上につながるような事業の創出に向けた活動にあてることができるようにしました。
社内組織がパートタイムでの協力・参画を求めて助っ人を全社で公募し、協力・参画を希望する社員が応募して、組織を越えた協働を図る仕組みです。
組織を越える協力・連携の促進を目的として、他組織や地域戦略に対する情報提供から事業創出まで様々な粒度の貢献に報酬で報いる仕組みです。
所属部署・世代の異なる3者でトリオをつくり、定期的に双方向のコミュニケーションを取ることで、組織や世代を超えた繋がりの形成、経験の共有、異なる価値観・考え方への相互理解、新入社員の土台づくりを促進します。
データサイエンスの領域においては、2021年3月期より丸紅デジタルチャレンジを展開しています。これは、理論よりも実践に重きを置き、自ら手を動かしてデータサイエンス力を会得するプログラムで、当社が実ビジネス・実業務で直面する課題を全社から公募し、参加者がこれをプログラミングなどのデジタル技術の活用で解決するものです。
BMCサイトを設け、丸紅グループが持つ資産やビジネスモデルを見える化し、全社員と共有しています。新たなビジネスの創造する一助となるべく、サイト機能拡充を図るとともに、ビジネスの現場でBMCのフレームワークを活用できる施策を平行して推進します。
新たなビジネスアイディア、自身が挑戦したい課題や業務改善に繋がる案等、全グループ社員が投稿できる窓口として開設しています。
丸紅グループ全体で実施している公募型ビジネス提案プロジェクトは開始から8年目を迎えました。昨年度は、インドネシアのデジタル母子手帳事業などの発展事例や、進行中のテストマーケティングの途中経過報告など、事業化に向けた示唆をグループ全体で共有しました。今後も社内のイノベーションを促し、ビジネスを創出する場として重要な役割を担っていきます。
当社では、2023年11月より退職者コミュニティ「M-Alumni(まるムナイ)」を運営しています。専用SNSを通じた当社とアルムナイもしくはアルムナイ同士のネットワーク形成およびネットワークを通じた人財獲得やビジネス協業等の価値共創を目的としています。
専用SNSでは、各退職者が現在の所属会社や仕事内容、興味のある分野といった情報を登録しており、その登録情報を各自が検索して、新たな繋がりを持ちたい人に個別メッセージ等で直接アプローチできます。また、ニュースリリースや会社が関与するイベント・商品情報等を、会社から専用SNSへ定期的に投稿しています。専用SNS以外でもオフライン交流会の実施に取り組んでいます。
グループ各社の幹部候補となる海外のグループ社員を、本社をはじめ自国以外のグループ会社に一定期間派遣する「Marubeni Global Mobility Program」を実施しています。本社や国内外グループ会社、海外現地法人で幅広く活躍するチャンスを広げることで、グループ内の多様な人財の国を超えた活躍を推進します。
在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務など、勤務場所の選択肢を増やし、時間をより有効活用することで、社員個人がアウトプットの質・スピード・量を従来以上に充実させ、ひいては組織としてのパフォーマンスを高めることを目的とした、「どこでもワーク」を導入しています。
自分で考え行動する文化を醸成する取り組みとして、フォーマル⇔カジュアルといった区分を廃し、最低限守られるべきガイドラインを示した上で、社員一人ひとりが最適と思う服装を選択する“Self-Biz”を導入しています。
経営層と社員や社員同士のコミュニケーションを促進し、一体感の醸成に資することを目的として、社員交流会を定期的に実施しています。2025年3月期までに延べ約2,900名の社員が参加しています。
今後も経営層と社員のダイレクトな対話の場や社員同士の交流の場を継続的に設けることにより、社内コミュニケーションの活性化・深化を図っていきます。
丸紅従業員組合は1949年に発足しました。2024年3月末現在、組合員は2,735名、組織率は約63%となっています。会社と丸紅従業員組合は、会社の繁栄と従業員の社会的・経済的地位の向上を共通目的として、それぞれの立場を尊重し、誠実な話し合いを通じて、秩序ある労使関係を築いています。2024年3月期は、経営との経営組合懇談会や、各種団交※7・委員会等を年間10回開催しました。また、働く環境に関する制度や施策の導入、その運用において、丸紅従業員組合との協業による活動を積極的に推進しています。
7 労働協約において、1. 組合員の労働条件に関する事項、2. その他会社・組合および組合員に重大な影響を及ぼす事項、は団体交渉事項である旨を定めています。また、会社および組合は、相手方から正当な団体交渉の申入れがあった時は誠意をもってこれに応じ、問題を迅速に解決するよう努力しなければならない旨を規定しています。
従業員組合より
丸紅従業員組合が目指す会社の在り姿は、丸紅グループ全従業員が個々の能力を最大限に発揮し、会社と従業員が共に持続的な成長を遂げることができる組織です。この目標を達成するためには、経営・従業員一人ひとりが互いに絶え間ない努力を重ね、会社をより良いものにし、同時に社会にも貢献していこうという強い想いが重要です。
丸紅従業員組合では、経営組合懇談会をはじめとする経営との対話機会を通じて、会社全体のあらゆる経営課題に対し、組織単位を超えて個人を繋ぎ、全社的知見や多様な価値観を集約して会社へ提言することで、会社と共に全体最適での課題解決に取り組んでいます。同時に、同じ課題意識を抱える他組合とのネットワークも拡げて協働して課題解決を図ることで、社会全体に価値提供できるよう日々活動しています。
丸紅は、日本貿易会の人事委員会に参加し、海外安全管理対策や組織風土改革・エンゲージメント向上に向けた取り組み、DE&Iの推進等について、社外との意見交換を実施しています。
このほか、「人的資本経営コンソーシアム」や「女性活躍サポート・フォーラム(公益財団法人 21世紀職業財団)」の会員企業として、各種研修・セミナーに参加し、情報収集を行っています。
人財が経営戦略の推進に最大限の力を発揮できるよう、社外との連携で得た知見を人財戦略の策定・推進に役立てています。